学生時代の様子からは想像できない様な大活躍をする同級生H君をテレビで見つけました。学生時代は常に隣同士に座り、90分という集中を持続できない講義時間を半分に分けて前半は自分が、後半は彼がノートを取る。ノートを取らない時は寝ているという役割分担でした。H君は大学卒業後、すぐに都内の大学病院に修飾し外科医としての修練を積む一方で医師不足の深刻化する日本の医療現場を何とかしたい・・・という思いを強くしたのでした。H君や彼と同じ思いの専門家達の意見を勉強していると以下のようなことであるようです。自分なりの理解なので不十分、不正確である可能性はお詫びしておきます。
最近まで最下位であった英国に2-3年前に抜かれ、日本の人口あたりの医師の数は先進国中最低となりました。更に悪い事に人口あたりの医師の数は日本の窮状を本当に表現していません。なぜなら人口に占める高齢者の割合が他の国よりも高く、その割合が世界一の速度で増加しているからです。医師一人が健康な青年100人の村を担当するのと平均年齢80歳の村を担当するのとどちらが医師として忙しいかは誰でも簡単に想像できます。更に人口あたりの医師の数ですが、一般の方は実際に診療に従事している医師の数を想像するでしょうが、日本の場合、医師免許証を持っている人の数で計算しているのです。その中にはリタイアした80歳の医師も卒後2-3年以内で一人前になっていない医師、更に産休などで働いていない女医も沢山数えられているのです。言い換えると非常に医療が必要な人が多い人口に対して、実際には働けない医師も数えて既に最下位なのです。
病院が必要な医師数を満たしているかどうかの判断も酷いものです。殆ど聴診器しか使用しなかった(=一人の患者さんに必要な医療・医師の数が少なかった)昭和23年当時を基準にして作成した必要医師数が現在の評価基準なのです。(更に当直などの時間外の医療も省いてカウント?)そしてこの必要な医師数を本当にありえないくらい過小評価する基準でも東北地方の病院は約半分しか満たしておらず、残りの病院は「医師不足」です。言い換えれば本当は医師数が充足している病院も医師不足なのです。
極端な医師不足に悩まされた英国はブレア首相を選び医学部の定員を大幅に増加(50%?)するといった大胆な方針を打ち出し、医師の「増産」に励みました。しかし残念ながら医師は医学部卒業だけでは使いものにならず10年位でやっと使えるようになります。医学部の定員増による効果は急場には間に合わないものでした。その間、英国は二つの事をしました。医師の輸入と患者の輸出です。母国語が英語なので外国人の医師を大量に輸入し、英国内で手術できない患者さんは近隣のフランスなどに政府の経費で輸出されたのでした。どちらの手段も日本には難しいらしいです。
最後に参考になるのは米国の現状です。米国でも人口あたりの医師の数はかなり厳しいのですが、医師不足があまり問題化していません。それは経済的余裕が無い社会層は受診しないからなのです。一定の経済力以下の人には医療提供を考慮しないという方向に日本が進んでしまうのではないか懸念する専門家もおられるようです。
誰が日本の医療を殺すのか?
本当にそのとおりです。また彼の周囲で陰湿に牽制する声の多い事・・。でも応援する臨床医も多いです。