Dr. WAKASAGI at HEI-RIVER(閉伊川ワカサギ博士)

森川海をつなぐ学び合いの活動を紹介します

ボラはなぜ集まるのか?

2009-11-04 | 東京湾

 下水処理場の排水口から,大量の処理水が流れ出る。排水口周辺には,通年,ボラが生息し,競うように排水口に集まっている。トドと呼ばれる60cm超級の大型ボラから,小型のボラまで大挙として群れている。一体なぜ,ボラは集まるのか?
 
 ボラの好物は海藻である。しかし,海藻以外にも様々な食べ物を食べるようだ。ボラを水槽で観察していると面白い。底層を丸ごと口に加え,砂など口から不要になった物をはき出している。

 では,排水口付近では何をしているのか?品川では,体の大きい個体が排水口に近い場所に群れる。ここは排水からの流れが激しいところである。

 よくみていると,排水口から流れ出てくる白色の直径2-3mm程度の細かい粒子を食べている。時に,茶色のものも見られる。

 その正体は一体何であろうか?私たちは仮説を立てた。もしかしたら,それはボラの好きな藻類かもしれない。ボラの好きな藻が沈殿池に生えているかもしれない。

 早速,処理場の見学をすることになった。ここは東京ドーム4.5個分の広大な敷地に,沈殿池,微生物浄化槽が並んでいる。もうすでに,還暦を迎えた施設もある。

 よくみていると,沈殿池には茶色の浮遊物が浮かんでいる。まさしく,排水口から流れ出るものによく似ていた。「あれは,何でしょうか?」「排泄物などです」

 そして,その茶色の有機物は25mプールの端から端へとゆっくり流れに従って動いている。少しずつ移動させながら沈殿させるのだ。深海に降り注ぐマリンスノーのようにゆっくりと沈んでいく。

 しかし,沈まないものも当然ある。沈殿しないものは,上澄み液に一緒に取り込まれ,排水処理へと回される。その後,最終的に排水口へ流れ出るのであろう。

 さらに,雨水が大量に入り込むと,沈殿が大幅に間に合わない。凝集剤は,有機系凝集剤やポリ塩化アルミニウム(PAC)を使用する。

 実は,近年の沿岸のマンション大開発で大量の汚水が発生し,処理能力の限界を超えている。この処理場は3つの区を担当する。3区を合わせると150万人以上が住んでいる。さらに,昼間の出勤者を合わせるとそれ以上であろう。還暦を迎えた沈殿池には,物足りなさを感じた。後で聞いた話だが,昨年は東京ドーム12杯分の有機物が運河に流れ出たという。運河のヘドロの正体である。

 5年後には,ここに1000億円をかけて巨大な排水処理施設が出来るそうだ。そのお金はもちろん税金だ。

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