「岡鹿之助展」 ブリヂストン美術館

ブリヂストン美術館中央区京橋1-10-1
「岡鹿之助展」
4/26-7/6



今年、没後30年を迎えた岡鹿之助(1898-1978)を画業を振り返ります。ブリヂストン美術館で開催中の岡鹿之助展へ行ってきました。

同館で岡の回顧展を開催するのは、1984年についで二度目のことです。一度目の展示ではその画業を単純に時系列で辿っていったそうですが、今回は設定された9つのテーマより彼の作品の本質に迫っていきます。ちなみに彼は作風の変遷の少ない画家です。(パンフレットより。)そのおかげもあってか、テーマ別の展示は何ら違和感なく楽しむことが出来ました。(各テーマは公式HPをご参照下さい。)

 

岡のとりわけ風景画を見るとルソーを思い出すのは私だけでしょうか。確か世田谷のルソー展にも出品されていた「信号台」(1926)は、まるでオモチャの家を捉えたような可愛らしい構図と、石膏を塗ったような重厚なマチエールがルソーの作風を連想させる興味深い作品です。また「掘割」(1927)も、鉄橋を望む水辺の景色が、例えば松本竣介の「Y市の橋」を経由してルソーへとたどり着くような類似性を見るようにも思えます。もちろん細やかで一点一点に神経の通ったような点描風のタッチはスーラをイメージさせる部分もありますが、あえて示せば『和製ルソー』とでも言えるような特徴を持つ画家なのかもしれません。



すみれと言えば岡の代表するモチーフですが、素朴で健気に咲くそれらよりも、アンドレ・ボーシャンの濃密な花卉画を思わせる「献花」(1964)が鮮烈な印象を与えてくれました。籠より溢れんばかりに咲き誇る草花のむせるような熱気は、どちらかと言えば静けさに満ちた彼の作品の中ではかなり異質に感じられます。とは言え、花びらを一枚ずつ丁寧に塗り上げたその感触と、油彩でありながらクレヨンを用いたような画肌の温もりはすみれと同様です。絵より花を愛でる画家自身の優しさが伝わってきました。



この企画展に合わせ、関連の所蔵品を紹介した常設展示、「岡鹿之助にちなんで、コレクションより」も充実しています。館蔵品に定評のあるブリヂストンならではの好企画です。

7月6日まで開催されています。
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