最近の世界を震撼させる問題は,生態系のバランスを考えた行動が必要であるという,大規模経済活動に対する自然からの警鐘ではないか,と考える。
では,生態系のバランスを考えた行動とは何かといえば,第一に身近な自然環境と自分との関わりの度合いを知ることである。
身近な環境で基本となっているのは,流域である。人びとは必ず流域において生活する。日本は島国であり全国各地に流域が存在し,大きな流域に大都市を形成し生活している。流域では食料が生産され人びとの生活を潤す。人間が一番身近で恩恵を受けている(水害も発生するが)のが流域だ。空間的にも山頂から海までつながっている一つの生態系の中心に流域が位置している。その価値を意識して,行動することがまず大事なのではないか。
しかし,科学技術が発展し,流域を意識しなくても生活できるようになった。物質が流域を簡単に飛び越えて高速で世界中を流通する。もう一度,流域ごとにある生態系のバランスを考えるときが来ているのではないだろうか。森川海つながり意識 (Frost-River-Ocean Nexus Consciousness)という思想がある。水圏環境リテラシーにも通じる。
近著で紹介する予定である。この思想を持ちながら,物事の価値判断によって,小規模な農林漁業をはじめとした自然のバランスを基調とした活動に光を見出していけるような仕組みづくりに関する提言のための教育研究を行っていきたいと考えている。その中核となるのが各地域の水圏環境教育推進リーダーの役割だ。全国で行われている流域での活動を支援する担い手が増えることを期待している。