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松本明子「所得再分配の壁」(『世界』2024.2月号):「情け」・「国の施し」は受けたくないとの気持ちと、「国」は「社会権」を保障すべきだとの気持ちが、アンビバラントな状態にある!

2024-02-15 14:12:27 | Weblog
※松本明子「所得再分配の壁――世論調査と実験からの模索」(『世界』2024.2月号、78頁以下)
①日本は1980年代以降、所得格差(ジニ係数)が拡大傾向にあるが再分配所得ジニ係数はあまり大きくなっていない。(2000年代以降は変わらない。)
《感想》日本は「貧困」への対策に注文は色々あるとしても、所得再分配に関し政府が「力を入れている」というべきだ。

②「平均所得未満なのに、所得再分配に反対する者」が抱く理由は、「情け」・「国の施し」は受けたくないとの気持ちだ。(Ex. トランプ支持の平均所得未満の白人労働者。)
②-2 20世紀前半に社会福祉・社会保障は「社会権」となった、つまり人権となった。(戦争が総力戦となったため。)
《感想》日本では、一方で「情け」・「国の施し」は受けたくないとの気持ちと、他方で「国」には貧困に対し一定程度の施策をする「責務」がある(「社会権」の保障をすべきだ)との気持ちとが、アンビバラントな(両価的な)状態にある。

③日本では「情け」は相手にとってよくないとの猜疑心がある。(Ex. 「情けは人のためならず」という格言を、「人に情けをかけるのは本人のためにならない」と解釈する。)「貧困」に関し「蟻とキリギリス」の自業自得論が、若者を中心に強い。
(Cf. 「情けは人のためならず」は本来、「人に情けをかければ巡り巡って自分も情けをかけられる」、つまり「人に親切にせよ」ということを意味する。ところが今はしばしば「人に情けをかけるのは本人のためにならない」という意味に解釈される。)
《感想》「貧困」に関し、一方で「親ガチャ」(親の経済力・地位等によって子の社会的成功のチャンスが決まること)が事実としてあるのは確かだ。しかし他方で「貧困」に関し「蟻とキリギリス」の自業自得論も、一面当たっている。

④若者は特に、年金財政が厳しく「自分たちは将来、年金がもらえない」と思っている。
《感想1》日本の若者は、老人(高齢者)の社会保障のための負担が、重く自分たちにかかるのに、若者の将来の社会保障(Ex.年金)があてになりそうもないので、今、社会保障(年金・介護)で「いい思い」をしている老人に対し、いい感情を持っていない。「老人」に対して「情け」をかけるほどの余裕が「若者」にはない。
《感想2》「若者」を取り巻く経済・社会的状況は過酷だ。非正規雇用化が進み、若者の多くが「使い捨て」労働力とされ、将来に期待が持てない。

⑤社会保障は「所得制限」を廃止し、道路整備のように「全ての人」に提供した方が、社会保障に賛成する者が増える。(Ex. 高等教育の全員無償化)(Ex. アメリカでは所得・性別・人種・左派右派に関係なく「政府の活動規模の拡大」=「大きな政府」への賛成が多くなる!)税が所得に比例(or累進)するので、高所得・低所得関係なく社会保障が「同額」提供されても、格差縮小(=所得再分配)になる。
《感想》「全ての人」に提供される社会保障という理念は、確かに「政府の活動規模の拡大」=「大きな政府」に対する反対者を減らす効果があるだろう。

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