都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「新日本フィルハーモニー交響楽団 2011/2012シーズン記者発表会」
新日本フィルハーモニー交響楽団2011/2012シーズン記者発表会に参加してきました。
通常、記者発表はプレス関係者のみが対象となりますが、同オーケストラでは事前にブロガーなどを公募し、一般もモニターとして参加することが出来ます。今回、そちらに申込み、この日の発表会にお邪魔させていただました。
会場のすみだトリフォニーホール・大ホール。
なお発表会に先立ち、ブリュッヘンによる進行中のベートーヴェンプロジェクトの公開リハーサルも拝見しましたが、そちらは別途記事にするとして、本エントリでは記者発表の部分をまとめてみます。 (敬省略)
記者発表会登壇者
新日本フィルハーモニー交響楽団
事業部長:安江正也
ソロコンサートマスター:崔文殊
指揮者:フランス・ブリュッヘン(通訳:久野理恵子)
音楽監督:クリスティアン・アルミンク(通訳:藤原順子)
専務理事:横山邦雄
すみだトリフォニーホール
常務理事:織田雄二郎
ゼネラルプロデューサー:西田透
記者会見ステージ。右から上記の登壇者の順に並びました。
冒頭、音楽監督のクリスティアン・アルミンクによる挨拶があった後、事業部長の安江正也より同プロジェクト実現についての簡単な説明がありました。
新日本フィルハーモニー交響楽団事業部長:安江正也
ブリュッヘンとは2年前にハイドンのプロジェクトでオーケストラとの共演があった。その時もブリュッヘンから申し出があって企画されたわけだが、今回のベートーヴェンもブリュッヘンから直接オーケストラに話があって実現した。事務方としては直接ブリュッヘンからオケに話がいったと聞いて驚いたが、逆に両者がそこまで親密な関係にあったのかと思うと嬉しかった。
引き続き音楽監督のフランス・ブリュッヘンが今回のプロジェクトについてコメントしました。
音楽について語るフランス・ブリュッヘン。
新日本フィルハーモニー交響楽団指揮者:フランス・ブリュッヘン
今回のプロジェクトではベートーヴェンの交響曲を1日目に1、2、3番、2日目に4と5番、3日目に6と7番、4日目に8と9番のように番号順に演奏する。その一方でリハーサルは9番から始めて1番にさかのぼる形をとる。つまり演奏会直前に1番のリハーサルを行い、その後すぐに本番で同じ曲を演奏するわけだ。このチクルスの有り様は自分がハイドンをやっていた時に思いついた。
ベートーヴェンはハイドンの後継者である。実際にベートーヴェンはハイドンにレッスンを受けていた記録もあり、彼がハイドンを尊敬していたのは間違いないだろう。
興味深いのはベートーヴェンが第1番を書いたのは30歳になってからということだ。それは何故かと言うとハイドンが恐かったからに他ならない。つまりハイドンは交響曲の父と呼ばれていて、ベートーヴェンはその後に連なる音楽を書くことに躊躇した。これはブラームスの第1番の完成に時間がかかったことにも共通する。ベートーヴェンの音楽の存在を畏怖していたブラームスはかなり時間をおいてから交響曲の制作に着手した。
ベートーヴェンが第1番を書いたのは1800年、9番に辿り着いたのは1824年である。彼の交響曲には興味深いパターンがある。第1番はハイドンの音楽を発展させた大きな一歩であり2番はやや後退、3番でまた飛躍し4番は後退、そして5番でさらに発展し6で後ろ向きに、7は前進、8は後退、最後の9番で偉大な前進を遂げるという構図だ。
ハイドンとベートーヴェンには共通点がある。それは音楽を作曲する上で音楽以外の部分からインスピレーションを得ているということだ。ベートーヴェンにはシェイクスピアやラテン語の蔵書があった。そして決して彼自身が語ったわけではないものの、各交響曲にはそれぞれ音楽の背景の本質的な何かが隠されている。
1番と2番はハイドンの要素、3番はナポレオン的ヒロイズム、5番は高らかな自由への希望、6番は自然への共感、7番は戦いのシンフォニーでナポレオンの戦争で犠牲となった多くの農民への哀悼の念もこめられている。そして8番は1楽章のゲーテの引用や2楽章のメトロノームなど様々な要素が見られ、9番はまさにシラーを通しての人類讃歌が述べられている。但し4番は不明だ。(笑)
続いて安江氏より今回のプロジェクトはオーケストラ単独ではなくホールと共同の企画であることが紹介され、ホール側とオケ側の双方の事務方からそれぞれプロジェクトに関してのコメントがありました。
すみだトリフォニーホール常務理事:織田雄二郎
本ホールは開館時から新日本フィルとフランチャイズ契約を結んでいる。その特性を活かし、より高い芸術性を追及するプロジェクトであればと考えている。今回も4日の本公演とそのリハーサルの日程も全て確保した。そういう姿勢も見ていただきたい。
新日本フィルハーモニー交響楽団専務理事:横山邦雄
来年は新日フィルがホールとフランチャイズ契約を結んでから15周年を迎える。しかもホール界隈ではスカイツリーが完成するなど華やいだ一年になることも予想される。
本公演とリハーサルを同じ施設で行うことはオーケストラにとって重要である。今回のようなプロジェクトもホールとの信頼関係がないとなかなか実現しない。今でこそホールとオーケストラがフランチャイズの関係にあることは珍しくないかもしれないが、我々はその先取りをいっていると自負している。
ホール内にディスプレイされた舟越桂の「冬のソナタ」。
ここで一端、このプロジェクトに関する質疑応答が行われ、一部ベートーヴェンの音楽に関する細かな議論がなされました。
質疑応答
Q ブリュッヘンに聞きたい。今日のリハーサルでは9番よりも8番の方が小さな編成だったようだが、曲毎に規模を変えることについてはどのような考えに基づいているのか。例えば当時の記録によればベートーヴェンの交響曲のうち、9番を除けば4番が最小の編成、そして8番が最大だとされている。
A(ブリュッヘン) ベートーヴェンの初演時の情報は残っていて、オーケストラの編成についても理解しているが、その上下は当時の演奏の際の予算やホールの特性で変わった面が大きい。
8番までの編成を平均すると、例えばバイオリンがそれぞれ10と10、チェロ4、コントラバス8名などということがわかっている。
そして何故コントラバスが8名もいたのかというと、しっかりした低音を出すことが重要なのと、当時のオーケストラがアマチュア主体でありまた楽器も未成熟だったため、大きな音を出すには物理的にたくさんの奏者がいなくてはならないからだった。もちろんオーケストラの要はティンパニとコントラバスであるのは言うまでもない。
Q 崔に聞きたい。ブリュッヘンとの共演を通して様々な知見を受けたと思うが、それは具体的には何か。またそれを新日本フィルだけでなく、国内の他のオーケストラとも共有出来ないだろうか。
A(崔) 最初にブリュッヘンと共演したのはシューマンの2番。それはもう生涯忘れられない刺激的な演奏だった。 元々ブリュッヘンなファンで、彼のリコーダーの演奏も何度も聞いたが、今回改めて共演出来ることの喜びを味わうとともに、その音楽性を一層吸収したいと思っている。
具体的にはフレージングやアーティキュレーションの問題、そしてベートーヴェンの音楽では何かと問題になる速度表記に対して、ブリュッヘンの回答は常に明確だった。
ブリュッヘンと共演すると何回弾いた曲でも常に新しいものが得られる。また他のオーケストラとの関係についてだが、自分は大阪でも活動しているのでそこでメンバーに色々経験を話したりしている。もっと具体的な交流となると難しいかもしれないが…。
ここでブリュッヘンから彼は最高の演奏家だと拍手を求める発言があり、また逆に崔よってブリュッヘンに次のプロジェクトを促す場面がありました。そこでブリュッヘンは「ベートーヴェンプロジェクトは前回のハイドンの時に思い付いたが、今次を考えるには年を取りすぎている。」とした上で、「シューベルトは好き。」というの旨の発言で会場をわかせました。
そして引き続き最近の新日本フィルの音の変化などについての質問がありました。
質疑応答
Q ブリュッヘンのハイドンプロジェクトで新日本フィルの音が変わったという印象を受けている。それはアルミンクが築いた基礎の上にブリュッヘンが何かを入れたということなのか。 今回2年ぶりの共演だが、その間に双方で変わったことがあるかを聞きたい。
A(ブリュッヘン) 新日本フィルは素晴らしいオーケストラで記憶力がいい。2年という時は流れたが、その間はアルミンクがいたので何ら心配はしていない。今回も期待している。いつも共演は嬉しい。
A(崔) 次はシューベルトも良いね。(笑) さて共演に関しては、回を重ねることで自分たちの音の引き出しが増えている印象がある。よい部分は変わらないようにし、常に例え0.5ミリでも更なる前進を心掛けたい。
さてここでリハーサルから休憩を挟んで出演し続けたブリュッヘンは退席しました。なおベートーヴェンプロジェクトのスケジュールは以下の通りです。
フランス・ブリュッヘン・プロデュース「ベートーヴェン・プロジェクト」
第1回 2月8日(火) 交響曲第1番・第2番・第3番
第2回 2月11日(金) 交響曲第4番・第5番
第3回 2月16日(水) 交響曲第6番・第7番
第4回 2月19日(土) 交響曲第8番・第9番
また現在、ブリュッヘンとオーケストラによるリハーサルが進行中ですが、その様子は同団のツイッターアカウントなどでも広報されています。あわせてご覧ください。
@newjapanphil
続いてアルミンクが次の2011/2012シーズンについての意気込みを語りました。
次シーズンについて語るアルミンク。
新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督:クリスティアン・アルミンク
来シーズンの主役はオーケストラ。新日本フィルのメモリアルイヤーでもあるので、オーケストラにスポットを当てたい。
客演指揮者はお馴染みの顔ぶれでハーディングも数回来日する予定だ。
また前日初めて共演したメッツマッハーの他、ジャン=クリストフ・スピノジも再演する。そして初登場は北欧のトーマス・ダウスゴー。彼は私が招きたいと思っていた指揮者の一人だ。
そして公演のハイライトとしていくつかのプログラムについて、同じくアルミンクより簡単なコメントがありました。
新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督:クリスティアン・アルミンク
これまでマーラーの10曲の交響曲を取り上げてきたので、それと対になる形でのブルックナーを演奏したい。
2年前もシュミットを演奏、さらには録音を行ったが、今回は交響曲第2番を取り上げる。
マーラーの「嘆きの歌」を演奏する。この曲は彼が20歳の頃に書いた作品だが、後の交響曲のエッセンスが全てつまっている。あまり上演頻度が高くないのはともかく演奏が難しいから。オケも合唱も大編成でかつバンダも必要。それにソプラノやアルト以外にも、ボーイアルトなどの少年の歌い手が必要。しっかり取り組むつもりだ。
メッツマッハーの振る10月のサントリー公演は大変興味深い。知的なプログラムで政治的な色合いの濃い作品を並べたのはいかにも彼らしいではないか。レオノーレでは自由解放を、アイヴズの「ニューイングランドの三つの場所」ではアメリカにとっての理想などを読み取り、最後に言うまでもなく政治的な作品であるショスタコーヴィチの第5番を取り上げている。
ティエリー・エスケシュの「ヴァイオリン協奏曲」を日本初演する。彼はフランス屈指のオルガニストとして知られているが、作曲家としての知名度は低い。この曲も極めて難しいが、オーケストラに色を与えることが出来る。
ここで共演予定のメッツマッハーのコメントが映像で紹介された後、最後の質疑応答が簡単に行われました。
ビデオ出演するインゴ・メッツマッハー。
そこで印象深かったのはハーディングがメッツマッハーと長い関係を築きたいと願っていることや、事務局として経営環境が厳しい中、アルミンクにもそうした状況を説明してこうしたプログラムを考えていることなどでした。
以上です。全110分程度という長丁場でしたが、半分司会をつとめながらも質問に丁寧にこたえるアルミンクはもちろん、時に熱い口調で語るブリュッヘンの真摯な音楽に対する姿勢などがとても印象的でした。
なおこの発表会の詳細な内容については既に同オーケストラのWEBサイトでも公開されています。
記者発表会リポート(1):Beethoven Project
記者発表会リポート(2):2011-2012シーズン定期演奏会
また新シリーズのプログラムについてもPDFにて告知されています。
2011/2012シーズン詳細決定!
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えて下さった新日本フィルハーモニー交響楽団の方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。
通常、記者発表はプレス関係者のみが対象となりますが、同オーケストラでは事前にブロガーなどを公募し、一般もモニターとして参加することが出来ます。今回、そちらに申込み、この日の発表会にお邪魔させていただました。
会場のすみだトリフォニーホール・大ホール。
なお発表会に先立ち、ブリュッヘンによる進行中のベートーヴェンプロジェクトの公開リハーサルも拝見しましたが、そちらは別途記事にするとして、本エントリでは記者発表の部分をまとめてみます。 (敬省略)
記者発表会登壇者
新日本フィルハーモニー交響楽団
事業部長:安江正也
ソロコンサートマスター:崔文殊
指揮者:フランス・ブリュッヘン(通訳:久野理恵子)
音楽監督:クリスティアン・アルミンク(通訳:藤原順子)
専務理事:横山邦雄
すみだトリフォニーホール
常務理事:織田雄二郎
ゼネラルプロデューサー:西田透
記者会見ステージ。右から上記の登壇者の順に並びました。
冒頭、音楽監督のクリスティアン・アルミンクによる挨拶があった後、事業部長の安江正也より同プロジェクト実現についての簡単な説明がありました。
新日本フィルハーモニー交響楽団事業部長:安江正也
ブリュッヘンとは2年前にハイドンのプロジェクトでオーケストラとの共演があった。その時もブリュッヘンから申し出があって企画されたわけだが、今回のベートーヴェンもブリュッヘンから直接オーケストラに話があって実現した。事務方としては直接ブリュッヘンからオケに話がいったと聞いて驚いたが、逆に両者がそこまで親密な関係にあったのかと思うと嬉しかった。
引き続き音楽監督のフランス・ブリュッヘンが今回のプロジェクトについてコメントしました。
音楽について語るフランス・ブリュッヘン。
新日本フィルハーモニー交響楽団指揮者:フランス・ブリュッヘン
今回のプロジェクトではベートーヴェンの交響曲を1日目に1、2、3番、2日目に4と5番、3日目に6と7番、4日目に8と9番のように番号順に演奏する。その一方でリハーサルは9番から始めて1番にさかのぼる形をとる。つまり演奏会直前に1番のリハーサルを行い、その後すぐに本番で同じ曲を演奏するわけだ。このチクルスの有り様は自分がハイドンをやっていた時に思いついた。
ベートーヴェンはハイドンの後継者である。実際にベートーヴェンはハイドンにレッスンを受けていた記録もあり、彼がハイドンを尊敬していたのは間違いないだろう。
興味深いのはベートーヴェンが第1番を書いたのは30歳になってからということだ。それは何故かと言うとハイドンが恐かったからに他ならない。つまりハイドンは交響曲の父と呼ばれていて、ベートーヴェンはその後に連なる音楽を書くことに躊躇した。これはブラームスの第1番の完成に時間がかかったことにも共通する。ベートーヴェンの音楽の存在を畏怖していたブラームスはかなり時間をおいてから交響曲の制作に着手した。
ベートーヴェンが第1番を書いたのは1800年、9番に辿り着いたのは1824年である。彼の交響曲には興味深いパターンがある。第1番はハイドンの音楽を発展させた大きな一歩であり2番はやや後退、3番でまた飛躍し4番は後退、そして5番でさらに発展し6で後ろ向きに、7は前進、8は後退、最後の9番で偉大な前進を遂げるという構図だ。
ハイドンとベートーヴェンには共通点がある。それは音楽を作曲する上で音楽以外の部分からインスピレーションを得ているということだ。ベートーヴェンにはシェイクスピアやラテン語の蔵書があった。そして決して彼自身が語ったわけではないものの、各交響曲にはそれぞれ音楽の背景の本質的な何かが隠されている。
1番と2番はハイドンの要素、3番はナポレオン的ヒロイズム、5番は高らかな自由への希望、6番は自然への共感、7番は戦いのシンフォニーでナポレオンの戦争で犠牲となった多くの農民への哀悼の念もこめられている。そして8番は1楽章のゲーテの引用や2楽章のメトロノームなど様々な要素が見られ、9番はまさにシラーを通しての人類讃歌が述べられている。但し4番は不明だ。(笑)
続いて安江氏より今回のプロジェクトはオーケストラ単独ではなくホールと共同の企画であることが紹介され、ホール側とオケ側の双方の事務方からそれぞれプロジェクトに関してのコメントがありました。
すみだトリフォニーホール常務理事:織田雄二郎
本ホールは開館時から新日本フィルとフランチャイズ契約を結んでいる。その特性を活かし、より高い芸術性を追及するプロジェクトであればと考えている。今回も4日の本公演とそのリハーサルの日程も全て確保した。そういう姿勢も見ていただきたい。
新日本フィルハーモニー交響楽団専務理事:横山邦雄
来年は新日フィルがホールとフランチャイズ契約を結んでから15周年を迎える。しかもホール界隈ではスカイツリーが完成するなど華やいだ一年になることも予想される。
本公演とリハーサルを同じ施設で行うことはオーケストラにとって重要である。今回のようなプロジェクトもホールとの信頼関係がないとなかなか実現しない。今でこそホールとオーケストラがフランチャイズの関係にあることは珍しくないかもしれないが、我々はその先取りをいっていると自負している。
ホール内にディスプレイされた舟越桂の「冬のソナタ」。
ここで一端、このプロジェクトに関する質疑応答が行われ、一部ベートーヴェンの音楽に関する細かな議論がなされました。
質疑応答
Q ブリュッヘンに聞きたい。今日のリハーサルでは9番よりも8番の方が小さな編成だったようだが、曲毎に規模を変えることについてはどのような考えに基づいているのか。例えば当時の記録によればベートーヴェンの交響曲のうち、9番を除けば4番が最小の編成、そして8番が最大だとされている。
A(ブリュッヘン) ベートーヴェンの初演時の情報は残っていて、オーケストラの編成についても理解しているが、その上下は当時の演奏の際の予算やホールの特性で変わった面が大きい。
8番までの編成を平均すると、例えばバイオリンがそれぞれ10と10、チェロ4、コントラバス8名などということがわかっている。
そして何故コントラバスが8名もいたのかというと、しっかりした低音を出すことが重要なのと、当時のオーケストラがアマチュア主体でありまた楽器も未成熟だったため、大きな音を出すには物理的にたくさんの奏者がいなくてはならないからだった。もちろんオーケストラの要はティンパニとコントラバスであるのは言うまでもない。
Q 崔に聞きたい。ブリュッヘンとの共演を通して様々な知見を受けたと思うが、それは具体的には何か。またそれを新日本フィルだけでなく、国内の他のオーケストラとも共有出来ないだろうか。
A(崔) 最初にブリュッヘンと共演したのはシューマンの2番。それはもう生涯忘れられない刺激的な演奏だった。 元々ブリュッヘンなファンで、彼のリコーダーの演奏も何度も聞いたが、今回改めて共演出来ることの喜びを味わうとともに、その音楽性を一層吸収したいと思っている。
具体的にはフレージングやアーティキュレーションの問題、そしてベートーヴェンの音楽では何かと問題になる速度表記に対して、ブリュッヘンの回答は常に明確だった。
ブリュッヘンと共演すると何回弾いた曲でも常に新しいものが得られる。また他のオーケストラとの関係についてだが、自分は大阪でも活動しているのでそこでメンバーに色々経験を話したりしている。もっと具体的な交流となると難しいかもしれないが…。
ここでブリュッヘンから彼は最高の演奏家だと拍手を求める発言があり、また逆に崔よってブリュッヘンに次のプロジェクトを促す場面がありました。そこでブリュッヘンは「ベートーヴェンプロジェクトは前回のハイドンの時に思い付いたが、今次を考えるには年を取りすぎている。」とした上で、「シューベルトは好き。」というの旨の発言で会場をわかせました。
そして引き続き最近の新日本フィルの音の変化などについての質問がありました。
質疑応答
Q ブリュッヘンのハイドンプロジェクトで新日本フィルの音が変わったという印象を受けている。それはアルミンクが築いた基礎の上にブリュッヘンが何かを入れたということなのか。 今回2年ぶりの共演だが、その間に双方で変わったことがあるかを聞きたい。
A(ブリュッヘン) 新日本フィルは素晴らしいオーケストラで記憶力がいい。2年という時は流れたが、その間はアルミンクがいたので何ら心配はしていない。今回も期待している。いつも共演は嬉しい。
A(崔) 次はシューベルトも良いね。(笑) さて共演に関しては、回を重ねることで自分たちの音の引き出しが増えている印象がある。よい部分は変わらないようにし、常に例え0.5ミリでも更なる前進を心掛けたい。
さてここでリハーサルから休憩を挟んで出演し続けたブリュッヘンは退席しました。なおベートーヴェンプロジェクトのスケジュールは以下の通りです。
フランス・ブリュッヘン・プロデュース「ベートーヴェン・プロジェクト」
第1回 2月8日(火) 交響曲第1番・第2番・第3番
第2回 2月11日(金) 交響曲第4番・第5番
第3回 2月16日(水) 交響曲第6番・第7番
第4回 2月19日(土) 交響曲第8番・第9番
また現在、ブリュッヘンとオーケストラによるリハーサルが進行中ですが、その様子は同団のツイッターアカウントなどでも広報されています。あわせてご覧ください。
@newjapanphil
続いてアルミンクが次の2011/2012シーズンについての意気込みを語りました。
次シーズンについて語るアルミンク。
新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督:クリスティアン・アルミンク
来シーズンの主役はオーケストラ。新日本フィルのメモリアルイヤーでもあるので、オーケストラにスポットを当てたい。
客演指揮者はお馴染みの顔ぶれでハーディングも数回来日する予定だ。
また前日初めて共演したメッツマッハーの他、ジャン=クリストフ・スピノジも再演する。そして初登場は北欧のトーマス・ダウスゴー。彼は私が招きたいと思っていた指揮者の一人だ。
そして公演のハイライトとしていくつかのプログラムについて、同じくアルミンクより簡単なコメントがありました。
新日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督:クリスティアン・アルミンク
これまでマーラーの10曲の交響曲を取り上げてきたので、それと対になる形でのブルックナーを演奏したい。
2年前もシュミットを演奏、さらには録音を行ったが、今回は交響曲第2番を取り上げる。
マーラーの「嘆きの歌」を演奏する。この曲は彼が20歳の頃に書いた作品だが、後の交響曲のエッセンスが全てつまっている。あまり上演頻度が高くないのはともかく演奏が難しいから。オケも合唱も大編成でかつバンダも必要。それにソプラノやアルト以外にも、ボーイアルトなどの少年の歌い手が必要。しっかり取り組むつもりだ。
メッツマッハーの振る10月のサントリー公演は大変興味深い。知的なプログラムで政治的な色合いの濃い作品を並べたのはいかにも彼らしいではないか。レオノーレでは自由解放を、アイヴズの「ニューイングランドの三つの場所」ではアメリカにとっての理想などを読み取り、最後に言うまでもなく政治的な作品であるショスタコーヴィチの第5番を取り上げている。
ティエリー・エスケシュの「ヴァイオリン協奏曲」を日本初演する。彼はフランス屈指のオルガニストとして知られているが、作曲家としての知名度は低い。この曲も極めて難しいが、オーケストラに色を与えることが出来る。
ここで共演予定のメッツマッハーのコメントが映像で紹介された後、最後の質疑応答が簡単に行われました。
ビデオ出演するインゴ・メッツマッハー。
そこで印象深かったのはハーディングがメッツマッハーと長い関係を築きたいと願っていることや、事務局として経営環境が厳しい中、アルミンクにもそうした状況を説明してこうしたプログラムを考えていることなどでした。
以上です。全110分程度という長丁場でしたが、半分司会をつとめながらも質問に丁寧にこたえるアルミンクはもちろん、時に熱い口調で語るブリュッヘンの真摯な音楽に対する姿勢などがとても印象的でした。
なおこの発表会の詳細な内容については既に同オーケストラのWEBサイトでも公開されています。
記者発表会リポート(1):Beethoven Project
記者発表会リポート(2):2011-2012シーズン定期演奏会
また新シリーズのプログラムについてもPDFにて告知されています。
2011/2012シーズン詳細決定!
最後になりましたが、このような貴重な機会を与えて下さった新日本フィルハーモニー交響楽団の方々に感謝申し上げます。ありがとうございました。
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「江~姫たちの戦国」 江戸東京博物館
江戸東京博物館(墨田区横網1-4-1)
「2011年NHK大河ドラマ特別展 江~姫たちの戦国」
1/2-2/20
「戦国のスーパーセレブ」とも呼ばれる今年の大河ドラマの主人公、江(ごう)の軌跡を辿ります。江戸東京博物館で開催中の「江~姫たちの戦国」へ行って来ました。
戦国の世、浅井三姉妹の三女に生まれた江は、2度の落城と3度の結婚を経験するという、まさに波瀾万丈の人生を送りましたが、この展覧会ではその軌跡を同時代の資料や美術品などで丹念に追いかけています。
展覧会の構成は以下の通りです。(出品リスト)
第一章 江の父母と伯父
第二章 江の姉・茶々が嫁いだ豊臣家
第三章 江の姉・初と京極家
第四章 江が嫁いだ徳川家
江は最期、徳川家光の母として人生を終えますが、彼女の一家は織田、豊臣らとも密接に関わったこともあり、戦国にまつわる幅広い文物も紹介されていました。密かに告白すると私は大河ドラマを見ていませんが、一歴史展としても楽しめる内容ではないでしょうか。屏風、蒔絵、刀と見所は少なくありませんでした。
冒頭「プロローグ」に登場するのが、江と家族の生涯を図解で説明したパネル展示です。いつもならこうしたパネルを素通りしてしまうことが多いのですが、母の市や姉の茶々らといったお馴染みのヒロインたちの系譜を見ると、改めてその数奇な運命に戦国の激動の世を思わざるをえません。
大阪の陣では姉の茶々は豊臣方に、そして江は徳川方にあり、もう一人の姉の初は双方の和睦を目指して奔走した京極家に嫁いでいました。バラバラになった三姉妹のそれぞれの思いを想像するだけでもぐっと来るものがありました。
「賤ケ岳合戦図屏風(右隻)」 江戸時代中期 馬の博物館蔵
私としてハイライトに挙げたいのは華麗な屏風です。江の母の市が嫁いだ柴田勝家と豊臣秀吉の戦った「賤ヶ岳合戦図屏風」や、江の五女和子が入内する様などを描いた「東福門院入内図屏風」などは見応え十分です。また後陽成天皇が聚楽第を訪ねた様子を表した「聚楽第行幸図屏風」も一際目立っていました。
聚楽第関連としてもう一つ挙げたいのは、その姿を写した「豊公築所聚楽城之図」です。そもそも聚楽第は僅か8年で失われたこともあり、全貌がよくわかっていませんが、ここでは図解されたその姿を伺い知ることが出来ます。
また図と言えば狩野晴川院の「江戸城本丸等障壁画絵下絵」も忘れられません。こちらも失われた江戸城本丸の障壁画など整地な描写で写し取っています。絵画好きには嬉しい作品でした。
「崇源院宮殿」 1628年 東京・ 祐天寺
最後にはあっと驚く展示が待ち構えています。近年改めて存在の確認された江の霊廟、「崇源院宮殿」の美しさには見とれてしまいました。ここは暗がりに浮かぶ飛天や蓮華などの細かな意匠をじっくり味わいたいところです。
「桐鳳凰文蒔絵唐櫃」 桃山時代 京都・豊国神社
単なるテレビのタイアップ展と片付けてしまうのには勿体無いのではないでしょうか。京都や滋賀、それに福井などの各寺院、また京博、徳川美術館など、よくぞここまで集めたと思うほど関連の作品が展示されていました。
私のように殆ど江の知識がなくても強力な助っ人がいるので大丈夫です。鈴木保奈美さんによる音声ガイドは展示に対する理解を深めるのに申し分のない内容でした。
画・山口晃
ショップにも嬉しいサプライズです。かの山口晃によるポストカードやクリアファイルがお目見えしています。思わず買い集めてしまったのは私だけではないかもしれません。
さすがに会場は賑わっていました。会期末にかけてはさらに人出が増すかもしれません。
2月20日まで開催されています。
*開館日時:火~日(月休) 9:30~17:30 土曜日は19:30まで(入館は閉館の30分前)
「2011年NHK大河ドラマ特別展 江~姫たちの戦国」
1/2-2/20
「戦国のスーパーセレブ」とも呼ばれる今年の大河ドラマの主人公、江(ごう)の軌跡を辿ります。江戸東京博物館で開催中の「江~姫たちの戦国」へ行って来ました。
戦国の世、浅井三姉妹の三女に生まれた江は、2度の落城と3度の結婚を経験するという、まさに波瀾万丈の人生を送りましたが、この展覧会ではその軌跡を同時代の資料や美術品などで丹念に追いかけています。
展覧会の構成は以下の通りです。(出品リスト)
第一章 江の父母と伯父
第二章 江の姉・茶々が嫁いだ豊臣家
第三章 江の姉・初と京極家
第四章 江が嫁いだ徳川家
江は最期、徳川家光の母として人生を終えますが、彼女の一家は織田、豊臣らとも密接に関わったこともあり、戦国にまつわる幅広い文物も紹介されていました。密かに告白すると私は大河ドラマを見ていませんが、一歴史展としても楽しめる内容ではないでしょうか。屏風、蒔絵、刀と見所は少なくありませんでした。
冒頭「プロローグ」に登場するのが、江と家族の生涯を図解で説明したパネル展示です。いつもならこうしたパネルを素通りしてしまうことが多いのですが、母の市や姉の茶々らといったお馴染みのヒロインたちの系譜を見ると、改めてその数奇な運命に戦国の激動の世を思わざるをえません。
大阪の陣では姉の茶々は豊臣方に、そして江は徳川方にあり、もう一人の姉の初は双方の和睦を目指して奔走した京極家に嫁いでいました。バラバラになった三姉妹のそれぞれの思いを想像するだけでもぐっと来るものがありました。
「賤ケ岳合戦図屏風(右隻)」 江戸時代中期 馬の博物館蔵
私としてハイライトに挙げたいのは華麗な屏風です。江の母の市が嫁いだ柴田勝家と豊臣秀吉の戦った「賤ヶ岳合戦図屏風」や、江の五女和子が入内する様などを描いた「東福門院入内図屏風」などは見応え十分です。また後陽成天皇が聚楽第を訪ねた様子を表した「聚楽第行幸図屏風」も一際目立っていました。
聚楽第関連としてもう一つ挙げたいのは、その姿を写した「豊公築所聚楽城之図」です。そもそも聚楽第は僅か8年で失われたこともあり、全貌がよくわかっていませんが、ここでは図解されたその姿を伺い知ることが出来ます。
また図と言えば狩野晴川院の「江戸城本丸等障壁画絵下絵」も忘れられません。こちらも失われた江戸城本丸の障壁画など整地な描写で写し取っています。絵画好きには嬉しい作品でした。
「崇源院宮殿」 1628年 東京・ 祐天寺
最後にはあっと驚く展示が待ち構えています。近年改めて存在の確認された江の霊廟、「崇源院宮殿」の美しさには見とれてしまいました。ここは暗がりに浮かぶ飛天や蓮華などの細かな意匠をじっくり味わいたいところです。
「桐鳳凰文蒔絵唐櫃」 桃山時代 京都・豊国神社
単なるテレビのタイアップ展と片付けてしまうのには勿体無いのではないでしょうか。京都や滋賀、それに福井などの各寺院、また京博、徳川美術館など、よくぞここまで集めたと思うほど関連の作品が展示されていました。
私のように殆ど江の知識がなくても強力な助っ人がいるので大丈夫です。鈴木保奈美さんによる音声ガイドは展示に対する理解を深めるのに申し分のない内容でした。
画・山口晃
ショップにも嬉しいサプライズです。かの山口晃によるポストカードやクリアファイルがお目見えしています。思わず買い集めてしまったのは私だけではないかもしれません。
さすがに会場は賑わっていました。会期末にかけてはさらに人出が増すかもしれません。
2月20日まで開催されています。
*開館日時:火~日(月休) 9:30~17:30 土曜日は19:30まで(入館は閉館の30分前)
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2月の展覧会・ギャラリーetc
月初め恒例の私的スケジュール帳です。今月中に見たい展示などをリストアップしてみました。
展覧会
「イメージの手ざわり展」 横浜市民ギャラリーあざみ野(~2/20)
「G tokyo2011」 森アーツセンターギャラリー(2/19~2/27)
「アートサイト府中2010」 府中市美術館(~3/6)
「国立マイセン磁器美術館所蔵 マイセン磁器の300年」 サントリー美術館(~3/6)
「中国青銅鏡」 泉屋博古館分館(~3/6)
「高嶺格:とおくてよくみえない」 横浜美術館(~3/20)
「New Vision Saitama 4」 埼玉県立近代美術館(~3/21)
#ミニライブ:「スティールパン・アコースティック」 町田良夫 2/19 16:00~ 無料
「酒井抱一生誕250年 琳派芸術(第2部)」 出光美術館(2/11~3/21)
「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美」 そごう美術館(2/24~3/21)
「曽根裕展 Perfect Moment」 東京オペラシティアートギャラリー(~3/27)
「松伯美術館コレクション 上村松園 素描、下絵と本画」 川村記念美術館(2/15~3/27)
「発信/板橋/2011」 板橋区立美術館(2/26~3/27)
「鹿島茂コレクション1 グランヴィル - 19世紀フランス幻想版画展」 練馬区立美術館(2/23~4/3)
「第30回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」 損保ジャパン東郷青児美術館(2/26~4/3)
「ボストン美術館 浮世絵名品展」 山種美術館(2/26~4/17)
#講演会:「浮世絵の黄金時代」 セーラ・E・トンプソン 2/27 14:00~ 要申込、無料
「MOTアニュアル2011/田窪恭治展」 東京都現代美術館(2/26~5/8)
「シュルレアリスム展 - パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による」 国立新美術館(2/9~5/9)
ギャラリー
「酒井龍一展」 ニュートロン東京(~2/20)
「松井亜希子 - 冬の水 うつろう光影」 INAXギャラリー(~2/24)
「朝海陽子展」 無人島プロダクション(~2/26)
「山本竜基展」 MIZUMA ART GALLERY(~2/26)
「第5回shiseido art egg 今村遼佑」 資生堂ギャラリー(~2/27)
「矢津吉隆 - umbra」 TSCA(~3/5)
「田幡浩一 - trace of images」 ギャラリー小柳(~3/12)
コンサート
「NHK交響楽団1694回定期公演」 ベルリオーズ「幻想交響曲」 ミョンフン 2/6
さて今年の大型展のトップバッターとも言うべき展覧会が国立新美術館で始まります。それがポンピドゥーセンターのシュルレアリスム芸術を全170点のスケールで一挙公開する「シュルレアリスム展 - パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による」展です。
「シュルレアリスム展 - パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による」 国立新美術館 2/9~5/9
前史のダダ期、1920年後から、次世代の作家、1970年前までのシュルレアリスムの道程を、おそらく国内ではかつて規模の質と量で一気に辿ります。これに期待しないわけにはいきません。
2月26日に始まる展覧会がいくつもありますが、その中でまず注目したいのは既に神戸、そして名古屋で話題となった「ボストン美術館 浮世絵名品展」ではないでしょうか。
「ボストン美術館 浮世絵名品展」 山種美術館 2/26~4/17 @ukiyoeten
保存状態良好の作品ばかりとのことで、また色鮮やかな浮世絵を楽しめる里帰り展となるのかもしれません。
ニューマン展の記憶も新しい川村記念美術館が、つい先だっての大回顧展も話題となった上村松園の主に素描と下絵を中心とした展覧会を開催します。
「松伯美術館コレクション 上村松園 素描、下絵と本画」 川村記念美術館 2/15~3/27
今回は松園コレクションで定評のある奈良・松柏美術館の作品が約80点ほど紹介されます。(作品リスト)こちらも早々に伺いたいです。
少し東京から離れますが、水戸で現代美術の関連する興味深い展覧会が二つ開催されます。出来ればミニ遠征といきたいところです。
「耳をすまして - 美術と音楽の交差点」 茨城県立近代美術館 ~3/6
#パフォーマンス:八木良太「氷のレコード VINYL 実演」 2/26 11:00~/14:00~
「クワイエット・アテンションズ 彼女からの出発」 水戸芸術館 2/12~5/8
横浜のあざみ野で「現在進行形のアートを紹介する」(ギャラリーあざみ野ニュースより引用)という新しい企画展がはじまりました。
「イメージの手ざわり展」 横浜市民ギャラリーあざみ野 ~2/20 @artazamino
映像関連の作家の揃う展覧会ということで、19日と26日には上映会も予定されています。私は一足先に出かけるつもりです。
ギャラリー巡りに欠かせないツールとして改めてご紹介したいのが、@poccoboccoさんの運営する「東京アートカレンダー」です。
「東京アートカレンダー」
都内の主要ギャラリーの展示情報がGoogleカレンダーに読み込むことが出来ます。これは便利です。有り難く使わさせていただきます。
それでは今月も宜しくお願いします。
展覧会
「イメージの手ざわり展」 横浜市民ギャラリーあざみ野(~2/20)
「G tokyo2011」 森アーツセンターギャラリー(2/19~2/27)
「アートサイト府中2010」 府中市美術館(~3/6)
「国立マイセン磁器美術館所蔵 マイセン磁器の300年」 サントリー美術館(~3/6)
「中国青銅鏡」 泉屋博古館分館(~3/6)
「高嶺格:とおくてよくみえない」 横浜美術館(~3/20)
「New Vision Saitama 4」 埼玉県立近代美術館(~3/21)
#ミニライブ:「スティールパン・アコースティック」 町田良夫 2/19 16:00~ 無料
「酒井抱一生誕250年 琳派芸術(第2部)」 出光美術館(2/11~3/21)
「福富太郎コレクション 近代日本画にみる女性の美」 そごう美術館(2/24~3/21)
「曽根裕展 Perfect Moment」 東京オペラシティアートギャラリー(~3/27)
「松伯美術館コレクション 上村松園 素描、下絵と本画」 川村記念美術館(2/15~3/27)
「発信/板橋/2011」 板橋区立美術館(2/26~3/27)
「鹿島茂コレクション1 グランヴィル - 19世紀フランス幻想版画展」 練馬区立美術館(2/23~4/3)
「第30回損保ジャパン美術財団 選抜奨励展」 損保ジャパン東郷青児美術館(2/26~4/3)
「ボストン美術館 浮世絵名品展」 山種美術館(2/26~4/17)
#講演会:「浮世絵の黄金時代」 セーラ・E・トンプソン 2/27 14:00~ 要申込、無料
「MOTアニュアル2011/田窪恭治展」 東京都現代美術館(2/26~5/8)
「シュルレアリスム展 - パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による」 国立新美術館(2/9~5/9)
ギャラリー
「酒井龍一展」 ニュートロン東京(~2/20)
「松井亜希子 - 冬の水 うつろう光影」 INAXギャラリー(~2/24)
「朝海陽子展」 無人島プロダクション(~2/26)
「山本竜基展」 MIZUMA ART GALLERY(~2/26)
「第5回shiseido art egg 今村遼佑」 資生堂ギャラリー(~2/27)
「矢津吉隆 - umbra」 TSCA(~3/5)
「田幡浩一 - trace of images」 ギャラリー小柳(~3/12)
コンサート
「NHK交響楽団1694回定期公演」 ベルリオーズ「幻想交響曲」 ミョンフン 2/6
さて今年の大型展のトップバッターとも言うべき展覧会が国立新美術館で始まります。それがポンピドゥーセンターのシュルレアリスム芸術を全170点のスケールで一挙公開する「シュルレアリスム展 - パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による」展です。
「シュルレアリスム展 - パリ、ポンピドゥセンター所蔵作品による」 国立新美術館 2/9~5/9
前史のダダ期、1920年後から、次世代の作家、1970年前までのシュルレアリスムの道程を、おそらく国内ではかつて規模の質と量で一気に辿ります。これに期待しないわけにはいきません。
2月26日に始まる展覧会がいくつもありますが、その中でまず注目したいのは既に神戸、そして名古屋で話題となった「ボストン美術館 浮世絵名品展」ではないでしょうか。
「ボストン美術館 浮世絵名品展」 山種美術館 2/26~4/17 @ukiyoeten
保存状態良好の作品ばかりとのことで、また色鮮やかな浮世絵を楽しめる里帰り展となるのかもしれません。
ニューマン展の記憶も新しい川村記念美術館が、つい先だっての大回顧展も話題となった上村松園の主に素描と下絵を中心とした展覧会を開催します。
「松伯美術館コレクション 上村松園 素描、下絵と本画」 川村記念美術館 2/15~3/27
今回は松園コレクションで定評のある奈良・松柏美術館の作品が約80点ほど紹介されます。(作品リスト)こちらも早々に伺いたいです。
少し東京から離れますが、水戸で現代美術の関連する興味深い展覧会が二つ開催されます。出来ればミニ遠征といきたいところです。
「耳をすまして - 美術と音楽の交差点」 茨城県立近代美術館 ~3/6
#パフォーマンス:八木良太「氷のレコード VINYL 実演」 2/26 11:00~/14:00~
「クワイエット・アテンションズ 彼女からの出発」 水戸芸術館 2/12~5/8
横浜のあざみ野で「現在進行形のアートを紹介する」(ギャラリーあざみ野ニュースより引用)という新しい企画展がはじまりました。
「イメージの手ざわり展」 横浜市民ギャラリーあざみ野 ~2/20 @artazamino
映像関連の作家の揃う展覧会ということで、19日と26日には上映会も予定されています。私は一足先に出かけるつもりです。
ギャラリー巡りに欠かせないツールとして改めてご紹介したいのが、@poccoboccoさんの運営する「東京アートカレンダー」です。
「東京アートカレンダー」
都内の主要ギャラリーの展示情報がGoogleカレンダーに読み込むことが出来ます。これは便利です。有り難く使わさせていただきます。
それでは今月も宜しくお願いします。
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「#005 心ここにあらず 藤原彩人」 3331 Gallery
3331 Gallery(千代田区外神田6丁目11-14)
「#005 心ここにあらず 藤原彩人」
1/8-2/7
3331 Galleryで開催中の藤原彩人展へ行って来ました。
作家、藤原彩人のプロフィールについては同画廊WEBサイトをご覧下さい。
#005 心ここにあらず | 藤原彩人@3331 Gallery
2009年のDOMANIの展示をご記憶の方も多いのではないでしょうか。新美の広大なホワイトキューブのスケール感に相応しい大作のレリーフ群は圧巻でした。
さて今回は3331の一角の小さなスペースでの展示ということで、2メートルほどのレリーフ2点と1メートル弱の人物像数点、また約5センチほどの小さな胸像十数点が並ぶコンパクトな構成となっています。
人物像は等身大よりかなり小ぶりです。すらりとした体躯をはじめ、銀や金のラインも入るピッチリと着たシャツなどの格好はどこかスタイリッシュで、その半開きの口元やぼんやりとした目線は、まさに今時云々として語られるような若者像を描き出していました。
一方での小品の胸像は老若男女を問いません。先の人物像よりもさらにデフォルメしたような姿はどれも飄々としていて、ズラリと横一列に並ぶ様子を見ると例えば電車の中で座る人々などのイメージも浮かび上がってきます。
しかしながらやはり見るべきは、作家が追求し続けている陶芸と彫刻の合わさった質感表現にあるのかもしれません。
胸像はどちらかと言うと陶の質感が強く出ていますが、人物像ではその表面に彫りの痕跡を残したようなざらっとした質感を確認することが出来ます。その曖昧な感触は作品の持ち味と化していました。
DOMANI2009での展示。写真は内覧時に許可を得て撮影しました。
2月7日まで開催されています。
*開廊日時:水~月(火休) 12:00~19:00
「#005 心ここにあらず 藤原彩人」
1/8-2/7
3331 Galleryで開催中の藤原彩人展へ行って来ました。
作家、藤原彩人のプロフィールについては同画廊WEBサイトをご覧下さい。
#005 心ここにあらず | 藤原彩人@3331 Gallery
2009年のDOMANIの展示をご記憶の方も多いのではないでしょうか。新美の広大なホワイトキューブのスケール感に相応しい大作のレリーフ群は圧巻でした。
さて今回は3331の一角の小さなスペースでの展示ということで、2メートルほどのレリーフ2点と1メートル弱の人物像数点、また約5センチほどの小さな胸像十数点が並ぶコンパクトな構成となっています。
人物像は等身大よりかなり小ぶりです。すらりとした体躯をはじめ、銀や金のラインも入るピッチリと着たシャツなどの格好はどこかスタイリッシュで、その半開きの口元やぼんやりとした目線は、まさに今時云々として語られるような若者像を描き出していました。
一方での小品の胸像は老若男女を問いません。先の人物像よりもさらにデフォルメしたような姿はどれも飄々としていて、ズラリと横一列に並ぶ様子を見ると例えば電車の中で座る人々などのイメージも浮かび上がってきます。
しかしながらやはり見るべきは、作家が追求し続けている陶芸と彫刻の合わさった質感表現にあるのかもしれません。
胸像はどちらかと言うと陶の質感が強く出ていますが、人物像ではその表面に彫りの痕跡を残したようなざらっとした質感を確認することが出来ます。その曖昧な感触は作品の持ち味と化していました。
DOMANI2009での展示。写真は内覧時に許可を得て撮影しました。
2月7日まで開催されています。
*開廊日時:水~月(火休) 12:00~19:00
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「複合回路 - 認識の境界 - 第6回 石井友人」 ギャラリーαM
ギャラリーαM(千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤ビルB1F)
「複合回路 - 認識の境界 - 第6回 石井友人」
1/15-2/19
見る側の視覚認識を絵画によって揺さぶります。本年度のαMプロジェクトの最終回、「複合回路 第6回 石井友人」展へ行ってきました。
展示概要、作家プロフィールについては同画廊WEBサイトをご参照下さい。
第六回 石井友人 Tomohito ISHII@ギャラリーαM
2006年には西新宿のWAKO WORKSにて政田武史との二人展も開催されました。
さて毎度巧みなインスタレーションなどで魅せるαMの連続シリーズ展ですが、今回は一転、同ギャラリーでは初となる絵画のみの展示となっています。テーマはずばり複眼です。元々の写真などのイメージを平面におこしながらも、その様相は抽象と具象の間を超え、どこかノイズのかかった一種の複雑な信号の軌跡のような独特の絵画が展開されていました。
あたかもボナールやスーラの絵画を解体して浮かび上がらせた風景などのイメージの反面、さらにそれを茫洋として線と色のみに還元したような作品が言わば共存しています。一つの本来あった像は引き裂かれつつも関係を持ち合うという、パラレルな存在に置き換わりました。
ところで本展で2010年度のαMプロジェクト「複合回路」は終了しますが、次の2011年度の新シリーズが既にアナウンスされています。
αMプロジェクト2011 「成層圏」Stratosphere
下道基行リフォート・アーカイブ(プレイベント) 2011年3月5日(土)~3月19日(土)
椛田ちひろ 2011年4月2日(土)~5月7日(土) (4/29~5/5休)
増山士郎 2011年5月21日(土)~6月25日(土)
下道基行 2011年7月9日(土)~8月13日(土)
松川はり×川北ゆう 2011年9月3日(土)~10日8日(土)
宮永亮 2011年10月22日(土)~11月26日(土)
村山悟郎 2011年12月17日(土)~2012年2月4日(土) (12/25~1/9休)
林加奈子 2012年2月18日(土)~2012年3月25日(土)
*キュレーター/高橋瑞木/鈴木勝雄/田中正之
名称は「成層圏」です。キュレーター3氏をそのままに、全7回(+プレイベント)の展示が予定されています。若手実力派揃いのラインナップです。3月からも目が離せません。
「複合回路 第6回 石井友人」展は、2月19日まで開催されています。
*開廊日時:火~土(日月祝休) 11:00~19:00
「複合回路 - 認識の境界 - 第6回 石井友人」
1/15-2/19
見る側の視覚認識を絵画によって揺さぶります。本年度のαMプロジェクトの最終回、「複合回路 第6回 石井友人」展へ行ってきました。
展示概要、作家プロフィールについては同画廊WEBサイトをご参照下さい。
第六回 石井友人 Tomohito ISHII@ギャラリーαM
2006年には西新宿のWAKO WORKSにて政田武史との二人展も開催されました。
さて毎度巧みなインスタレーションなどで魅せるαMの連続シリーズ展ですが、今回は一転、同ギャラリーでは初となる絵画のみの展示となっています。テーマはずばり複眼です。元々の写真などのイメージを平面におこしながらも、その様相は抽象と具象の間を超え、どこかノイズのかかった一種の複雑な信号の軌跡のような独特の絵画が展開されていました。
あたかもボナールやスーラの絵画を解体して浮かび上がらせた風景などのイメージの反面、さらにそれを茫洋として線と色のみに還元したような作品が言わば共存しています。一つの本来あった像は引き裂かれつつも関係を持ち合うという、パラレルな存在に置き換わりました。
ところで本展で2010年度のαMプロジェクト「複合回路」は終了しますが、次の2011年度の新シリーズが既にアナウンスされています。
αMプロジェクト2011 「成層圏」Stratosphere
下道基行リフォート・アーカイブ(プレイベント) 2011年3月5日(土)~3月19日(土)
椛田ちひろ 2011年4月2日(土)~5月7日(土) (4/29~5/5休)
増山士郎 2011年5月21日(土)~6月25日(土)
下道基行 2011年7月9日(土)~8月13日(土)
松川はり×川北ゆう 2011年9月3日(土)~10日8日(土)
宮永亮 2011年10月22日(土)~11月26日(土)
村山悟郎 2011年12月17日(土)~2012年2月4日(土) (12/25~1/9休)
林加奈子 2012年2月18日(土)~2012年3月25日(土)
*キュレーター/高橋瑞木/鈴木勝雄/田中正之
名称は「成層圏」です。キュレーター3氏をそのままに、全7回(+プレイベント)の展示が予定されています。若手実力派揃いのラインナップです。3月からも目が離せません。
「複合回路 第6回 石井友人」展は、2月19日まで開催されています。
*開廊日時:火~土(日月祝休) 11:00~19:00
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