一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

桐山九段、引退決定

2022-02-25 00:22:25 | 男性棋士
22日に第35期竜王戦5組昇級者決定戦・桐山清澄九段VS伊奈祐介七段戦が行われ、伊奈七段が118手で勝った。これで桐山九段は残留決定戦の1局を残し、引退が決定した。

桐山九段は2020年3月、第78期順位戦C級2組で3つめの降級点を取り、フリークラスへ降級した。この時点で定年の60歳を過ぎていたため、参加できる棋戦は竜王戦のみとなった。
桐山九段は5組在籍なので、参加できるのは新たに2期。ただしこの間に6組に降級すれば即引退。逆に4組に昇級できれば、さらに現役生活が伸びる。
桐山九段はからくも5組残留を続けていたが、最終の今期は初戦で負け、本局の昇級決定戦でも負け、引退決定となったわけである。
この伊奈七段との将棋は、先手桐山九段の四間飛車となった。元来桐山九段は居飛車党だったが、大山康晴十五世名人に振り飛車で叩かれ続け、4勝20敗。そこで自身も振り飛車を指すようになった。すると、不思議と大山十五世名人に勝てるようになり、5連勝。ほかの棋士にもさらに勝てるようになり、結果、棋聖と棋王のタイトルを獲り、名人戦にも挑戦できたのであった。
本局は▲7六歩△8四歩▲7八銀からの四間飛車だったから、桐山九段は引退が懸かった一局に、振り飛車を選んだわけだった。
伊奈七段は△4四角と出る今風の形。桐山九段は元気よく▲4五歩と突いた(図)。若々しい将棋で、肉体年齢と将棋年齢は関係ないと痛感させられる。

こうして中盤まではいい勝負となった。桐山九段は数年前から公式戦通算1000勝が視野に入っていて、秒読み態勢といってよかった。しかしそこから連戦連敗。果てしない連敗地獄に飲み込まれ、順位戦を降級したことで、1000勝が絶望となった。
しかし内容は、中盤まではいいのである。研究熱心なので最新形に明るく、優れた大局観で中盤も指せる。しかし肝心の終盤が衰えた。将棋はどんなにうまく指しても、終盤の1手の悪手ですべてがオジャンになる過酷なゲームである。その負の特性を、桐山九段は被ってしまったわけだった。
果たして本局も終盤で崩れ、冒頭に記したとおり、伊奈七段の勝ちに終わったのだった。
桐山九段は現在996勝である。1000勝まで行かなくとも、棋士人生は大成功の部類に入るし。愛弟子の豊島将之九段も成長したから、これでよかろう、というファンもいよう。
しかし後世の将棋ファンが記録を見たとき、その名前がないのはやはり寂しい。あと4勝、何とかできなかったものか。
他人事ながら、そこがどうにもやるせないのである。
ともあれ、桐山九段に遺された公式戦はあと1局。なんだか廃線が決定した路線のラストランを待つがごとくだが、最後の桐山将棋を楽しみにしている。
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