感染症診療の原則

研修医&指導医、感染症loveコメディカルのための感染症情報交差点
(リンクはご自由にどうぞ)

B型肝炎アウトブレイク(ノースカロライナ)

2010-11-01 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
医療者としてHBVの怖さや難しさを語れといわれたらたくさんあるのですが、

■昔と少し状況がかわってきており、キャリア化しやすい型のHBVが流行中
■それなのに、日本の予防接種プログラムにはHBVワクチンが定期で入っておらず、「丸腰」状態の人が多い

もともとHIVなどとちがってとても感染力の強いウイルスですので、「気をつけてね」というくらいでは予防はできません。

医療関連事故でも、遺伝子検査で「同じB型肝炎ウイルス」で感染が広がっているのに、どこからどうやって広がったんだろう?と感染経路が特定できないようなことも多く、対策はとても難しいことがわかっています。

ニュースになったのは最近ですが、8月くらいから広がっていた模様、、、の記事。
ノースカロライナの高齢者施設で、B型肝炎のアウトブレイクがあり、5名が死亡、調査が開始されています。
Department of Health 10月19日
http://www.ncdhhs.gov/pressrel/2010/2010-10-19-hepatitis.htm

ニュース
http://charlotte.news14.com/content/video_stories/631666/cluster-of-hepatitis-b-cases-reported-at-nursing-home?ap=1&MP4

症例は63-83歳。他の入居者等はワクチン接種をしたとのことです。
この施設では観血的な処置などの医療行為はしないため、血糖測定の機会が曝露リスクの1つとして検討されています。
http://www.wral.com/news/local/story/8521062/
最終報告がDepartment of Healthから出るとおもいます。

ちなみに、ノールカロライナにおけるこどものB型肝炎ワクチン接種率は50%程度。かなり低いですね。
(あ、おまえらにいわれたくねーよ、ですね)

国内でも院内感染の事例は複数報告があります。
http://idsc.nih.go.jp/training/12kanri/page16.html

保育園内での集団感染
http://www.kansen.pref.saga.jp/kisya/kisya/hb/houkoku160805.htm
http://www.kansen.pref.saga.jp/kisya/kisya/hb/Bkan140910.pdf

「こどもがキャリアだと告げたら入園拒否をされました」
http://okwave.jp/qa/q2338064.html

ユニバーサルワクチンになるのはいつかまだわかりませんが、少なくとも保育園など集団施設に入るようなお子さんをもつ保護者にはHBVワクチンの存在をおしえてあげたいです。
HPVほど高いワクチンではありませんし。

東京の港区や新宿区のように外国人が10%近くいるような地域もふえています。
そのような知識の普及アナウンスも必要になってくるのではないでしょうか。

肝硬変を経ないまま突然肝臓がんになるB型肝炎はC型よりも怖いと語る医療者もいます。
肝臓がん予防にもなるので(「HPVワクチンはがンを予防する唯一のワクチン」というのは間違い)、HPVワクチンを勧めるときにはぜひHBVワクチンのこともお伝えください。性交前に接種するメリットが大きいです。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« なぜウチの地域には医師がい... | トップ | 11/15-21 抗菌薬適正使用キャ... »
最新の画像もっと見る

毎日いんふぇくしょん(編集部)」カテゴリの最新記事