宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

沖田瑞穂『すごい神話』51.「骰子賭博は身を亡ぼす――『マハーバーラタ』の盤上遊戯神話」:中国の「碁」が宇宙の営みを表すように、インドの「骰子賭博」も宇宙の運行を表す!

2023-11-04 14:40:38 | Weblog
※沖田瑞穂(1977-)『すごい神話』(2022)第四章 インドの神話世界(42~52)

A 『マハーバーラタ』において、「パーンダヴァ」五王子側の長兄、ユディシュティラ王が「骰子(サイコロ)賭博」に負け続け不幸を招いた。ユディシュティラは、彼に対抗心を燃やす従兄弟ドゥルヨーダナ(「カウラヴァ」百王子側の長兄)と伯父シャクニと「骰子賭博」を行い、シャクニのいかさまによって負け続け、結局、弟たちと妻ドラウパディーと共に13年間、国を追放される。
A-2  中国の「碁」が宇宙の営みを表すように、インドの「骰子賭博」も宇宙の運行を表す。インドには4つの「ユガ」と呼ばれる長大な時代区分があり、4つのユガのそれぞれの名称が骰子賭博の目に対応している。最初の時代「クリタ・ユガ」の「クリタ」は、4つの良い特徴を備えた最高の賽の目、次の時代「トレーター」は3つ、三つ目の時代「ドゥヴァーパーラ」は2つ、最後の時代「カリ」は1つのみの良い特徴を備えた賽の目だ。

B ユディシュティラは王の義務として「骰子賭博」を行った。それは、世界を運行させる者としての王の義務だった。

C このように中国やインドの盤上遊戯(Ex. 「碁」、「骰子賭博」)において、ゲームの進行は世界の運行を意味する。
C-2  これは、現代のゲーム、とくにRPG(ロールプレイングゲーム)において「神の視点」を持つプレイヤーが、ゲームという「仮想世界」を運行させていく構造とよく似ている。

《参考1》「ユガ」は、12,000神年=432万年にあたる「マハーユガ」を前から4:3:2:1の割合で分割した期間である。それぞれの「ユガ」は段々と悪い世界になる。「ヴェーダの法と正義」もそれぞれの期間で4:3:2:1の比率で減り、悪がはびこる。
 1.「クリタ・ユガ」(4800神年)(172.8万年)すべての法と正義が保たれ、人は病気にならず、400年の寿命を持つ。
2.「トレター・ユガ」(3600神年)(129.6万年):法と正義が4分の3まで減った世界。人間の寿命は300年。
3. 「ドヴァーパラ・ユガ」(2400神年)(86.4万年):法と正義が半分になり、その分悪がはびこる世界。人間の寿命は200年。
4. 「 カリ・ユガ」(1200神年)(43.2万年):法と正義が4分の1まで減った世界。人々は神から遠ざかり、悪が世界を支配する。人間の寿命は100年になる。「カリ・ユガ」は人間の時間では43万2千年続く。カリ・ユガの時代では人々はヴェーダの教え(「ヴェーダの法と正義」)から離れて宗教的に堕落し、神々は信仰されず、支配者は理性を失い、世界ではあらゆる悪が行わる。現在の私たちが生きる時代はこの「カリ・ユガ」に当たる。「カリ」は対立・不和・争いを意味し、またこの時代を支配し世界を悪で満たす「悪魔カリ」を指す。
4-2. この「カリ」を倒すために登場する救世主がヴィシュヌの化身「カルキ」だ。「カリ・ユガ」の終末期、カルキは白馬に乗った騎士、又は馬頭の巨人として登場し、世界の悪を滅ぼす。世界を救い使命を果たしたカルキが天界に帰ると「カリ・ユガ」の時代は終わり、また法と正義で満たされた「クリタ・ユガ」の時代が始まる。

《参考2》中国に「生死を司る星」の話がある。ある少年(趙の子)に、管輅(カンロ)という物知りの男が言った。「大きな桑の木のそばで碁を打っている二人の男がいる。お前は酒と鹿の干し肉を持っていき、酒をついだり肉を差し出したりお給仕をしなさい。ただし決して口をきいてはならない。」少年が行くと確かに二人の男が碁を打っていた。二人は少年に見向きもしない。少年は黙って懸命に給仕をした。碁を打ち終わると北側の人が「どうしてこんな所にいるのだ」と少年をしかりつけた。少年はただ頭を下げるばかりで何も言わなかった。南側の人が「ご馳走になったのだから」ととりなし、北側の人から「台帳」を受け取った。そこには「趙の子、寿命十九前後」と書かれてあった。南側の人が、その十と九の間に上下を逆さまにするS字の記号を入れた。少年は二人から「お前の寿命を延ばし九十まで生かしてやるよ」と言われ、何度も頭を下げ、黙って去った。少年は急いで家に帰り、管輅(カンロ)に報告した。管輅が言うには、北側に座っていた人が「北斗(七)星」で人間の「死」を扱う星だ。南側の人が「南斗(六)星」で人間の「生」を扱う星だ。そもそも人間がこの世に生まれるのはみな、南斗が北斗のところに行って頼むのだ。なにか願いことがあればみな北斗星に対してお願いするのだという。

《参考2-2》この「生死を司る星」の話で「碁盤」は世界そのものであり、黒と白の「碁石」は世界を構成する「陰と陽の気」を表す。「碁」を打つことは「天体の動き」・「人間の地上における営み」を象徴する。北斗星と南斗星が「碁」を打つことは、世界を動かす「聖なる」営みである。一方少年は「俗」世界に属する。少年が「口をきくこと」は「聖」の中に「俗」をもちこむことであり、少年には「口をきくなの禁」が課される。少年が「口をきくなの禁」を守ったので、寿命を延ばしてもらえた。
《参考2-3》「北斗七星」と「南斗六星」は中国の星座で、現在の天文学ではそれぞれ「おおぐま座」、「いて座」の一部になっている。 「北斗七星」は人の「死」をつかさどり「南斗六星」が「生」をつかさどる。
《参考2-4》「陰陽思想」によれば、原初の混沌(カオス)の中から澄んだ明白な気すなわち「陽の気」(能動的な性質)が上昇して「天」となり、濁った暗黒の気すなわち「陰の気」(受動的な性質)が下降して「地」となった。この二気の働きによって万物の事象を理解・予測する。具体的には「陽」は光・明・剛・火・夏・昼・動物・男などであり、「陰」は闇・暗・柔・水・冬・夜・植物・女などである。
《参考2-5》「陰」と「陽」は相反しつつも、一方がなければもう一方も存在しない。森羅万象、宇宙の万物は、陽と陰の二気によって消長盛衰し、陽と陰の二気が調和して初めて自然の秩序が保たれる。「陰陽二元論」は善悪二元論ではない。陽が善で、陰が悪でない。陽は陰があって、陰は陽があって存在する。
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