感染症診療の原則

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地道な感染予防、の具体的な説明と根拠

2014-08-16 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
「このエボラのアウトブレイクは終わるんでしょうか・・・・」と心配顔での質問があります。

終わります(根拠はこれまでのウイルスの流行パターンと封じ込め策が有効であったことから・・・)

終わりますが、問題は、ウイルスを持っているコウモリをはじめとする動物とヒトが接触するポイントがおおもとの感染源であるかぎり、またどこかで流行が起こるのも確実です。

日本では「早くおさまらないかな」と夏休みが消えたらどうしようとお祈りモードの人がいるわけですが、最新情報に注意しつつ、今後もおこりうるエボラのような感染症の対策で手薄だった点を整えるなど前向きに取り組んでいるhともいます。


参考までに、今回のアウトブレイクの前に「最大規模」であったウガンダはどのように流行が止まったのか(止めれたのか)。

Outbreak of Ebola fever in Uganda officially over
Eurosurveillance, Volume 5, Issue 10, 08 March 2001

2000年10月にはじまり、2001年2月27日、最後の患者から(潜伏期間の倍にあたる)6週間たっても新規患者が発生しなかったことをもって終息宣言が行われました。
WHOのGOARNから25の国際的な団体、100名を超える専門家が協力を行いました。

International Committee of the Red Cross
Institute for Tropical Medicine (Belgium)
Istituto Superiore di Sanità and the Italian Cooperation (Italy)
Médecins sans Frontiers (Netherlands and Belgium)
Institute for Tropical Medicine (Belgium)
Public Health Laboratory Service (England and Wales)
Tropical Medicine Institute (Germany)

などが協力。

Outbreak of Ebola Hemorrhagic Fever ---Uganda, August 2000--January 2001
MMWR February 09, 2001 / 50(05);73-7

Humanitarian aid to help fight Ebola outbreak in Uganda
Eurosurveillance, Volume 4, Issue 47, 23 November 2000


日本のメディアを見ていると、日本の人に煽りたいモードでのつくりであることがよくわかります。
効果音、色使い、致死率90%「!」という数字の採用、医療者も感染→だから怖いですね、というストーリー。

感染源、感染経路については、一般のところでのものと医療者レベルのところでの整理が必要です。
そして、医療者は専門職としての訓練や物品があれば予防できるはずなのになぜ感染するのか、ケアが必要な部分はどこか、またプライベートで起こりうるリスクは何かなども検討されています。


コウモリや野生動物を狩猟で確保する際のケガや血液退役曝露は、ハンターや市場での販売者、調理者には引き続きおこりうるリスクです。

血液や体液。これらは日常で他人のものにそうそうふれることはないですし、ふれたら手を洗うとして、自分の粘膜や傷にこすり付ける人はいないという前提とします。

が、これらがまじっている便や尿、吐しゃ物となると、家族が病気だと家族内で、医療機関でだと医療者が濃厚曝露することになります。


Ebola virus may be spread by droplets, but not by an airborne route: what that means


いずれにしても、対策を講じることは可能ですが、どのレベルで徹底できるのか。
経済優先、物品がない、人手がない、疲れていての事故等も影響します。


体液・・・について調べた研究。

Assessment of the Risk of Ebola Virus Transmission from Bodily Fluids and Fomites
J Infect Dis. (2007) 196 (Supplement 2): S142-S147.


感染経路についての説明書きから「HIVと似ていますか?」という質問もあります。
性的接触でもうつるのでしょうか?です。
うつります。そこに体液や血液が介在するからです。
ただし、HIVのように、感染してからどの時期にウイルスが増えて人にどれくらいうつしやすいのかという明確なデータはまだみていません。

具体的な助言は明記されています。

WHOの資料にもありますが、回復した男性が退院するときに、7週間は性交をしないようにという助言があります。

"People are infectious as long as their blood and secretions contain the virus. For this reason, infected patients receive close monitoring from medical professionals and receive laboratory tests to ensure the virus is no longer circulating in their systems before they return home.

When the medical professionals determine it is okay for the patient to return home, they are no longer infectious and cannot infect anyone else in their communities. Men who have recovered from the illness can still spread the virus to their partner through their semen for up to 7 weeks after recovery. For this reason, it is important for men to avoid sexual intercourse for at least 7 weeks after recovery or to wear condoms if having sexual intercourse during 7 weeks after recovery."


3か国の識字率は男性で50%前後、女性はその半分ということで、WHOのこの情報へのアクセスがよいとはおもいませんので、どの程度知られているのかはわかりませんが。
このことを強調すればまた偏見や差別という問題も生じることは必須だとおもいます。


Clinical, Virologic, and Immunologic Follow-Up of Convalescent Ebola Hemorrhagic Fever Patients and Their Household Contacts, Kikwit, Democratic Republic of the Congo
J Infect Dis. (1999) 179 (Supplement 1): S28-S35.

血液は採血ですが、、精液を提供してもらって研究するというのは血液以上にたいへんそうです。


うつらないんじゃ、ということと、 うつるでしょう、というヘッドラインが同じ日に出ていました。

Ebola Transmission Via Sex Unlikely - LiveScience
2014年8月6日 Can You Get Ebola from Sex?

2014年8月6日 Yes, Ebola can be sexually transmitted


今回のアウトブレイクの規模は、調査や検査法が普及してよくひろえるようになったからなのか、どのように広がったのかはまだわかっていません。
感染している人の記述疫学的な情報が整理され、ウイルスの解析がすすみ、現場で役立つ情報として出てくることが期待されます。

ウガンダとシエラレオネ、その他2国との医療インフラ、外国支援の受け入れの空気、もともとの習慣などもちがうとして、
感染症としてもこれまでとちがうのではないか?ということでの検討(印象から実証へ)も専門家が進めているところであります。

2014年4月1日 NPR
Why Is Guinea's Ebola Outbreak So Unusual?
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