感染症診療の原則

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「ワクチンしてくれないなら診ないからな」という脅迫

2009-11-08 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
本気じゃなくて、皮肉なだけでしょう?とオトナ対応をしておきますが、各地から相次ぐ相談です。

新型のワクチンが不足していることは一般の人も知っていますが、そのなかで優先順位として自分は医療者なのになぜ自分のワクチンがないんだよ!とゴネるひとが一定数いるそうです。

「私が感染したら労災ですわよ!」とでもいうのでしょうか。
地域流行の状況でこれは意味のないことですし、そもそもその人が感染管理をちゃんとしていたのかということが先に問われます。

その昔、エイズ対応の初期も感染源や感染経路が特定されているにもかかわらず、自分が感染したらヤダから診ないぞ!という人(病院)は一定数いましたね。

当時の背景として医療者の情報源が町かどのおばさんと同じ情報源・同レベルということがありました。まだネットも普及していませんでしたので、同じ女性週刊誌をよみ、スポーツ新聞情報に煽られていただけともいえます。

いまは一般の人でもCDCのサイトをみたりする時代ですが(!)、それでも専門家と一般人をわけるのは知識情報格差であり、任務へのミッション・責任、ペイです。

現時点でのワクチン不足状況、もっとも影響を受け安く重症化しているのは誰かががわかれば優先順位は明白ですし、(後ろ向きな話をすれば)ワクチンそのものの効果を考えたときに、施設内の仲間を脅迫するようなものいいをするのはかなりトホホですね。

大人数がいれば、多少ヒステリックな人やかわった人やイタイ人は存在するのですが。

いっぽうで前向きな話もききます。

それは職員の接種を縮小し、小児の患者さんにまわそう、というような動きです。
職員の年齢(あまりわれませんが、現実的にはこれは重要)、診療科、曝露頻度を考え最低限接種し、残りは子どもたちに早く回そうというものです。

トップの英断といえるこのような話が具体化するほどに、現場を守る人たちが診ている「現象」、数が明らかになっているということです。

季節性インフルエンザでも、接種してからその効果が得られるまでに3週間といわれています。危機管理対応の一例として紹介します。

(専門家ではないひとたちの右往左往情報を待っていると足下をすくわれるということが今回の騒動で一番学んだことです~) by編集部
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12 コメント

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Unknown (omizo)
2009-11-13 19:57:29
ドクターヘリの乗務員には、接種予定がないようです。 ドクヘリパイロットて、産科の医師よりはるかに少ないですし。ほとんど替え等いません。 ドクヘリ飛ばさなければ良いのですが。

ドクヘリパイロットは60歳以上ですよ。 

新型は、高齢は、抗体が期待できるので、ヘリパイロットして、それを信じて、プロとしてやると言っておられました。  拝んでしまいました。
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ご指摘のように (編集部)
2009-11-12 22:36:51
100%の正解なし、ケースバイケースですが、

集団で診たときに、若年層のほうが大きな影響を受けるのは新型に関係なくインフルエンザのもともとの特徴です。

定点データ上も8月9月10月とその傾向が顕著になっており、地域のドクターのヒアリングでも、受診が必要な人たち・受診者は若年のひとたちです。

これとは話がちがいますが、ワクチン関連の会議を傍聴したときに、各専門学会の代表者のコメントとして、もとの疾患・ステージによってはインフルワクチンくらいではどうしようもないために優先とはしない、という整理の仕方もありました。
個々人が納得する理屈ではないかもしれませんが。
参考までに。
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小児と成人の呼吸器疾患どちらが優先 (悩める臨床医)
2009-11-11 17:04:49
 いつもお世話になりありがとうございます。
 もう1つ質問させてください。
当院では今月は24人分のワクチンしかありません。
 コントロール不良な喘息、COPDを中心に接種予定者をリストアップしました。小児は比較的コントロールが良いのでワクチンは後回しと考えていました。 
 成人の基礎疾患をもつものよりも基礎疾患のない10歳未満を優先とするべきとの意見もあり、予定を変更して小児の喘息患者さんを優先接種にした方がいいか悩んでいます。個々の症例で考えなくてはならず答えはないかと思いますが可能ならアドバイスお願いします。
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ありがとうございます (編集部)
2009-11-10 22:58:47
ari先生 現場レポートありがとうございます。とても参考になります。

都心のいくつかの病院の話をこまめにきいています。医師はモクモクと症例を見つづけていますが、年齢のせいかもう免疫がついているのか誰もこの感染症に倒れていません。そうとわかって対応している、設備もあるということかもしれませんが。

最近きく現場からの声として、妊婦の優先性についての疑問の声があります。「後回しにしろ」ということではありません。今まで言われている情報と、かみ合わない実感が現場にあるという指摘ですが。これも後になって検証はされることでしょう。

日本の妊婦は年齢がやや高めとかいうバイアスももしかしてあるかもしれません。


悩める先生 喘息の治療は大切ですね。ワクチンとどちらが・・ということではなくどちらも同時進行ですすめていかねばですね。

疫学データや臨床での情報は時間がかかって公表されることは最初からの条件なので、そのときどきで判断が修正されていきます。

現時点では若年層、より低年齢、ということが見えている段階ですから、優先順位を仮説ではなくより具体的に考えやすくなっているとおもいます。
編集部内ディスカッションでは「正しい」という表現よりも、「その時点で最適・ベター」を皆で検討しているのだと考えるようにしています。

遅い公表データよりも、誰の発案か明確ではない指示を待つよりも、先生のように目の前の患者さんの現状をみて、代わりに声をあげるアドボケイトができる医療者が増えるといいなと感じています。

小児科の専門医の団体の動きの速さは、自ら声をあげることのできない赤ちゃんやこどものためであり、いつもすごいなとおもいます。

ワクチンのロジ情報を早く明らかにしていただきたいですね。
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 ワクチンより喘息の治療を (悩める臨床医)
2009-11-10 21:37:36
>もっとも影響を受け安く重症化しているのは誰かががわかれば優先順位は明白ですし

 この記載について質問したいと思います。10歳未満の小児への投与が望ましいということで、厚生省の判断は正しいという意味にとれると思います。違っていたら申し訳ありません。
ワクチン接種の前倒しで本当に小児の重症化が防げるのでしょうか。
現在、小児で重症化が多い理由は気管支喘息の治療をきちんとしていないことが大きなウエイトを占めていると思います。ワクチンを注射するより、喘息の治療をしっかりやるこ とがもっとも大切と考えています。実際にワクチンに頼るより喘息をしっかり治療しましょうといっています。
喘息児にワクチンを接種しても重症化は防げないと思います。小児の重症化を防ぎたいのなら無治療の気管支喘息患者に治療をきちんとすることにあると思います。ただでさえないワクチンを小児に回すことはかなり現場を混乱させることになり問題になると思います。それよりも無治療の喘息児に治療を勧めることの方が理にかなっていると思います。
 健康な小児に重症者がいることは明らかで、それを抑える荷にワクチンが有効な可能性があることは理解しています。あくまで効率的に重症者を減らすかという議論です。
 ちなみに当院では200人以上の定期通院の喘息患者、ここ3ヶ月に受診した喘息患者は実人数で300を超えますが、現時点で入荷したワクチンは0、今週24回分はいるといいますが、本当かどうかわかりません。しっかりした治療でしのごうと考えています。
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実際の現場の感想 (ari)
2009-11-10 21:12:03
個人的な体験談ですが、日に数十人のインフルエンザ患者をここ2カ月ほど外来で診ておりますが、当時はワクチンもない状況でしたが院内では初期に3名ほどの医師感染があっただけでした。(院内での感染かは不明)
感染者も3,4日で仕事復帰できております。

患者の死亡抑制を目的に少ないワクチンを打つのであれば、呼吸器、心臓疾患患者や透析患者、乳児、基礎疾患の重篤な小児に優先接種してもかまわないんじゃないかなと実感してます。

実際、僻地離島では行われているようですし。

ごねる医者はおそらく当直中の外来をさせられる初期後期研修医なんじゃないかな???

やりたくもない外来をさせられる→ワクチンも打ってくれんのか
と八つ当たりしてるだけ(自分にもあてはまるが…笑)
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そのとおり (編集部)
2009-11-09 18:18:19
「おかしい」という手前、ある程度理想的な分配方法があるのだと仮定したとします。
それさえもよくみえないので不信が生まれているように感じますね。

ある自治体では予想外に在庫に余裕があったり、ご指摘のように患者との量的時間的曝露の少ない人の分まで来ている医療機関と、至近距離で接するスタッフの分さえ十分きていないところとあるようです。〔全国から寄せられるつぶやき情報によると、です〕

袋叩きネタではなく、今後のためには明らかにしていただきたい情報のひとつです。

供給した数は問屋やメーカーに書類で記録が残りますので、どんな基準で配給(?)&納入したのかは後日わかるようになるでしょう。

ゴネるのは院内で優先順位が低いとされた人たちに多いようですが、ゴネても任務は全うしている人たちが多いともききます。

だからこそ、薬剤師さんたちにも、ワクチン以外のことでできそうな工夫には予算をつけるよ、といったアプローチもあってもいいのではとおもうしだいです・・・。
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分配のおかしさにも問題あり (さと)
2009-11-09 09:19:20
「ワクチンしてくれないなら診ない」という発言が出る背景には、医療従事者の中でのワクチン分配のおかしさがあると思います。

マイナー外科の開業医や病院の裏方事務などおよそ新型インフルエンザの患者を積極的に診療しているとは言いがたい人がワクチンを受けているのに、内科・小児科・救急・受付・薬局など新型インフルエンザの患者さんと数十センチの距離で直接関わる者でも受けられていない人がいるという現実をご存知でしょうか?

おそらく、公平な分配がされた上で接種できないのであればそのような発言はしない、という人も多いのではないでしょうか。
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今後のためには (編集部)
2009-11-09 01:47:21
ワクチンが十分にないがゆえに考えた末の現状は了解できないということだとしたら代替案を出すというのは手かなとおもいますが。

もしかしてどなたの分かを薬剤師にまわしてくださいというお話なんでしょうか・・。

今後、別の感染症が流行することもありますので、生産的な話を考えてみました(他のところで教えていただいたものもあります)。

たとえば銀行や駅のようにガラス越し窓対応カウンターも部分的につくってみるとか、換気扇を設置して換気や空気の流れを変える工夫などはどうでしょう。

またSARSのときに実際に外国でされたこととして、資料と薬を渡した後に、口頭説明はインターフォンやナースコール、画面を通じてやるような方法も試みられたそうです。

ワクチンは接種しても感染するときはすることを医療者は知っているわけですし、ごねるよりも、なんとなくこちらのほうが前向きかなーと思っているところです。
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Unknown (編集部)
2009-11-09 01:41:10
■医療者も感染します。地域(家庭内ふくめ)に感染者がたくさんいるからです。
病院ではマスク手袋まめな手洗いが可能ですが、病院の外で院内のようなプロテクションはなかなか難しいですね・・。

■医療者は感染してはいけないかのようにいうと、感染した人が体調不良をうったえたり休みづらくなりますので、「インフルエンザは有効な感染予防策はあまりないので、ときに感染もしかたなく、そのときは早めに休んでもらい、お互いカバーしながら皆でのりきろう」というのが現実的です。

■ウイルスを振りまくことは困りますね。
体調不良の人が休めるように通常から十分なスタッフ確保ができればいいなとおもいます。
ワクチンの話よりも確実です。

■紹介したのは人道的な話ではなく危機管理の話です(と、あらためて書いておきます)。

■医療者は「医療者が優先」と思っていますが、政府のパブリックコメントにはかなり批判が寄せられたそうです。
(実際各国のデータをみてもそれほど医療者は大打撃をうけていません)

■エイズは予防対策が明確なのに、過剰反応をしたことが問題でした。
インフルエンザは対策、ワクチン、それぞれに限界があることが最初からわかっているので、ヒステリックに固執をすることがずれる原因かと思われます。
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薬剤師も (規格外の薬剤師)
2009-11-08 21:56:52
薬剤師の中にも、ひねている数は多いかと思います。

外来患者と接することのない、院外処方の病院の方も
外来患者と接してばかりの、院外処方箋を受ける調剤薬局の方にも。

医療者と認めてもらえない悔しさからなのか
投薬する際にインフルエンザの方へ説明すれば
それは濃厚接触じゃない?と。

言葉の定義に文句をつけたいのか
勤務状況を分かってくれて無いと文句をつけたいのか

色々な人がいます。
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Unknown (だい)
2009-11-08 11:12:52
最後の部分にある前向きな話,というのは理解できませんでした..

医療者が感染したら,どうするのですか?
病院という免疫の弱った人が多い場所でウイルスを振り撒くことになりませんか.
新しい患者さんを誰が見るのですか.

ちょっと目先の人道的な気持ちに魅了されて,長期的な視野が足りないのではないかと思います.重症化しやすい患者さんがいるにしても,彼らを診る人が必要で,優先順位は明白ではないと思います.


またエイズと,新型インフルを並べて議論することにも違和感があります.
知識が偏っていても,エイズはきちんとした知識を持って気をつければ感染せず,新型インフルは感染しやすい,という事実を無視していませんか.


かなり批判っぽくなりましたが,応援してます...
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