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第9回 若セミ 神経内科 池田先生 Q&A

2020-01-24 | Aoki Office
質問内容 : 観察は視診と同様に時間経過で変化するものと思います。なにげない所見を記録しておくと、時間をおいて、その所見が意味のあるものであったかわかることがあるように思います。主訴を聞く前に、何に着目するかは決めておられるのでしょうか。また、時間経過に注意すべき観察所見はありますでしょうか。

回答:(後述)

質問内容 : ご講演ありがとうございます。
お話から「観察」をSystem1に近いものと捉えております。具体例としては、アルツハイマー型認知症の夫が質問の度に、妻の方を振り返る様子などが典型的かと感じました。言語化が難しいところと思いますが、(特に若手医師にとって)先生が考える「観察」の効果的トレーニング方法があれば、是非ご教示下さい。

回答:冒頭のスライドの,小林一茶の句「やれうつな,蠅が手を擦る足を擦る」が示す通り,「観察」は臨床に限らず,極めて日常的なものです.そして豊倉康夫先生が「日常生活の中での神経学」お示しになったように,日常生活の中に膨大な数の臨床的観察の着目点があります.おわかりでしょう.一般的な観察と異なる特別な,「臨床的観察」が存在するのではありません.そして問診も実はその観察の一環です.なぜなら,問診は,患者さんに自分の生活を振り返ってもらう,自分の生活行動の観察結果を報告してもらうことだからです.では,診療の場での観察や,患者さん自身の観察結果報告聴取に上達するためには何が必要か?それが患者さんに対する興味,好奇心です.一茶は蠅にさえ好奇心を持って観察しました.ならば,きっと一茶は生きとし生けるもの,もちろん人間に興味津々で観察していたでしょう.もしかしたら,自分は問診も観察も苦手だと考える医師がいるかもしれません,でも,そんな医師でも,人間には興味を持っています.なぜなら,人間に興味を持たない人はそもそも医師を志さない,たとえ何かの間違いで医学部に入っても臨床医にはならないからです.全ての臨床医は人間に対する興味を持っています.一茶のような観察眼の素質を持っているのです.ならば日常生活の中で「観察」の訓練もできるはずです.本来は「観察」の効果的トレーニングなど不要なはずなのです.それなのに観察に上達するために特別な訓練が必要だと感じるのだとすれば,それはあまりにも「狭義の」臨床に忙殺される余り,ゆったりした日常生活や余暇の中でこそ気づける,観察の面白さを忘れてしまっているからではないでしょうか?

質問内容 : 分かりにくくて申し訳ありません。
診察中に変化する所見のことです。例えば入室時は普通の歩行であったが、しばらく座って退室するとき、小刻み歩行になっていた。この場合は、初めに気づいていなかったのか、坐位安静の後で所見が変わったのか?主訴がわかっていれば、ある程度観点はあるのでしょうが、初見では、見るところは限られてくると思います。
これは特殊な場合でしょうが、診察の始めと終わった後くらいのスパンで、変化をみなければいけない病態があればご教示をいただきたいと思います。

回答:診察の場合には検者の診察手技によって所見は変わります.一方観察の場合には観察者の影響は受けにくいわけですが,それでも観察所見が変動することがしばしばあります.たとえばパーキンソン病の振戦はたとえ患者さん自身が振戦を訴えている場合でも,医師と対面している場面では振戦が非常にわかりにくく,時には消失している時さえあります.こういう時に神経内科医は患者さんの注意が手に向かない時(最も一般的なのは歩行時)に振戦の有無を確認します.これは振戦を抑制する患者の注意を解除することによる増強法の一種です.一方,抑制,増強の要素は既知ではないけれども所見が変動する場合もあります.そのような場合でも,
●その診察場面でどのような時に所見が増強・減弱するかを記載する.
●振戦と同様に患者さんの注意が所見のある局所からはずれた時(たとえば問診の会話中)に問題の所見がどうなっているかをさりげなく観察する.たとえば体幹失調の患者さんは座位でも上半身は揺れるので,知らず知らずのうちに診察机に手を掛けている.
●問題の所見が増強する可能性のある負荷をかけた診察で観察する.たとえばこれも体幹失調が疑われる時は,手を膝の上に乗せた姿勢でベッドの縁に浅く腰掛けてもらう.つま先を揃えて経ってもらう
以上のように,観察の条件をいろいろ変えることによって,得られる所見の強度,確実性,変動幅といった変数を把握します.



質問内容 : 右側に崩れ落ちたのでしょうか?

回答:わかりません.救急場面では時間の制約(詳しい病歴を取っている暇がない),家族も気が動転している,直接では無くて伝聞の要素が大などの,種々の条件によって,十分な病歴が取れない場合も多くあります.

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