都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「大正から昭和へ」 山種美術館
山種美術館(千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「大正から昭和へ - 佐伯祐三・小出楢重・速水御舟・川端龍子 - 」
4/26-6/8

主に大正から昭和期に描かれた館蔵の近代日本画を概観します。山種美術館での「大正から昭和へ」へ行ってきました。


ここの展示の感想ではいつも御舟の名を挙げてしまいますが、やはり今回の主役も彼であると言わざるを得ません。「昆虫二題 葉陰魔手・粧蛾舞戯」はシュールな構図をとりながら、仏画のような宗教性も見る静謐な作品です。大きな蜘蛛が巣を支配する前者はその漲る命の『出現』を、また蛾が渦巻く光に収斂されてその頂へと向かう後者は、逆に天へと帰りゆく生き物たちのまさしく『昇天』を連想させました。対比的な様相が相互を補完し合う関係になっているのかもしれません。
1930年、例の「ローマ展」の使節として渡欧した御舟が当地で描いた作品も紹介されています。中でも印象深いのは、ギリシアの遺跡の光景を描いた「オデオンの遺址」です。遺跡を象る石の質感を出すことに精を出したのでしょうか。アーチ状の遺跡を描くそのマチエールが、日本画らしからぬ重みをもった画肌で表されていました。技法、表現とも多様な方向へと手を伸ばした、御舟の稀なチャレンジ精神を見る作品とも言えそうです。
もちろん御舟以外にも見応えのある作品は揃っています。琳派の意匠を思わせる川端龍子の大作「鳴門」(ちらしの表紙に掲載された作品です。)をはじめ、竹内栖鳳のお馴染み「班猫」、または清楚な松園の「蛍」なども印象に残りました。また古径が計6点も出ているのもファンにとっては嬉しいところです。中でも確認された彼唯一の油画であるという「静物」は必見の作品です。驚くべき高い写実力を誇っています。
関東大震災後の東京を表した御舟の「灰燼」には言葉を失いました。煙る街に見る、その何とも言えない虚無感が、全てを破壊尽くした震災の恐ろしさをひしひしと伝えています。広がる静寂に『死』を思わせる作品でした。
6月8日までの開催です。
「大正から昭和へ - 佐伯祐三・小出楢重・速水御舟・川端龍子 - 」
4/26-6/8

主に大正から昭和期に描かれた館蔵の近代日本画を概観します。山種美術館での「大正から昭和へ」へ行ってきました。


ここの展示の感想ではいつも御舟の名を挙げてしまいますが、やはり今回の主役も彼であると言わざるを得ません。「昆虫二題 葉陰魔手・粧蛾舞戯」はシュールな構図をとりながら、仏画のような宗教性も見る静謐な作品です。大きな蜘蛛が巣を支配する前者はその漲る命の『出現』を、また蛾が渦巻く光に収斂されてその頂へと向かう後者は、逆に天へと帰りゆく生き物たちのまさしく『昇天』を連想させました。対比的な様相が相互を補完し合う関係になっているのかもしれません。
1930年、例の「ローマ展」の使節として渡欧した御舟が当地で描いた作品も紹介されています。中でも印象深いのは、ギリシアの遺跡の光景を描いた「オデオンの遺址」です。遺跡を象る石の質感を出すことに精を出したのでしょうか。アーチ状の遺跡を描くそのマチエールが、日本画らしからぬ重みをもった画肌で表されていました。技法、表現とも多様な方向へと手を伸ばした、御舟の稀なチャレンジ精神を見る作品とも言えそうです。
もちろん御舟以外にも見応えのある作品は揃っています。琳派の意匠を思わせる川端龍子の大作「鳴門」(ちらしの表紙に掲載された作品です。)をはじめ、竹内栖鳳のお馴染み「班猫」、または清楚な松園の「蛍」なども印象に残りました。また古径が計6点も出ているのもファンにとっては嬉しいところです。中でも確認された彼唯一の油画であるという「静物」は必見の作品です。驚くべき高い写実力を誇っています。
関東大震災後の東京を表した御舟の「灰燼」には言葉を失いました。煙る街に見る、その何とも言えない虚無感が、全てを破壊尽くした震災の恐ろしさをひしひしと伝えています。広がる静寂に『死』を思わせる作品でした。
6月8日までの開催です。
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