都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ヘンリー・ムア 生命のかたち」 ブリヂストン美術館
ブリヂストン美術館(中央区京橋1-10-1)
「ヘンリー・ムア 生命のかたち」
7/31-10/17
ブリヂストン美術館で開催中の「ヘンリー・ムア 生命のかたち」へ行ってきました。
ヘンリー・ムアというと、お馴染みの人体をモチーフとした彫刻が有名ですが、この展示ではそれらの立体をはじめ、素描、リトグラフなどもあわせて紹介されています。テーマ展示ということで規模は小さく、例えば彫刻は全6点の出品に留まっていますが、人体彫刻での「母と子」というキーワードやストーンヘンジのリトグラフなど、ムアの関心の拠り所の要点をピックアップして提示していました。
展示の構成は以下の通りです。
第一章 生命のかたち1 横たわる人体
生命のかたち2 母と子
生命のかたち3 座る女のポーズ
生命のかたち4 頭部(ヘルメット・ヘッド)
第二章 ストーンヘンジ 有機的なかたち
ヘンリー・ムア「母と子(ルーベンス風)」(1979年)
前半部ではムアの人体彫刻を素描などと比較して展示し、後半部では彼が「表現の啓示」を受けたというストーンヘンジのリトグラフシリーズを一挙に並べるという構成になっていました。
ヘンリー・ムア「ストーンヘンジ1 バランスのとれたまぐさ石」(1973年)
今回、ともかくも私が感銘したのは彫刻よりも後半部、つまりは二章のストーンヘンジを描いた版画のシリーズでした。ムアは23歳の時にストーンヘンジを訪れ、その姿に心を奪われたそうですが、それから過ぎること数十年、何と70歳を過ぎてからこの連作に取り組み始めます。
様々な形態をとって折重なる巨石群は、月明かりを吸収して仄かに灯り、実に静謐で神秘的な世界を展開していました。この連作群は全部で20点弱ほどあり、一つの展示室を取り囲むようにして並んでいますが、その中に立つと不思議なエネルギーの渦のようなものを感じるかもしれません。この箇所だけでも本展へ行く価値は十分にありました。
ヘンリー・ムア「プロメテウスの頭部」(1950年頃)
一方、前半部では、ムアが生涯に渡って追求した人体の形態を分析しています。もちろん親子の愛をモニュメンタルに表した彫刻も魅力的でしたが、私として興味深かったのはゲーテのプロメテウスの挿絵を描いたという「プロメテウスの頭部」(1950年頃)でした。元々、ムアは頭部の造形についても強い関心を抱いていましたが、この作品においても全てが面に分割されるように表現されていました。
点数としてはリトグラフなどの紙作品が約40点も出品されています。良く知られた立体作以外のムアを楽しむという観点からも貴重な展覧会と言えるのかもしれません。
ロートレック「サーカスの舞台裏」(1887年頃)
定評のある常設展示でも嬉しいサプライズです。このほど同美術館が収蔵したロートレックの油彩、「サーカスの舞台裏」が新たに展示されていました。ちなみにこの作品、図版で見ると地味な素描のような印象を受けるかもしれませんが、実際に前に立つと油特有の画肌の迫力に圧倒されます。絵具による陰影も大変に繊細でした。
実のところブリヂストン美術館へは久しぶりに出かけましたが、改めてその質の高いコレクションには強く感心させられました。セザンヌの高名なサント・ヴィクトワール山シリーズも、このブリヂストン所有の作品より美しい作品を他に見たことがありません。ザオの青い飛沫も心をぐっと捉えました。
10月17日まで開催されています。
「ヘンリー・ムア 生命のかたち」
7/31-10/17
ブリヂストン美術館で開催中の「ヘンリー・ムア 生命のかたち」へ行ってきました。
ヘンリー・ムアというと、お馴染みの人体をモチーフとした彫刻が有名ですが、この展示ではそれらの立体をはじめ、素描、リトグラフなどもあわせて紹介されています。テーマ展示ということで規模は小さく、例えば彫刻は全6点の出品に留まっていますが、人体彫刻での「母と子」というキーワードやストーンヘンジのリトグラフなど、ムアの関心の拠り所の要点をピックアップして提示していました。
展示の構成は以下の通りです。
第一章 生命のかたち1 横たわる人体
生命のかたち2 母と子
生命のかたち3 座る女のポーズ
生命のかたち4 頭部(ヘルメット・ヘッド)
第二章 ストーンヘンジ 有機的なかたち
ヘンリー・ムア「母と子(ルーベンス風)」(1979年)
前半部ではムアの人体彫刻を素描などと比較して展示し、後半部では彼が「表現の啓示」を受けたというストーンヘンジのリトグラフシリーズを一挙に並べるという構成になっていました。
ヘンリー・ムア「ストーンヘンジ1 バランスのとれたまぐさ石」(1973年)
今回、ともかくも私が感銘したのは彫刻よりも後半部、つまりは二章のストーンヘンジを描いた版画のシリーズでした。ムアは23歳の時にストーンヘンジを訪れ、その姿に心を奪われたそうですが、それから過ぎること数十年、何と70歳を過ぎてからこの連作に取り組み始めます。
様々な形態をとって折重なる巨石群は、月明かりを吸収して仄かに灯り、実に静謐で神秘的な世界を展開していました。この連作群は全部で20点弱ほどあり、一つの展示室を取り囲むようにして並んでいますが、その中に立つと不思議なエネルギーの渦のようなものを感じるかもしれません。この箇所だけでも本展へ行く価値は十分にありました。
ヘンリー・ムア「プロメテウスの頭部」(1950年頃)
一方、前半部では、ムアが生涯に渡って追求した人体の形態を分析しています。もちろん親子の愛をモニュメンタルに表した彫刻も魅力的でしたが、私として興味深かったのはゲーテのプロメテウスの挿絵を描いたという「プロメテウスの頭部」(1950年頃)でした。元々、ムアは頭部の造形についても強い関心を抱いていましたが、この作品においても全てが面に分割されるように表現されていました。
点数としてはリトグラフなどの紙作品が約40点も出品されています。良く知られた立体作以外のムアを楽しむという観点からも貴重な展覧会と言えるのかもしれません。
ロートレック「サーカスの舞台裏」(1887年頃)
定評のある常設展示でも嬉しいサプライズです。このほど同美術館が収蔵したロートレックの油彩、「サーカスの舞台裏」が新たに展示されていました。ちなみにこの作品、図版で見ると地味な素描のような印象を受けるかもしれませんが、実際に前に立つと油特有の画肌の迫力に圧倒されます。絵具による陰影も大変に繊細でした。
実のところブリヂストン美術館へは久しぶりに出かけましたが、改めてその質の高いコレクションには強く感心させられました。セザンヌの高名なサント・ヴィクトワール山シリーズも、このブリヂストン所有の作品より美しい作品を他に見たことがありません。ザオの青い飛沫も心をぐっと捉えました。
10月17日まで開催されています。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )