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「大回顧展モネ」 国立新美術館

国立新美術館港区六本木7-22-2
「大回顧展モネ」
4/7-7/2



もう見に行ってから一ヶ月も経ってしまいました。国立新美術館で開催中の「大回顧展モネ」です。国内外より集められた約100点弱のモネの絵画に、約25点の現代アート作品が交わります。当然ながら見応えは十分です。

展示の構成はモネを時系列に紹介するのではなく、「印象」や「構図」などのテーマを設定し、関連すると思われる現代アート作品を並べながら、その全貌に迫るものとなっていました。実際のところ、モネとポロックを並列して見ることに価値を見出すのは難しいのですが、もっと単純な印象を申し上げればこの趣向は決して悪くないと思います。つまり、怒濤のように続くモネの色彩や構図にのまれて圧倒されてしまった私を、一連の現代アートがリフレッシュさせてくれたというわけです。しかも紹介されるそれらは、ポロック、李、ロスコ、ライマン、リヒター、フランシス、それにリキテンスタインと、どれも私の好きな作品ばかりでした。また現代アートは、一応、モネ作品とは別室にて紹介されています。その適度な『境界』も良かったのではないでしょうか。



率直なところ、私はまだそれほどモネに惹かれていませんが、どの作品を見ても非常に感心するのは否定出来ない事実です。一推しの作品は「かささぎ」(1868-69)でしょうか。この眩しいほどに輝く雪景色には言葉を失いました。手前の生け垣を挟んでこちら側へのびる影と奥の広大な雪原の対比、またはうっすらとピンク色を帯びた立木と、ただ白いだけではない雪の描写、さらには階段の上で一羽佇む鳥の様子などが絶品です。一般的にモネの色は私には難し過ぎるのですが、この作品からは素直な美感を見ることが出来たと思います。



「サン=ラザール駅」(1877)も印象的です。大きな屋根が駅構内を守るかのように立ち、そこへ灰色の煙をプカプカと浮かせた汽車が入場してきています。またその右手奥にも、もう一台の汽車が今度は白い蒸気を吹かせていました。駅の周囲に群がる人々の賑わいや、汽車の音までが伝わってくるような作品です。比較的細やかなタッチも冴えていました。

 

紫のアイリスの群生する様子を捉えた「ジヴェルニーのモネの庭、アイリス」(1900)は、上でも少し触れた『色に難しさ』を感じる作品です。あまり見慣れない紫を多様し、その生い茂る木立の様子を何やら熱気とともに力強く伝えています。ちなみにアイリスをモチーフにした作品では、上野の西洋美術館の所蔵する「黄色いアイリス」(1914-17)が心にとまりました。蒸気のようにたちのぼる緑に、まるで鳥の舞うように咲く黄色の花が輝いています。

ブリヂストンの常設でお馴染みの「黄昏、ヴェネツィア」(1769)も展示されていました。この朱に染まる空には、その美感よりも、何かこの世の終わりを見ているような恐怖感さえ覚えます。結局、一番絵の前で立ち止まっている時間が長かったのはこれだったかもしれません。何度見ても強烈なインパクトのある作品です。

ウォータールーやルーアン、それにお馴染みの積みわらや蓮の連作も紹介されています。日時を変え、殆ど執拗なまでに同じ構図を追求しつづけたモネに、まさに時代を超えたような芸術家精神も感じました。その革新的な表現は決して損なわれることはありません。

入場には20分待ちの掲示が出ていましたが、実際には10分程度で入ることが出来ました。また、館内も比較的スムーズに流れています。特に現代アートのコーナーと、最後の蓮の連作はゆっくり味わえました。

来月2日までの開催です。(5/20)
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