売主は東京在住のAさん。売り地は,甲地(Aの単独所有)と道路持分である乙地(ABの共有)の2筆。2筆とも昭和50年代に相続で取得していた。
事前に,甲地は権利証があり,乙地は権利証がないことが分かっていたので,「本人確認情報」を作成するための資料として,健康保険証と年金手帳など本人確認ができる書類を2通持って来て貰うように,仲介業者を通じてお願いしていた。その前に,運転免許証やパスポートなどのように顔写真の載っている公的な証明は,お持ちでないことも聞いていた。
決済現場で,売り主に本人確認の書類を求めたところ,提示されたのは,健康保険証だけ。年金手帳が必要という話は聞いてないという。これには理由があり,買主と売主の仲介業者間の間で,本人確認書類が,健康保険証と住民票で足りることになっていたらしい。電話とFAXであれほど説明したのに……。
ABは姉妹で,長姉のBが鹿児島に住んでいて,Bさんが持っている可能性が高いので,Bさんに電話で事情を説明して,B宅に行った。ところが,乙地の権利証は,全く見当がつかないという。
このままでは決済ができない。一旦東京に戻って貰って,日にちを改めるしかないかと思ったときに,公証人の認証を思いつく。公証人は,司法書士と違い,実印と印鑑証明書で本人確認ができるはずである。
Aさんに持参した印鑑証明書の数を数を訊くと幸いにして2枚あるという。早速公証役場に電話をして,午後からの認証の時間を約束する。
約束までの時間に,日本加除出版の『Q&A登記に使える公正証書・認証手続き』で調べると,196頁に「申請情報(登記申請書)や添付情報である委任状について公証人の認証がされている場合には,結果的に登記所の事務処理過程において本人確認「の」ための事前通知は省略されますので,……」
認証には委任状が必要であることが分かったので,仲介の方に委任状をとりに来て貰い,その日に認証をして貰い,翌日の朝に決済を終了した。そのときの委任状は,登記原因証明情報を援用する形式のものではなく,登記内容がすべて分かるものを作成した。原因は,「平成27年4月〇日予定の売買」と作成。
後日この経緯を大阪出身の司法書士に話したら「都会では結構利用されているようですよ」とのこと。実際はどうなんだろう?
上記の本に,公証人が認証をする文例として次の3つ載っている。(ア)公証人が嘱託人の氏名を知り,かつ,面識があり場合。(イ)公証人が印鑑及び印鑑証明書により本人確認をしている場合。(ウ)運転免許証により本人確認をしている場合。司法書士の場合は,公証人に比べて本人確認の方法が厳しくなっている。(上記の内容は,事実とは若干ことなります。)
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