一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

個性的な新人棋士

2022-02-20 14:48:10 | 男性棋士
先週放送のNHK「将棋フォーカス」は、昨年10月デビューの横山友紀四段(22歳)、狩山幹生四段(20歳)の特集だった。
この新四段がどちらも面白い。すなわち、横山四段は
「粘っていると良くない癖が付いちゃうんで、あまり粘らないようにしている。勝負手ってあるじゃないですか。そういうのって道理から外れてるんで、負ける時はサッパリ負けるようにしてます」
狩山四段は
「将棋の本は読んだことがないですね。詰将棋は見るだけでもイヤですね。(対局で)自分から仕掛けることは絶対にしない。自分のスタイルだと思って割り切ってますね」
とコメントした。
まず横山四段の言。将棋って、不利になったら勝負手を放ち、粘って逆転を狙うものだと思う。それを否定したら、勝てる将棋が相当に限定されてしまうのではないか。
狩山四段もすごい。将棋の本を読んだことがない、詰将棋は嫌い、は煩雑を避けるため目をつぶるとして、「自分から仕掛けない」がちょっと考えられない。将棋は攻勢に出た方、勝率が高い。そこで相手の仕掛けを待っていたら作戦負けの守勢に陥り、これも勝率が低くなると思うのだ。
では具体的に、2人の将棋を見てみよう。
まず、横山四段はここまで公式戦を4局指し、2勝2敗。第1図はデビュー戦の第35期竜王戦6組・冨田誠也四段戦の投了図である。

横山四段が▲4八金と馬を叱った手に、冨田四段は△6六馬と飛車を取る。ここで横山四段が馬を取り返さず、投了となった。
ここ、何はともあれ▲6六同角と取るだろう。そこで後手に何か決め手を指されて投了、というのが流れではないのか。
ずいぶん中途半端な投了で、もう少し指せそうな気もする。

第2図は第48期棋王戦の、古森悠太五段戦。△7六馬までで投了だが、これは先手が攻防ともに見込みなく、投了もやむを得ないと思う。
ただ横山四段の場合、「粘らない」のが身上だから、投了図よりも、それより前の局面で、粘れる手を見送った箇所があるのだろう。
続いて狩山四段の将棋。狩山四段はここまで5勝1敗と好成績。うち3局の仕掛けの局面を見てみよう。

第3図は第72期王将戦・小林裕士七段との一戦。後手番ながら△7五歩と先に攻められた。

第4図は第48期棋王戦・伊奈祐介七段との一戦。先手の狩山四段が自ら角を換わったが、△5五銀左と、先に駒をぶつけられた。

第5図は第35期竜王戦・古森五段との千日手指し直し局。
古森五段が△3六歩と仕掛け、▲同歩△5五歩▲同歩△同銀▲3五歩と、華々しい戦いに進行した。
いずれも、後手に先に仕掛けられている。それでも5勝1敗なのだからすごい。
いずれにしても私とは別世界の将棋観だが、よく考えてみると、私もふたりに似たところがないともいえない。
私も苦しい局面を長く指すのがイヤで、まあ粘りの手を指すこともあるが、こりゃダメだと思ったら、終盤の入口でも投げてしまう。
「仕掛け」もそうで、私も相手に仕掛けられることが多い。実は、仕掛け方がよく分からないのである。
AI全盛で指し手の個性が失われがちな昨今、独特の将棋観を持つ棋士が現れるのは大歓迎である。今後もお二人の将棋に注目していきたい。
コメント
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