一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

イチヨの金・2

2016-02-16 00:10:09 | 女流棋士
里見香奈女流名人と清水市代女流六段の女流名人戦五番勝負。清水女流六段が初戦に勝った時は、おおっ、と次局に期待を抱かせたが、第2、3局を里見女流名人が連勝してみると、やはり里見防衛か…という雰囲気が漂った。
そんな中、14日に第4局が行われた。
午前10時過ぎにスマホを繰ると、相居飛車になっていたのでビックリした。
後手番の里見女流名人が居飛車を採択したわけだが、タイトル戦という重要な場で用いるとは、大胆不敵である。芸域を拡げようの意だろうが、私がその立場だったらとてもできない。
もっとも里見女流名人は、グローバルな視点で将棋を捉えている。居飛車の指し方を体得することが、のちの将棋に大きく活きると見ているのだ。居飛車党の女流トッププロは絶対数が少なく、本局の相手に不足はない。防衛に若干の余裕がある本局が、絶好の機会だったのだろう。
清水女流六段は右玉に構えていた。これが清水女流六段、裏の十八番で、2003年8月21日に指された第52期王座戦一次予選、金沢孝史四段(当時)との一戦では、右玉(△6二玉)に構えた清水女流六段の作戦が秀逸で、仕掛けの前なのに、金沢四段に「投了も考えた」と言わしめたほどだった(結果は金沢四段の勝ち)。
それなのに、里見女流名人の指し手が雑だった。手順を尽くして角を得したものの、急所に作られたと金が大きく、早くも敗勢となってしまった。
実は私も昔、ソフト相手に似たような筋で快勝したことがある。「と金>角」の公式が成立する稀有なケースが、ここでも当てはまったのだ。
清水女流六段は銀桂を取って駒損を回復し、と金も残った。ネット解説では、「先手勝勢」の声も出た。
しかし将棋は勝ちになってからが大変だ。清水女流六段は百戦錬磨の手練れだが、里見女流名人も現役奨励会三段の信用がある。簡単には終わらないと思った。
数手進み、清水女流六段の▲2九飛が意外だった。敵玉に狙いを付けた手だが、玉飛接近にもなっている。流れ弾に当たらないかと心配になったのだ。ちなみにここ、清水女流六段の持駒に金があったなら、▲5七金と打ちつけただろう。
里見女流名人は△4二金引と辛抱する。悪くなると動きたくなってしまうが、また来る春を楽しみに堪える。この姿勢が参考になる。
清水女流六段▲7四との催促に、里見女流名人は角を切り、返す刀で△5五歩。これを▲同歩だと、△7八角や△5六角がある。私だったら慌てるところである。
ここで清水女流六段は▲7七金! 里見女流名人は△5六歩と取り込むが、清水女流六段はさらに▲6七金左!

盤面を見ると、先手の金が遊んでいる。それをズズズッと寄せるのが名手だ。金1枚が戦力に復活して、△5六歩の取り込みなど物の数ではない。清水女流六段の金の使い方は独特だが、本局の金寄りはさすがプロと、私は唸ったのだった。
これで里見女流名人も観念したようで、いくばくもなく清水女流六段の勝ちとなった。

これで2勝2敗のタイとなった。里見女流名人は今年度21連勝を記録するなど手が付けられない強さだったが、4敗のうちの3敗は、清水女流六段が付けている。この五番勝負も、清水女流六段が互角以上に渡り合っている感じだ。もう、最終局の行方はまったく分からない。
最終第5局は、24日(水)に行われる。
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