宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

金子武蔵『ヘーゲルの精神現象学』Ⅱ本論(四)「精神の史的叙述」2「中世から近代へ(or道徳)」、へ「ロマンティスィズム」(その3):「ずらかし」から出てくる「統一をつかむ意識」が「良心」だ!

2024-09-03 14:46:31 | Weblog
※金子武蔵(カネコタケゾウ)『ヘーゲルの精神現象学』ちくま学芸文庫(1996)(Cf. 初刊1973)
Ⅱ本論(四)「精神の史的叙述」へ「ロマンティスィズム」(その3)(297-299 頁)
(74) C「道徳性」の第3段階:c「良心」①「実行型の良心」(「悪心」となりうる)!
Cf.  C「道徳性」の第1段階であるa「道徳的世界観」(カント)は矛盾だらけだから、それが「具体的」に働くときにはb「ずらかし」という C「道徳性」の第2段階が生ずる。(296頁)
Cf. b「ずらかし」においておのずと「統一をつかむ意識」が出てくるが、これがC「道徳性」の第3段階c「良心」にほかならない。(297頁)

★この「良心」において、「自己」は最高の段階に到達した。(297頁)
☆第1の「自己」は「法的自己」(Cf. (BB)「精神」A「真実なる精神、人倫」c「法的状態」)、第2の「自己」は「絶対的自由の自己」(Cf. (BB)「精神」B「自己疎外的精神、教養」)、そして第3の「自己」が「良心としての自己」だ。(Cf. (BB)「精神」C「自己確信的精神、道徳性」a「道徳的世界観」b「ずらかし」c「良心、美魂、悪とその赦し」)(297頁)

★C「道徳性」の第1段階a「カントの道徳」は「汝の意志の格率Maxime が常に同時に普遍的立法の原理として妥当しうるように行為せよ」という定言命法、わかりやすくいえば、「例外を求めるな」という「抽象的命令」をくだすだけで、「個々の場面」にのぞんでどうしたらよいかは、これを教えない。(297-298頁)
☆ところでb「ずらかし」(C「道徳性」の第2段階)の運動を通じたc「良心」(C「道徳性」の第3段階)は、「個々の場合」にどうしたらよいかということを、もうちゃんと心得ているから、このc「良心」の段階(C「道徳性」の第3段階)になって、「主体」は初めて「行為」することができる。(298頁)

★しかし「これがおれの義務だ」とか、「これが良心の命ずるところだ」などといっても、それは自分の行為や意見に「良心性」というレッテルをはるにすぎない。(298頁)
☆だから「実行」する時には「『個別性』への偏り」があらわとなり、そこに「良心」は同時に「悪心」になる。(298頁)
☆このような「実行型の良心」は、歴史的には、ヤコービ(1743-1819)に代表される「直接知」の「実践的」側面であるが、ヘーゲルはそれを批判している。(298頁)

《参考》ヤコービ(1743-1819)は「媒介知」を否定し「直接知」によって神を認識しうるとする。またヤコービは「思惟の有限性、特殊性」ゆえに、「思惟は真理をとらえることはできない」とする。哲学的論証とは「概念」的把握であり、それは「真実なものを真実でないものに変える」、したがって「神や真実在は直接知によってのみ知られる」とヤコービは言う。

★「義務」であると確信することをすぐに「実行」に移して、「良心」が同時に「悪心」であることを暴露するような「良心」が、①「実行型の良心」だ。しかしC「道徳性」の第3段階c「良心」は、①「実行型の良心」(「悪心」となりうる)のみではない。「良心」には②「美魂型の良心」(or「批評型の良心」)もある。(後述)(298頁)

Cf. ヘーゲル『精神現象学』の目次!
(A)「意識」(「対象意識」):Ⅰ感覚的確信または「このもの」と「私念」、Ⅱ真理捕捉(知覚)または物と錯覚、Ⅲ力と悟性、現象と超感覚的世界
(B)「自己意識」:Ⅳ「自己確信の真理性」A「自己意識の自立性と非自立性、主と奴」、B「自己意識の自由、ストア主義とスケプシス主義と不幸なる意識」
(C)(AA)「理性」:Ⅴ「理性の確信と真理」A「観察的理性」、B「理性的自己意識の自己自身による実現」(a「快楽ケラクと必然性サダメ」b「心胸ムネの法則、自負の狂気」c「徳と世路」)、C「それ自身において実在的であることを自覚せる個人」(a「精神的動物の国と欺瞞あるいは事そのもの」b「立法的理性」c「査法的理性」)、
(BB)「精神」:Ⅵ「精神」A「真実なる精神、人倫」(a「人倫的世界、人間のおきてと神々のおきて、男性と女性」b「人倫的行為、人知と神知、罪責と運命」c「法的状態」)、B「自己疎外的精神、教養」Ⅰ「自己疎外的精神の世界」(a「教養と現実の国」b「信仰と純粋透見」)・Ⅱ「啓蒙」(a「啓蒙と迷信との戦い」b「啓蒙の真理」)・Ⅲ「絶対自由と恐怖」、C「自己確信的精神、道徳性」(a「道徳的世界観」b「ずらかし」c「良心、美魂、悪とその赦し」)、
(CC)「宗教」:Ⅶ「宗教」A「自然宗教」(a「光」b「植物と動物」c「工作者」)、B「芸術宗教」(a「抽象的芸術品」b「生ける芸術品」c「精神的芸術品」)、C「啓示宗教」、
(DD)「絶対知」:Ⅷ「絶対知」

Cf. 金子武蔵『ヘーゲルの精神現象学』Ⅱ「本論」:目次!
(一)「意識(対象意識)」1「感覚」、2「知覚」イ「物」ロ「錯覚」ハ「制約せられない普遍性(内なるもの)」、3「悟性」イ「力」ロ「超感覚的世界あるいは法則」ハ「無限性」
(二)「自己意識」1「生命あるいは欲望」2「主と奴」3「自由」
(三)「理性」1「観察」2「行為」3「社会」
(四)「精神の史的叙述」1「古代(あるいは宗教)」イ「東方的時代」ロ「ギリシャ時代」ハ「ローマ時代」ニ「原始キリスト教」、2「中世から近代へ(あるいは道徳)」イ「教養」ロ「信仰」ハ「透見」ニ「啓蒙」ホ「フランス革命」へ「ロマンティスィズム」、3「現代(あるいは絶対知)」

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