都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「館蔵 近代の日本画展」 五島美術館
五島美術館(世田谷区上野毛3-9-25)
「館蔵 近代の日本画展」
5/10-6/15

館蔵の近代日本画を展覧するのは、おおよそ二年に一度のことだそうです。用賀で横尾展を見た帰りに少し寄ってみました。五島の日本画展です。

例の手狭な展示室ということで当然ながら量は望めませんが、大観、玉堂、古径、雅邦などと、近代日本画では外せない画家らの作品は揃っています。(全30点。)ところで今回の出品作の特徴を一つ挙げるとしたら、それは間違いなく富士山の描かれたものが多いということでしょう。富士と言えば条件反射的に大観ではありますが、彼のお馴染みの仰々しいそれがいくつも出品されていました。半ば記号化した富士に好みの優劣をつけるのは難しいところですが、お気に入りの一作を見つけるのも面白いかもしれません。上の画像にあげたのは、大観の「霊峰四題 夏」(1954)です。富士の青みが目に染みました。

最近、惹かれている玉堂に佳品が一点出ていました。それが谷間の渓流を表した「春峡」(1956)です。これは東京美術倶楽部の創立50周年を記念して描かれたという作品ですが、丸太舟が軽やかに進む川の流れには清涼感が感じられます。季節は晩春でしょうか。右上より垂れる桜の木が風流です。山の風を肌に、また水の音を耳に感じる一枚でした。
図版がないのが残念ですが、川端龍子の「筧音図」(1956)は一推しの作品です。筧(けん)とは竹を地上に架け渡して水を流す樋のことを指しますが、腹の黄色の筋の鮮やかな小鳥が樋の傍で水を飲む様子が描かれています。それにしても樋や桶を大きく前へ引き出して描いた大胆な構図感と、趣のある薄い緑ともカーキ色とも言える色彩感の組み合わせが絶妙です。濁った水に苔、そして湿り気を帯びた竹の感触が伝わってきました。
日本画に合わせ、硯、絵筆管などの文房具もいくつか紹介されています。その中では龍尾石の硯が圧巻です。石の滑らかな質感はもとより、形をそのままにした遊びの精神に感じ入るものがありました。全くの初見でしたが、硯の世界も非常に奥が深いようです。
明後日、15日まで開催されています。
「館蔵 近代の日本画展」
5/10-6/15

館蔵の近代日本画を展覧するのは、おおよそ二年に一度のことだそうです。用賀で横尾展を見た帰りに少し寄ってみました。五島の日本画展です。

例の手狭な展示室ということで当然ながら量は望めませんが、大観、玉堂、古径、雅邦などと、近代日本画では外せない画家らの作品は揃っています。(全30点。)ところで今回の出品作の特徴を一つ挙げるとしたら、それは間違いなく富士山の描かれたものが多いということでしょう。富士と言えば条件反射的に大観ではありますが、彼のお馴染みの仰々しいそれがいくつも出品されていました。半ば記号化した富士に好みの優劣をつけるのは難しいところですが、お気に入りの一作を見つけるのも面白いかもしれません。上の画像にあげたのは、大観の「霊峰四題 夏」(1954)です。富士の青みが目に染みました。

最近、惹かれている玉堂に佳品が一点出ていました。それが谷間の渓流を表した「春峡」(1956)です。これは東京美術倶楽部の創立50周年を記念して描かれたという作品ですが、丸太舟が軽やかに進む川の流れには清涼感が感じられます。季節は晩春でしょうか。右上より垂れる桜の木が風流です。山の風を肌に、また水の音を耳に感じる一枚でした。
図版がないのが残念ですが、川端龍子の「筧音図」(1956)は一推しの作品です。筧(けん)とは竹を地上に架け渡して水を流す樋のことを指しますが、腹の黄色の筋の鮮やかな小鳥が樋の傍で水を飲む様子が描かれています。それにしても樋や桶を大きく前へ引き出して描いた大胆な構図感と、趣のある薄い緑ともカーキ色とも言える色彩感の組み合わせが絶妙です。濁った水に苔、そして湿り気を帯びた竹の感触が伝わってきました。
日本画に合わせ、硯、絵筆管などの文房具もいくつか紹介されています。その中では龍尾石の硯が圧巻です。石の滑らかな質感はもとより、形をそのままにした遊びの精神に感じ入るものがありました。全くの初見でしたが、硯の世界も非常に奥が深いようです。
明後日、15日まで開催されています。
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