感染症診療の原則

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文部科学省 と 感染症

2011-01-06 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
日本の学校でどんな内容を教えるかの大枠を示す資料として、文部科学省の学習指導要領があります。
「おいおい、これくらい学校でおしえてないのかよ」とつぶやきたくなったら、実際に学校で教えているのか(習ったか)聞いてみるとよいかもしれません。

「医療とか感染症とかわかってんの?」と思うこともあるかもしれませんが、厚生労働省から医師免許をもった人が出向で関わっていますので、情報鎖国状態ではありません(たぶん )。

しかし、この指導要領は「これを教える」というほど具体的には書かれていません。
基本的には現場を信頼した、裁量を広い記載になっています。
当然のことながら、ここに書いていないから教えてはダメというものでもありません。
(当然妥当性や根拠は問われますが)

その昔、教員養成課程の先生には、「指導要領を教えるのではなく、指導要領を生かして教えるのだ」と指導されました。

この指導要領の活用方法ですが、学校で健康教育をいうときに、けっこういいかげんなコメントをする教員や校長もいたりするのですが、すかさず「指導要領にはこうかいてありますよね」「文部科学省ははそんなこといっていませんよ」と切り返すときに使います。
「根拠とデータ」これは教員や教育委員会相手にとても大事です。


さて。感染症関係は、小学校の「清潔」にはじまり、うがい手洗いといった基本的なことから学びます。

小学校5・6年の保健の領域では

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(3) 病気の予防について理解できるようにする。

ア 病気は,病原体,体の抵抗力,生活行動,環境がかかわりあって起こること。
イ 病原体が主な要因となって起こる病気の予防には,病原体を体に入れないことや病原体に対する体の抵抗力を高めることが必要であること。
ウ 生活習慣病など生活行動が主な要因となって起こる病気の予防には,栄養の偏りのない食事や口腔の衛生など,望ましい生活習慣を身に付けることが必要であること。また,喫煙,飲酒,薬物乱用などの行為は,健康を損なう原因となること。
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とあります。体が発達し、二次性徴の変化が起こることは小学校3・4年生で学習することになっています。(昔に比べて初潮の年齢が早い子も増えていますし)

そして、中学校の学習指導要領の「保健」分野の目標は、「個人生活における健康・安全に関する理解を通して,生涯を通じて自らの健康を適切に管理し,改善していく資質や能力を育てる。」

そして(4)のエところに感染症についての記載があります。

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(4) 健康な生活と疾病の予防について理解を深めることができるようにする。

ア 健康は,主体と環境の相互作用の下に成り立っていること。さらに,疾病は主体の要因と環境の要因がかかわりあって発生すること。
イ 健康の保持増進には,年齢,生活環境等に応じた食事,運動,休養及び睡眠の調和のとれた生活が必要なこと。また,食事の量や質の偏り,運動不足,休養や睡眠の不足などの生活習慣の乱れは,健康を損なう原因となること。
ウ 喫煙,飲酒,薬物乱用などの行為は,心身に様々な影響を与え,健康を損なう原因となること。また,そのような行為には,個人の心理状態や人間関係,社会環境が影響することから,それらに適切に対処する必要があること。
エ 感染症は,病原体が主な要因となって発生すること。また,感染症の多くは,発生源をなくすこと,感染経路を遮断すること,主体の抵抗力を高めることによって予防できること。
オ 個人の健康と集団の健康とは密接な関係があり,相互に影響し合うこと。また,健康を保持増進するためには,保健・医療機関を有効に利用することが大切であること。
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内容については一文記載があります。

「(9) 内容の(4)のエについては,後天性免疫不全症候群(エイズ)及び性感染症についても取り扱うものとする。」

(うーん。予防接種がらみのことはこれから追加してもらわないといけないですね)

エイズだけ教えている学校に、それじゃだめ、他の(なる確率の高い)STDもおしえないといけないんですよ、の根拠はここにあります。

ときどきコンドームを見せたり使用方法を教えることがバッシングされていますが、

「(10) 保健分野の指導に際しては,積極的に実験や実習を取り入れたり,課題学習を行うなど指導方法の工夫を行うものとする。」

とありますので、いけない!という人たちはナゼいけないのか説明も必要です。
(個人的にはこれは自己学習すべきもので、グループではしゃぎながら扱うネタではないとおもっています)

このほか、鳥フルの話がでると「飼っている動物に野鳥がちかよらないよう注意しましょう」文書も流れてきます。これも感染症の話題のひとつ。
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