一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第47期棋王戦第1局

2022-02-18 00:18:26 | 男性棋戦
6日(日)に第47期棋王戦第1局が行われた。棋王保持者は9連覇中の渡辺明名人、挑戦者は永瀬拓矢王座である。
藤井聡太竜王のいないタイトル戦は久し振り。タイトル戦はやがて藤井竜王がすべて絡むことになるから、鬼のいぬ間のこのカードは貴重といえる。
両者の対戦成績は渡辺棋王16勝、永瀬王座5勝。タイトル戦も渡辺棋王の2-0と、意外な大差が付いている。よってクレバーな渡辺棋王のこと、ふつうに指せば防衛できると考えているに違いない。
第1局は永瀬王座の先手。序盤に駆け引きがあり、永瀬王座の矢倉模様、渡辺棋王の雁木に落ち着いついた。
23手目、永瀬王座は▲4六角と飛車取りに出る。これには△7三銀か△7三桂が相場だが、渡辺棋王は△6四歩。これが令和の手で、▲同角に△7三銀と角取りに当て先手を取った。
歩をおとりに手得を図るのは相掛かりの将棋でおなじみだが、私には1歩損が大きく感じられ、とても指す気がしない。
本局は以下も難しい戦いが続いたが、ABEMAのAIの判定では、渡辺棋王が有利だった。だがこの程度のアドバンテージは、1手の悪手ですぐに吹っ飛ぶ。
盤面は永瀬王座の▲7六金が△7五角に当たっている。私ならありがたく▲7五金とし、△同銀▲9一角成とするところだが、永瀬王座はじっと▲7三歩成。さらに局面を複雑化させた。
ここで渡辺棋王は△2七銀(第1図)。花村元司八段の鬼手▲8三銀(参考図)を彷彿とさせる手で、戦いとは無縁の僻地によく放れると思うが、まあ飛車の横利きが消えれば△8八飛成が生じるから、なるほどと頷ける手ではあった。


第1図以下は▲7八飛△3六銀成と進み、渡辺棋王が優位を持続。しかしこのあと、永瀬王座は入玉を狙い、形勢バーは永瀬王座に傾く。これが将棋の難しさだ。
思えば渡辺棋王は昨年12月の竜王戦ランキング戦で、豊島将之九段に必勝の将棋を持将棋に持ちこまれている。イヤなイメージが去来したのではなかろうか。
しかしそこから数手進むと、また渡辺棋王が優勢になっていた。これが藤井竜王なら、いったん得た優位は逃さなかったと思う。しかし逆転があるから、人間同士の将棋といえる。そして、だから面白い。
△6一金(第2図)の縛りが決め手。以下、いくばくもなく渡辺棋王の勝ちとなった。

渡辺棋王は幸先のいいスタートとなったが、この5日後に行われた王将戦第4局では藤井竜王に敗れ、二冠に後退した。
渡辺棋王には悪夢だったが、唯一の救いは、これで棋王戦に専念できること。第2局はあす19日に行われるが、これに勝てば、もう防衛はしたも同然となろう。
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