録画してあった「ぽつんと一軒家」を見た。東北地方のリンゴ農家での話だった。
農家:「今年は霜被害のリンゴが多く、霜害のリンゴは出荷できない」と言いながら、樹上の表皮の色合いが悪いリンゴを見せてくれた。「でも、霜害のリンゴは甘い」と。
スタジオの司会進行のお二人:「甘いのに出荷できないなんて、もったいない」と。
多くの視聴者も、「もったいない」と思ったかも知れない。
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生産者は「出荷できない」と言い、一方で消費者は「もったいない」と言う。『ズレ』があった。
素人が勝手な想像をしてみた。専門家ではないので、間違っているところがあれば、お許し頂くとして・・・
・・・消費行動は・・・
店でリンゴを買うとき、誰もが品種・見た目のきれいさ・大きさ・価格を見比べながら選ぶ。「霜害リンゴ」が同じような値段で横に並んでいたと仮定したら、無視されるに違いない。割安価格にしない限り、買う人はいない気がする。
「霜害のリンゴ」、テレビで多くの人が「もったいない」と思ってくれても、いざ買うとなったら「見た目だけ」で敬遠される運命にある。割安でしか通用しない。
・・・その結果・・・
市場(卸売会社)に、仮に「霜害リンゴ」が産地から出荷され、買い手(量販店・仲買人)があったとしても、安値で売買されれば、市場手数料や市場までのトラック運賃・段ボール代の出荷経費や選果場経費などを差し引くと、手許に殆ど残らないどころか赤字になることもあり得る。そうなると産地は出荷をあきらめる。
卸売会社は、産地から入荷した農産物を全て売り捌く義務を負う。市場で買い手がつきにくい農産物は、産地に出荷停止を要請することも考えられる。
農家が「霜害リンゴは出荷できない」と言ったのは、上記のような理由が関わっていると思っている。
海外のスーパーでは、見た目が良くなかったりする農産物が並んでいたりする光景をみかけるし、消費者も気にせずに買っている。
日本では、「もったいない」とは思っても、それが「消費行動」に結びつくとは限らない。
ミニサイズのみかんも、「霜害リンゴ」に似たような憂き目にあっているのかもしれないと思って、知人の元JA役員に聞いてみた。
地元JAでは生産量の多い早生みかんなどのミニサイズは流通ルートを確保していると。ただ生産量の少ない「ゆら早生みかん」のミニサイズは親戚・知人に好評で、皆が待ってくれているので、そちらで殆ど消費されてしまうとのことだった。自分も待っている一人だった。
・・・生産者・JAの思いは・・・
農家は作った農産物を適正価格で全量売り切りたい。そのために、施肥防除・摘果など市場ニーズに合うように栽培努力する。でも気候はコントロールできない。「もったいない」農産物ができれば、その心中は「もったいない」どころではない。生活に響く。
JAも農家の農業所得を増やすために、全国の卸売市場を駆け回り、市場でニーズを聞きながら地域農産物を懸命に売り込んでいる。
でも、大量消費の市場流通ルートでは、「もったいない農産物」は相手にされにくい。
加工に回すか、自己責任の直売所で売るしかない。
(思うがままの勝手な話に、最後までお付き合い頂きましてありがとうございました)