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児玉先生 Q&A  総合医のための すぐ役立つ精神科

2013-10-26 | 若手医師セミナー
若手医師セミナー10月11日の児玉先生の講義のQ&Aです。講義受講していることを前提とします。特定の症例に必ずしもあてはまるものではありませんので判断の際にはご自身の責任でお願いいたします。
児玉先生ありがとうございました。

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勤務医 4年目
アルコール多飲、低栄養のある方に対してのビタメジン、アリナミンFの1日投与量の目安があれば教えてください。

ウェルニッケ脳症を予防・加療するという視点からみれば、エビデンスのある必要量はわかっていないのが現状です。海外の論文では、1日あたりビタミンB1で1500mg程度投与すべきとするような日本の保険容量(ビタメジン1AにB1は約100mg)からみれば、かなり膨大な投与が必要とするものがある一方で、1日250mgを5日間使用すれば効果的とする論文もあり、一定していませんが、実際の臨床上からすれば、200~400mg/dayとするのが適当かもしれません。
またウェルニッケ予防の観点からみると、経口投与よりも静注の方がよいとする報告もあります。急性期には内服できたとしても静注の方がよさそうです。


研修医1年目
1.せん妄の予防としてセロクエルは最大 何mgまで増量可でしょうか?

セロクエルに限らず、せん妄に対して保険上、正式に認められている抗精神病薬(統合失調症などに対しての薬剤)は、ないのが現状ですので、統合失調症の保険用量からみれば、750mg/dayまで使用か可能ですが、実際の印象としては、せん妄に対して導入する際には200mg程度まで増量しても効果がない場合は変薬を含めた対応を考えるのが実際かもしれません。

2.抑肝散はせん妄への効果はいかがですか?

小規模のRCTですが、日本で出された論文で、効果があったとするものがあるようです。
個人的には、やはり認知症の周辺症状としてのせん妄に対して導入することが多いですが、
鎮静という意味では一定の効果があるように思えます。


研修医1年目
treatable dementiaを考えるのは、どういった患者さんを見たときでしょうか?


今回の講義ではやりませんでしたが、dementiaをみた際にはせん妄と同様に、まずは軽度の意識障害なども合併してはいないかという視点に立って検索するのが重要です。
詳細は拙著参照ください。


研修医2年目
内服でリスペリドンを使用していて、興奮状態が強く内服困難であればロヒプノール、サイレースの点滴を行っても良いのでしょうか?


ガイドラインはありませんが、個人的にはOKだと思います。ただし、教科書的には、
メジャートランキライザーを先行して使用させずに、マイナートランキライザー(この場合ロヒプノールなど)のみを使用すると、せん妄が悪化するというような記載もあることから、先行して使用しているリスペリドンの効果があやしいと思うのであれば、セレネース静注を1A程度使った上で、ロヒプノールなどで鎮静をかけるのがいいかもしれないです。


勤務医4年目
現在、アルコール肝障害とアルコール依存症が基礎疾患にあるHIV患者を受け持っております。入院翌日より手指振戦を認めたため同日よりセルシン15mg分3 投与を開始したところ、手指振戦は消失しました。本日で入院4日目となり、特に経過に問題がないため、同量を今後も継続して行くこととしました。何か注意する点はありますでしょうか?また、この方針でよろしいでしょうか?


質問返答にタイムラグがある為、効果的なタイミングで返答できず申し訳ございません。
15mg/dayのセルシンの予防内服で特に離脱もおきていないのであれば、1週間程度継続の上で中止としてよいと考えます。注意点があるとすれば、講義でも申し上げた、アルコール関連代謝障害が潜在している可能性があるので、特にビタミンB群の予防投薬もしておいたほうがいいことくらいです。


研修医1年目
適切な介入でせん妄を予防しよう (その際に看護師さんらに指示を出しておく)というのがありましたが、褥瘡管理マニュアル・パスがあるようにせん妄のマニュアルやパスなどを設けたりしないのですか?また、そのような対策での注意点などはありますか?


鋭いご指摘ありがとうございます。看護師の研究ではせん妄の予防は1大トピックスのようで、研究レベルかもしれませんが、そうしたパスのような取り決めをして運用している病院もあるようですが、大多数の日本の臨床の現場においては、医師含め、せん妄の予防以前に、患者のせん妄を検知できずに「問題患者だから、当院では医療お断り」とされて、強制退院の憂き目にあっているようなケースも散見されます。(術後せん妄などの典型例においても、そうしたケースは実際にあります。手術するだけしておいて、強制退院っていうのはちょっとおかしいですよね。)
先生においては是非、今回の講義のエッセンスをお役立て頂き、せん妄の予防・治療に対して職場で啓蒙いただけますと幸いです。


勤務医1年目
ICUで働いていますが、意識障害の原因となりうる病態があり、ICUせん妄との鑑別困難で、なおかつその病態の是正が時間がかかってしまう場合、CheckしておくべきPoint(鑑別に有用)あるいは、こうしておけば良いという対応方法があればご教授ください。


意識障害の原因となっている病態によってことなるので、画一的に質問にはお答えしづらいです。


勤務医4年目(救急医)
1.救命センターやICUなどで入院している話せない人(気切をされている、顔面外傷など)に対して、意識変容を確認するよい方法があったら教えてください。


なかなか難しいシチュエーションですが、講義でも述べた通り、意識変容は意識の質の評価なので、基本的には話せないとクオリティーの判断は難しいことが多いです。
どうしても参考にしたい場合には中枢神経系がintactなら、脳波を計測して徐波傾向の有無を確認するという方法がありますが、脳波を読むのはまた、敷居が高いでしょうから、実際的ではなく、また頭部外傷や脳梗塞などが合併しているとそれだけで当然徐波になるので、そうした場合は判断できません。

ただし、実際の臨床ではむしろ、ご質問のような患者群は、すべからく、せん妄合併のハイリスク群ですから「せん妄を合併していて当然」くらいの視点で医療行為を推進した方がむしろ実践的と思われます。
たとえば、他覚的にみて、昼夜逆転や不眠、必要以上に怒りっぽいなど、こうした視点がないとせん妄とはみなさないような症候も実はせん妄の1症状のことはよくあって、そうした場合、身体管理のほかに、今回講義で述べたような薬剤を併用すると、効果的であることがままあります。明確な返答にはなっていないかもしれないですが日々の臨床にお役立て頂ければ幸いです。

2.離脱せん妄予防のジアゼパムは、1回投与すれば良いのでしょうか?それとも数日間投与する必要がありますか?もしそうであれば、投与を終了するタイミングはどのように判断すれば良いのでしょうか?

1回投与ではダメです。投与を終了する明確な基準はありませんが、離脱せん妄の発症の実際を考えると、アルコール中断後3日~1週間程度は起きる可能性はあるので、予防の観点から、ジアゼパムを使用するのであれば、1週間程度は使用した方がよいようです。
終了する場合は、翌日から、すっぱりと中止する医師と、1週くらいかけて徐々に漸減する医師がいて好みがわかれるところです。これも明確な決まりはないと思います。


勤務医8年目
1.離脱せん妄の致死率が高いとのことですが、死因は何なのでしょうか?(心臓の突然の停止?)


鋭いご指摘です。通常のせん妄も、非せん妄群と比較して死亡リスクが高い(報告によって様々ですが、2~4倍程度)と言われていますが、せん妄自体で死亡転帰となるというよりも、せん妄に至っている=身体状態が死ぬほどやばい という意味合いで使用されています。
離脱せん妄に関しても、通常のせん妄よりも致死率が高いという記載は、せん妄を直接死因とするというよりはリスクが高いよというような、意味合いであろうと推察されます。(ただ、教科書的には、講義でやったような記載になっていることが多いです。言い訳じゃないですが。)
ここからは推測ですが、通常のせん妄よりも致死率が高いと古典的に言われる一つの理由としては、アルコール性の慢性疾患の合併がすべからく生じている一群だからなのではないかと思われます(アルコール性の肝硬変や膵炎・varixなど?)精神科的にみれば、ウェルニッケ脳症などの潜在的な合併も死亡リスクを押し上げている要因でしょう。

2.メジャートランキライザー1st choiceとのことですが、そもそもメジャー・マイナーとは端的に言って何なのか、解説があるとありがたいです。

メジャートランキライザーとは、静注薬ではセレネース、経口ではリスパダールやセロクエルなどに代表されるような カテゴリー的にいえば、抗精神病薬(統合失調症に保険適応が通っている薬剤)であり、マイナートランキライザーとは、静注薬ではホリゾン・セルシン・ロヒプノール、経口薬ではデパスやリーゼ、一般的な睡眠薬全般などいわゆる抗不安薬などに分類される薬剤です。

3.経口不可時の治療で、ハロペリドール、フルニトラセパムでだめな(無効な)場合、精神科医に次の選択はあるのでしょうか?

おおまかにいえば、「ない」です。オプションとしては、術前などに使用するアタラックスPを鎮静薬がわりにセレネースと同時使用(いわゆるセレアタです。)して、セレネースの鎮静の弱さを補完したり、微細な鎮静コントロールをかけたいときには、ドルミカムの持続静注という方法もありますが、あまり効果的な印象はありません。
ロヒプノールなどをいくら使用しても鎮静がかからない患者に対しては、麻酔薬としてのイソゾール、ラボナール静注を使用することは稀にありますが、一般的ではないと思います。
筋注製剤としては、ヒルナミン・コントミンがありますが、せん妄に使用するには循環動態の変化含めリスクがあると思われ、やはり一般的ではないと思います。

4.認知症の英語の頭文字”C”から始まる単語は何でしょうか?(聞きそびれてしまいました)

cognitive impairment です。まあ、PANICに合わせる為に語呂合わせですが、臨床的には、認知症の前駆段階の患者を mild cognitive impairment (MCI)などといったりするので、こちらの方は一般的かもですね。


勤務医9年目
症例1 では出血を疑って、Head-CTを撮ったのでしょうか?


カテーテル操作後の梗塞あるいは出血なども疑いCTを撮像したと思われます。


2.せん妄の治療でセレネースは筋注ではだめでしょうか?

静注でも筋注でも効果に大差はないと統合失調症の治療では言われていますからせん妄でも同様と考えますので、OKだと思います。


勤務医6年目
意識の質の障害を「意識変容」。では、意識の量の障害はどう表現すればいいでしょうか?「意識低下」とか?


「意識の量的な障害」を教科書的にみると、軽い順に混濁・傾眠(あるいは昏蒙)・昏睡に分けられると書いてありますが、精神病理(精神科の語句の定義を研究する分野)が専門の先生でない限り、明確な区別はされずに使用されていると思います。講義で意識変容を強調したのは、そうした概念を知らない状態では、知っている状態と比べて、せん妄に気づく速さが違うかなと思ったからです。講義でも述べたかどうか忘れましたが、意識障害は広い意味では意識混濁も昏睡も意識変容も全て含有します。見掛け上会話ができる状態の意識変容でも意識障害の一種であるということは重要なので、もう一度強調しておきます。


勤務医8年目
離脱せん妄の予防のためセルシン+ワイパックスを充分使っているつもりですが、鎮静がかかりすぎて誤嚥性肺炎になる患者さんをときどき経験します。「BZを少なめから始めて、離脱せん妄が起きたらしっかり使う」という考え方ではだめなのでしょうか?

離脱せん妄「予防」という観点からみれば、離脱せん妄がおきてから使用しても効果は薄いと記載されている成書はあります。拡大解釈をすれば、離脱せん妄が起きてしまったら、マイナートランキライザーはあまり意味がないと考えられなくもないです。個人的にはそんなことはないと思いますが、確かに離脱せん妄を発症してから、マイナートランキライザーを慌てて使用したら、速やかに普通の人に戻ったというケースはあまりないので、離脱せん妄「予防」に関しては、前もって導入して、アルコールに対しての薬理的な代替を試みるというのがいいのだと思います。
「鎮静がかかりすぎて誤嚥性肺炎になる」ということですが、鎮静にみえる状態は、本当に薬剤のみのせいでしょうか?アルコール依存患者に合併しがちな肝性脳症的な機序や、実はすでにせん妄状態のような症例では、興奮はしていなくても意識はクリアではなく、そうした段階では誤嚥を発症することはままあります。急性期で嚥下が不確かな場合で、かつ栄養学的・集中治療学的にみて経腸栄養を推進したい場合には、経鼻投与なども検討してもいいかもしれません。まあ、得てしてそうした場合、食道静脈瘤なんかもあって、やりづらいでしょうが。

勤務医8年目
1.せん妄に対するグラマリールの効果について、児玉先生はどう思われますか?


「脳梗塞後遺症後」という但し書きがついていますが、グラマリールは、日本でせん妄に対して唯一といっていい適応の通った薬剤であって、その点はリスペクトしますが、効果はぼんやりしていてあんまりいい印象はないです。

2.H2ブロッカーによるせん妄は、腎機能障害時の過量投与で多いのでしょうか?また、新規投与して、どのくらいでせん妄の起こるリスクが高いのでしょうか?

たしかに潜在あるいは顕在的な腎機能障害患者の方がH2ブロッカーのリスクは高いかもしれないですね。ただし、そうした一群を集め検討したようなまとまった報告は、知らないです。もし出ていたら教えてください。
また投与後どの程度の期間でせん妄に至るかとのことですが、H2ブロッカーの副作用の報告をみる限りでは、投与後1両日中くらいが多い(まあ、そうじゃないとなかなか副作用と認定しがたいでしょうが)ようですが、じゃあ、数日使用して問題なければ、「現在使用しているH2ブロッカーが絶対にせん妄の原因じゃない」とは言えないと思います。
個人的には、H2ブロッカーを他の薬剤に変えてすごくせん妄がよくなったと言える症例を経験してないので、その程度の重要性かな?と思ってしまうこともあるんですが、教科書的には事実で、特にシメチジン(代表薬剤 タガメット)で多いという報告もあります。


看護師20年目以上
アルコール離脱せん妄の予防・治療について
アルコール離脱が考えられる・・・という患者はだいたいにおいて大酒飲み、逆に20mgと少ない量でもいいかと思えるような患者の方が珍しいのでは?と思うのですが・・・どういう患者さんの、どういう時に、少量を使うのでしょうか?


これは決まりはないです。ただし、家族などから話を聞いて本当にここ数日あまり飲酒をしてなさそうだな、でも一応離脱怖いし、後からみた他の医者からベンゾジアゼピン系を初回から導入してないと、後ろ指さされそうでいやだなって時には、少量使用することもあります。


未記入
せん妄を起こす薬剤で、ベンゾジアゼピン系とありますが、せん妄の治療にもロヒプノール(ベンゾジアゼピン系)を使用するのはなぜですか?


いわゆるセレネースなどのメジャートランキライザー非導入下の身体において、ベンゾジアゼピン系、特に超短時間~短時間作用型の睡眠薬などを使用するとせん妄が発症あるいは増悪するのは日常臨床上、よく経験される為、一見すると矛盾するような内容ですが、記載しました。
同じベンゾジアゼピン系でも作用時間の短い薬剤で特にせん妄リスクとなるということをご理解いただければ混乱が少ないと考えます。


勤務医15年目
うつ病を疑うコツは何でしょうか?(特に身体症状を訴えている患者さんにおいて)


今回の講義では、時間が少なかったので強調できませんでしたが、やはり身体所見・検査上異常がない・あるいは症状を説明しうる所見がないことを前提として、スクリーニングで異常が検知されることでしょうか。ただし、今回取り上げたスクリーニングは、あくまでうつ病のスクリーニングなので、いわゆる身体表現性障害や心因性愁訴といった、うつ病にまでは至っていないが、内科・外科によく来院するという患者では基準を満たさないことはままあると思われます。心因性愁訴の判断の仕方は、拙著にも記載しておりますので、お時間があれば、目を通して頂ければ幸いです。


勤務医23年目
せん妄状態の時(術後など)、家族に来ていただくことにしていますが、それで患者の状態が落ち着くことがあります。これは、環境変化を元に戻すことによる効果なのでしょうか?


そうですね。やはり見知った人が近くにいるという効果はかなりあることかもしれません。


勤務医7年目
1.離脱せん妄の予防・治療で処方するマイナートランキライザーは断酒後どのくらいの期間内服していただくのですか?


前質問に返答あり。

2.自分の感情が、精神科疾患を持つ患者さんに振り回されることなく落ちついて診療するコツがあれば教えてください。傾聴するとつらくなることがあります。

3.マイナートランキライザー(ロヒプノールなど)を先行して眠剤として使用すると、せん妄を惹起すると先輩医師に言われたのですが、エビデンスはありますか?


いわゆるRCTのようなエビデンスはないと思いますが教科書的にはよく散見される文章です。おそらくは薬理的にみて、マイナートランキライザー(ロヒプノールなど)を先行して眠剤として使用することで、抑制のみが取れてしまってせん妄になった際に興奮などが強まるという意味合いだろうと思います。個人的な経験上は、作用時間の短いBZ系の薬剤は、それのみでせん妄の原因となると思いますが、中~長時間作用のBZ系はそれほどリスクは高くないのではないかと思っています。


研修医3年目
1.抗うつ薬を1錠から始めるとして、漸増していくなかでいつ変薬を考えるのでしょうか?


今回は時間がなかったので、詳しく申し上げられずすいません。
抗うつ薬を主剤として選定して保険容量上限まで内服して、数か月維持してもあまり標的症状の改善がない場合には、その薬剤を漸減しつつ、別の抗うつ薬を徐々に漸増していくということが多いです。
ご質問のように漸増していく中で変薬を考えることは、副作用がでて、アドヒアランス上継続困難とされる以外ではあまりありません。講義でも述べたように、導入した抗うつ薬がその症例に効果があるかどうかを判断する為には、「保険容量まで増量して、数カ月みて」効果を判断するしか方法がないのが現状であって、この患者さんには、効きそう、効かなそう、不安感が強く出てきたから、この抗うつ薬に変更しよう・・・などといったような変薬方法は、個人の感想のみのいきあたりばったりの方法であって意味がないことです。

2.抗うつ薬の使用例に関してですが、効果が出たら併用しているロヒプノールは減らさないのですか?

うつ状態がなおれば、十分中止は可能です。その場合、とりあえず外来で処方だけしておいて、「眠れそうなら半錠あるいは使用しないでやってみて」 と指導しておいてから次の外来でどの程度ロヒプノールを使用したのかを確認するようにしています。


勤務医12年目
SSRIが発売されてずいぶんになり、抗うつ症状、不安症状の治療の中核と言っていいかと思いますが、
1.催奇形性の安全性の順位を教えてください


安全性の順位はありません。アメリカのFDAでは薬剤胎児危険度分類が向精神薬に限らず、様々な薬剤で検討されていることはご承知の通りと思いますが、その基準(A:最も安全 D:ヒトで催奇形性の明確な証拠あり とX:使用禁忌の5段階にわけられている)では、どの抗うつ薬もだいたいランクCに入っていて、「危険性は否定できないけど、投薬のベネフィットがリスクを上回ると判断されれば」使用可能というものです。
その点では、横並びなので順位はつけられませんが、講義でも述べたようにSSRIのなかでは、特にパキシルで催奇形例の報告が多いようです。

2.妊娠の可能性ある女性には原則使用しない方がよいのか?

使用してもよいですが、1の質問を踏まえ、投与前に妊娠の可能性の有無と、今後妊娠した場合もにらんだ説明はしておいた方が無難でしょう。


3.精神症状から投薬した方がいいと判断されて使用する場合、妊娠予定からどのくらいの期間を空ければいいのか?
よろしくお願いいたします。


上記の質問の返答のように抗うつ薬の大多数は絶対に禁忌という薬剤ではないので、逆にいうと、妊娠予定からどの程度開けなければならないとコンセンサスを設定すること自体、難しいことであって、一般的なガイドラインは存在しないようです。
向精神薬に限らず、薬剤全般に言われている「妊娠3週目まで(妊娠超初期)は薬の影響は考えず、妊娠4週目、特に妊娠28日目~50日目(4週~7週末)は絶対過敏期と言われ、注意が必要」という事実を踏まえたうえで、情報提供した上で患者さん・家族と相談するというのがいいかもしれません。


未記入
1.セロクエルをDMに使ってはいけないと良く言われますが、どれくらいのDMからダメなのですか?
・HbA1c>7 ?
・コントロール良好のDMにもダメですか?
セロクエル25mgくらいの少量でもダメなのですか?軽症DMでも使いないと入院患者の多くに使えないと思いますが・・・


そうですよね。セロクエルは便利な薬なので、ちょっとした高血糖患者には使用したくなるのが人情ですが、薬剤の添付文書上、「糖尿病と診断されているヒトには使用禁忌」となっていて、その理由としてはケトアシドーシスなどを悪化させる恐れがある為 だそうです。A1cの過多の記載はありません。

おそらくは実際の医療上は、コントロール良好なDM程度であれば、それほど影響はないと個人的には思うのですが、訴訟リスク・医療過誤含め後々のことを考えると、DMと指摘されたことがあるヒトであれば、おそらくは代替薬にするのが無難です。
そもそも、セロクエルをせん妄に使用すること自体が、本当は保険適応外の使用法(セロクエルは統合失調症にしか保険収載なし)なので、危ない橋は渡らない方がいいと思います。

2.パーキンソン病などの疾患を持った人のせん妄の対応はどうすればよいですか?

通常のせん妄と同様の対応ですが、より錐体外路症状の出づらい、セロクエルやルーランといった類の薬剤を使用します。おそらくは、面倒な薬剤調整となるので、神経内科の先生と精神科専門医にお任せした方が無難なケースです。

3.薬を投与して良くならなかった時、いろいろ試してみた方がよいか?

よくわからないので解答不能


薬剤師
休養をとることがうつ病の治療に必要であると医師から言われているが、休養をとることに「怠けている」と自身が思ったり、他者に思われているのではと思うので休めないと言われる患者さんがいます。その時、コメディカルとしてはどのように声掛けしたらよいか悩みます。何かアドバイスをお願いします。


具体的なアドバイスはせずに、傾聴するのがよいと考えます。特にコメディカルの方の場合ですと、治療主体の医師との整合性が図りづらくなるといった問題も出てくるので、
時間を決めて(数分でいいです。それ以上聴くと逆効果のことが多いです)対処しかねるようなことを言われたら、その処方を切った主治医に「こんなことを患者さんは思っていて、私に言ってくれました。とりあえず聞いておきました」と電話で伝えるだけでも十分医療に貢献していると考えます。患者さんは、医師の前では取り繕って、あまり本意を述べない場合も多いので、参考になると思います。
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