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「思春期ワクチン・・」その2 髄膜炎菌ワクチン(米国予防接種会議)

2011-04-01 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
Tdap, 髄膜炎菌ワクチン、HPVワクチンの3つが思春期のワクチンとして語られています。
日本はここにHBVワクチンを足す必要があるように思います。

性交開始後にSTIとして感染するリスクがあるからです。

今回の予防接種会議でHBV関連は2つ独立セッションがあり、どちらも母子感染予防でした。
生まれてすぐに接種が始まるユニバーサルワクチンになっている国ですが、移民の多さ、ワクチン拒否家庭の増加などから感受性者、キャリアともに一定数存在し、母子感染をゼロにはできていないそうです。
(なんとかせねばいけない!という関係者の意気込みがすごい)

中蔓延国で、キャリア化しやすいtypeAが流行しているぞ~というメディア記事が増え、研究班などにお金もついていますが、全体のpracticeの質を変えるにいたっていません。
予防接種のワーキンググループではユニバーサル接種が推奨されているようですし、パブリックコメントでもそのような意見があちこちの団体から出ていました(全部読みました)。

さて。
髄膜炎菌ワクチンはどうでしょう?

髄膜炎菌による三大健康リスクは、「髄膜炎」、「敗血症」、「肺炎」です。

アフリカではセロタイプA、W-135、英国ではC、米国ではB,C,Yが主に循環しているタイプになっています。
(輸入症例もあるので今時は調べてみないとわかりませんね)

このワクチンは米国でも実はいまいちもりあがれないでいるのだそうです。
なぜならばlow burdenだから。“把握されている”症例数が少ないから。
また、接種しても5年くらいで免疫が落ちるらしい、という評価から。→コンジュゲートワクチンの登場で少しかわる

しかしひとたび感染したら、致死率が高く(米国では10-14%)、サバイバーの11-19%に重篤な後遺症が生じます。
集団へと拡大するリスクのある感染症のためアウトブレイク時には曝露後対応が必要になります。
毎年2600人が感染し、その多くは5歳以下の子ども。次のピークは思春期層です。

1979年にポリサッカライドのワクチンが、旅行者ワクチンとして認可され、
2000年には大学入学時に特定の条件の学生に接種が推奨されました。
2005年にコンジュゲートワクチン MCV4が認可され
2006年にACIPが接種を推奨。

現在推奨されているのは、Serogroups A, C, Y , W-135に有効のコンジュゲートワクチンで、
Menactra (MCV4)- Aventis Pasteur(2005年)  対象2-55歳
Menveo (MCV4)-Novartis(2010年)対象  11-55歳 となっています。

2004-2005年と2008-2009年の19歳以下での発生動向をみるとセロタイプCとYについては、10万人あたり0.23から0.14と下がっていることが把握されています。
(モニタリングシステムって大事ですね)

免疫の維持期間が問題となっています。
ワクチン接種歴のある症例が30例以上報告されており、ワクチン接種群と未接種群での死亡率もかわらない(20%)ことが検討も課題です。

コンジュゲートワクチンになってから約~10年の効果が見込まれていますが、
-現在11-12歳で接種しているのをもう少し年齢をあげたほうがいいのではないか→14-15歳
-途中でブースターをしたほうがよいのではないか ①11-12歳 ②16歳
という意見が出ました。

年間の数がそれほど多くない(サベイランスの精度は一定以上という条件のもとの話)場合、誰を対象にどこまで推奨するのかということが問題になります。もちろん費用対効果の検討も重要になってきます。

※最新の髄膜炎菌ワクチンの推奨内容はこちら→MMWR 2011年1月28日号

アウトブレイクの報告
ドイツ(EID 2010 Mar) セロタイプB
オクラホマ州でのアウトブレイク事例では11歳と7歳の2例が死亡しています。
2007年にワクチン接種をしたのに死亡した女性の事例は2011年1月22日に報じられています。

serotypeBのワクチン「MeNZB™」はニュージーランドの会社が作っていたのですが、現在製造中止になっており、在庫の使用期限も2011年3月31日でおわりをむかえました。

日本ではどうでしょうか?

5類の全数報告疾患です。診断したら保健所に届けます。曝露後対応などもあるので7日でいいのか?という指摘をよくききます。
※感染管理担当の医師やスタッフは曝露後対応についてしっていないといけません。

どれくらいの有病率なのか?
国立感染症研究所 IASR「髄膜炎菌性髄膜炎 1999~2004」
日本で一番疫学情報が豊富で正確、更新頻度もまめな横浜市衛生研究所のページがとても勉強になります。

診断したらタイピングのために、保健所→地方衛生研究所(→国立感染症研究所)へ検体を送ることも今後の対策に役立ちます。なれた検査室は検体提供依頼に備えて準備をしてたりします。
医療機関の費用負担はなく、解析結果も主治医/検査室あてに報告されます。容器は研究所から送られてきます。

ワクチンについては、未承認ですが輸入ワクチンとして対応している医療機関が複数あります。
「トラベルクリニック」などで検索をするとよいかもしれません。

都立駒込病院 http://www.cick.jp/kakuka/vaccine.html
ナビタスクリニック立川http://www.navitasclinic.jp/aboutus/vaccine.html
原宿 キング・クリニックhttp://homepage3.nifty.com/drleoking/THE_KING_CLINIC_JP/VACCINATIONS.html
品川イーストクリニックhttp://izavel.com/meningitis.html
必要時には詳しい先生のいるところで受診相談を~
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