※叢小榕(ソウショウヨウ)編著『老荘思想の心理学』新潮新書、2013年:第7章「何を判断の基準とすべきか」
(30)倒錯――『常識』と『非常識』の誤謬(『列子』周穆王)
秦の逢氏の息子が錯乱の病にかかった。歌声を泣き声と思い、白を黒と思い、良い香りを臭いと感じ、甘いものを苦いと感じ、間違ったことをしては正しいと思うようになった。天地、四方、水火、寒暑にいたるまで倒錯しないものはなかった。困った父親が息子の症状(非常識)を老子に相談すると、老子が言った。「もし天下のものがことごとく錯乱したならば、お前さんのほう(常識)こそ、錯乱している(非常識)ということになる。」(『列子』周穆王)
★「常識」とは、「みんながそうしている」または「みんながそう言う」ので正しいとすることにすぎない。
★『韓非子』(カンピシ)「内儲説(ナイチョゼイ)上」に「三人虎を成す」という話がある。「市に虎があらわれた」と1人が言っても、また2人が言っても魏王は「信じない」が、3人が言えば「信じる」という話だ。市に虎がいないのに、3人の人が言うと、虎があらわれたことになるという話だ。
★「常識」とは「みんなが言うから本当だ」と思うことだ。
Cf.1 「同調性バイアス」(Majority bias):人は多数の他者と同一の行動をとろうとする。つまり自分以外に大勢の人がいる時、とりあえず周りに合わせようとする。周りに合わせることによって起こる認知のゆがみ。(Ex. 心理学者ソロモン. E. アッシュの同調圧力実験。)
Cf.2 「正常性バイアス」(Normalcy bias):予期しない事態にあったとき、「そんなことはありえない」といった先入観・偏見を働かせて、「事態は正常の範囲」だと自動的に認識する心のメカニズム。
(30)倒錯――『常識』と『非常識』の誤謬(『列子』周穆王)
秦の逢氏の息子が錯乱の病にかかった。歌声を泣き声と思い、白を黒と思い、良い香りを臭いと感じ、甘いものを苦いと感じ、間違ったことをしては正しいと思うようになった。天地、四方、水火、寒暑にいたるまで倒錯しないものはなかった。困った父親が息子の症状(非常識)を老子に相談すると、老子が言った。「もし天下のものがことごとく錯乱したならば、お前さんのほう(常識)こそ、錯乱している(非常識)ということになる。」(『列子』周穆王)
★「常識」とは、「みんながそうしている」または「みんながそう言う」ので正しいとすることにすぎない。
★『韓非子』(カンピシ)「内儲説(ナイチョゼイ)上」に「三人虎を成す」という話がある。「市に虎があらわれた」と1人が言っても、また2人が言っても魏王は「信じない」が、3人が言えば「信じる」という話だ。市に虎がいないのに、3人の人が言うと、虎があらわれたことになるという話だ。
★「常識」とは「みんなが言うから本当だ」と思うことだ。
Cf.1 「同調性バイアス」(Majority bias):人は多数の他者と同一の行動をとろうとする。つまり自分以外に大勢の人がいる時、とりあえず周りに合わせようとする。周りに合わせることによって起こる認知のゆがみ。(Ex. 心理学者ソロモン. E. アッシュの同調圧力実験。)
Cf.2 「正常性バイアス」(Normalcy bias):予期しない事態にあったとき、「そんなことはありえない」といった先入観・偏見を働かせて、「事態は正常の範囲」だと自動的に認識する心のメカニズム。