都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
ジャン・フルネさん、ありがとう!

残念ながら私は立ち会うことが出来なかったのですが、先日、都響名誉指揮者であるジャン・フルネ氏の引退コンサートが開催されました。既にネット上では、実際にお聴きになられた方の感想が多く掲載されていますが、私も、僭越ながら、まずは心からお疲れさまでしたと申し上げたいです。フルネさん、ありがとうございました。
フルネは言うまでもなく、戦後日本のクラシック演奏史に大きな影響を及ぼした指揮者の一人です。彼自身の初来日は、1958年の、伝説的コンサートとして語られることもある「ペレアスとメレザンド」の日本初演。その後もN響初登場(63年)や、日本で最も関係の深いオーケストラとなった都響と共演(78年以降)を通して、すこぶる実直で控えめな「フルネサウンド」をたくさん楽しませてくれました。コンサートキャリアの浅い私にとっては、最近の都響を振ったコンサートだけにしかフルネに接することがなかったのですが、彼のタクトにかかると、何かと豪胆な都響の響きが、いつも柔らかくて繊細になるのに驚かされ、また、腰の軽いとも言える、独特のフワッとした心地良いリズム感がたまらなく魅力的でした。
数少ない私のフルネコンサートの中で最も印象に残ったのは、2002年4月の都響定期公演です。曲は、ラヴェルの「道化師の朝の歌」やワーグナーの「ジークフリート牧歌」、それにルーセルの交響曲第3番だったのですが、特に最後のルーセルで聴かせた明朗で柔らかい響きは、都響の他の演奏では聴いたことがないほど美しく、大変に感銘させられました。デリケートなピアニッシモへの配慮。あれほど心地良く、楽しみながら聴けたコンサートもなかなかありません。
1913年生まれのフルネ。年齢のことはあまり申し上げたくありませんが、ともかくもゆっくりとご休養なさり、いつまでも元気でいらして欲しいです。
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スクロヴァチェフスキが、読売日本交響楽団の次期常任指揮者に就任!

読売日本交響楽団の第8代常任指揮者に、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ氏が就任することが決まり、12月16日に都内のホテルで記者発表が行われました。現常任指揮者の第7代ゲルト・アルブレヒト氏の後任で、任期は2007年4月から2009年3月末までの2年間です。
既に、「ぶらあぼ国内ニュース」では取り上げられていましたが、スタニスラフ・スクロヴァチェフスキが、読売日本交響楽団の次期常任指揮者に就任することが決まりました。任期は2007年4月から2年間。読売日響とスクロヴァチェフスキのコンビは前々から定評がありましたが、まさか常任指揮者になられるとは思いもよりません。これは快挙と言っても良いと思います。
スクロヴァチェフスキは、先日のコンサートを含め、読売日響の公演で三回ほど接したことがありますが、(全て曲はブルックナーだったと思います。)いつも、個性的とも言える曲の解釈に戸惑いながらも、そのアプローチの強固な完成度と、オーケストラを束ねる求心力(音楽への強い愛情を伴った。)、そして全く年齢を感じさせない明晰な指揮に、強く感心させられます。個人的に言えば、定評のあるブルックナーよりも、バルトークかストラヴィンスキー辺りの音楽や、ハイドンからベートーヴェンに至る古典派の交響曲を生で聴いてみたいと思うのですが、ともかくこのような稀有な指揮者を、同時代として、しかも身近なオーケストラで聴くことが出来るとは、本当に大きな喜びです。今後、詳細や、記者会見の記事が、ぶらあぼなどのHPに載るかと思いますが、まずは心からご就任をお祝いしたいと思います。
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「熱狂の日」音楽祭2006 プログラム発表!

「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン『熱狂の日』音楽祭2006」(東京国際フォーラム主催、読売新聞社特別協力)の会見が15日開かれ、演奏曲や出演者などが発表された。
公式HPにはまだ詳細が発表されていませんが、(メルマガでもまだのようです。)来年の「熱狂の日2006 モーツァルトと仲間たち」(2006年5/3~6、東京国際フォーラムにて。)のプログラム、または演奏者等が発表されました。現時点で最も情報が出ているのは、「ぶらあぼ」の国内ニュース(ブログ形式)です。
出演者一覧/プログラム-5月3日/5月4日/5月5日/5月6日
今、そのプログラムをザッと見渡してみて気になった公演は、ケルン室内合唱団とコレギウム・カルトゥシアヌム(ノイマン指揮)の「ミサ曲ハ短調」と「ヴェスペレ」。また、曲目は未定ながらも、コルボとローザンヌ声楽アンサンブルの公演。さらにはRIAS室内合唱団の「レクエイム」などでしょうか。声楽合唱、宗教曲関係のプログラムを中心に聴いてみたいと思いました。(モーツァルトの作品の中核を成す、オペラの本格的な公演はさすがに予定されていないようです。)また、一度聴いてみたかった、グラス・ハーモニカの演奏も予定されています。こちらも楽しみです。
今後も情報が追加されることかと思います。2006年、モーツァルト生誕250年の記念すべき「熱狂の日」。今年以上の盛り上がりを見せそうです。
*12/16追記:公式HPでも、公演の情報が掲載されました。
*関連エントリ
「今年の『熱狂の日音楽祭』のチケットは如何に?」(2006/4/9)
「『ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン〈熱狂の日〉音楽祭 2006』、ついに開幕!」(2006/4/30)
「『熱狂の日音楽祭』のあとは『ぶらあぼ』で!」(2006/5/4)
「モーツァルト市場で見つけたこんなもの…。 『熱狂の日音楽祭2006』」(2006/5/5)
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エリアフ・インバル、都響に再登場!

私がインバルに接したのは、ただ一回きり、1999年10月の都響のコンサートでの「ワルキューレ第三幕」(演奏会方式)でした。私はその頃、丁度クラシックのコンサートへ通い始めた時期だったのですが、このコンサートの様子は今も深く印象に残っています。荒れ狂う弦と管の壮絶な咆哮。音楽の力感の凄みに心底驚き、また感銘しました。
当時のベルティーニとインバルは、都響を車の両輪ように支えていました。私はてっきり今後も、二人が都響でまた名演を繰り広げてくれるのかと思っていたのですが、いつの間にか気がつかないうちに、インバルの名が都響のラインナップから消えてしまったのです。(またベルティーニもあのような悲しい形となってしまいました。)もちろん、インバルはその後もフランクフルト放送響などと頻繁に来日しています。私がそれを聴きそびれているだけではありますが、あの日のコンサートは、インバルの名を心に深く留めさせました。彼は、私がクラシックに接した初めの頃に、生のコンサートの素晴らしさを教えてくれた指揮者の一人とも言えるでしょう。そしてその彼が、再び来年ステージへとあがるのです。これは待ちに待った朗報です。
予定では、来年11月19日のプロムナードコンサートと、24日の定期Aシリーズ、さらには25日のBシリーズに登場します。しかしながら、曲目はまだ未定です。同時に発表されていた他のコンサートのラインナップでは、全ての曲目が公表されていたので、少しヤキモキもさせるアナウンスですが、「また都響でインバルが聴ける。」と信じて、来年の11月を楽しみに待ちたいと思いました。
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アーノンクール氏、「京都賞」授賞式出席のため来日

京都賞授賞式 3人が受賞(NHK・映像付き)
ちなみに「京都賞」とは、京セラの創業者である稲盛和夫氏による稲盛財団が、「科学技術や文明の発展に貢献した人に贈る」(記事より引用。)賞とのことで、アーノンクールは、思想・芸術部門にての受賞ということなのだそうです。大変にお目出度いお話ではありますが、賞金もこれまたなかなかお目出度いビックな額でして、何と5000万円。NHKのニュースの映像では、随分と緊張した面持ちのアーノンクールが、メダルを首からぶら下げ、こちらを凝視するシーンが数秒ほど流されておりましたが、何十年ぶりかの来日が、このような形で来年の公演に先駆けて実現するとは思いもよりませんでした。
京都賞の受賞を記念したシンポジウム、「アーノンクール・イン・京都」(PDFファイル)という企画も、次の土曜日の12日にも予定されているのだそうです。氏にとって非常に久しぶりとなった日本は、どのようにうつったのでしょうか。あまり大きな話題ではありませんが、「極度の飛行機嫌い。」や「時差ぼけが酷い。」など、根拠の怪しい憶測も飛び交った、日本では半ば伝説的な存在であるアーノンクール。その来日はあまりにも突然だったようです。
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「タワーレコード vs 石丸電気?」 in秋葉原

今日は、首都圏最後の大型新線とも言われる「つくばエクスプレス」の開業がニュースで話題になっていましたが、その始発駅である秋葉原にタワーレコードの出店が決まったそうです。山手線沿線では、池袋、新宿、渋谷と、西側ばかりに店を構えるタワーですが、秋葉原への進出によって、ようやく東側にも「黄色い袋」を提げた買い物客が見られることになるのでしょうか。
タワーレコードのプレスリリース(pdf)によれば、「ヨドバシカメラマルチメディアAKIBA」(仮称)の開店に合わせ、9月16日にそのビルの7階にオープンするとのことです。品揃えはフルラインと言うことで、当然ながらクラシックの取り扱いも予告されています。現代音楽や輸入盤に強いタワーのことなので、いよいよ、長年秋葉原に君臨してきた石丸電気との全面対決(?)かとも思ってしまいますが、店舗面積が300坪強と、同じくタワーの新宿店の3分の1程度の規模となっています。この大きさでの過度な期待は禁物かもしれません…。
私自身、最近はあまりCDを買わなくなったのですが、よく行く店は新宿のタワーか秋葉原の石丸電気です。以前、石丸は、クラシックCDを二店に分散させるように置いていて、非常に買い難かったのですが、先日の改装の折に一つに統合され、豪華な試聴室が設けられるなど、今までにはないサービスも付け加えられました。また、昔程ではありませんが、新譜CDの価格設定も良心的です。自宅からも行きやすいので、これからもメインで使います。
東京中心部でクラシックを多く扱う新譜のCD店と言えば、池袋・渋谷のHMV、新宿・渋谷のタワーレコード、秋葉原の石丸電気、銀座の山野楽器などでしょうか。AmazonやHMVなどの強力なオンライン販売もある上、ただでさえ市場の小さいクラシックCDの取り扱いですから、どの店も大変な営業努力をされていることかと思いますが、来月の16日には、早速「タワーレコード秋葉原店」へ出向いてみようかと思っています。
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あくまでも愉しいアーノンクールの「悔い改めるダビデ」
ヨーロッパ夏の音楽祭2005 NHK-FMベストオブクラシック(8/22 19:20~)
曲 モーツァルト/「カンタータ 悔い改めるダビデ K.469」
指揮 ニコラウス・アーノンクール
演奏 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ソプラノ マリン・ハルテリウス/ロベルタ・インヴェルニッツィ
テノール クリストフ・シュトレール
合唱 アルノルト・シェーンベルク合唱団
「ハ短調ミサ曲K.427」の改作として知られる「悔い改めるダビデK.469」。あまり頻繁に演奏される曲ではありませんが、アーノンクールとその手兵でもあるウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(CMW)、それにシェーンベルク合唱団とは豪華な組み合わせです。早速耳を傾けてみました。
ところでこの曲は、モーツァルト研究家として著名なアインシュタインによれば、「はなはだ分裂した曲」であると指摘されています。要は、ダ・ポンテが付けたという歌詞と、本来ミサ曲のために作られた筈の音楽の間には、大きな乖離があるということです。確かに、急いで作曲されたこのカンタータは、大部分が「ハ短調ミサ曲」からの転用によって構成されていて、テノールのためのアリア「数知れぬ悩みの中で」と、ソプラノのためのアリア「暗い、不吉な闇の中から」、それに最後の合唱の一部だけが、この曲のオリジナルの部分となっています。もちろん、この日の解説の磯山氏によれば、その追加部分のオーケストレーションは素晴らしく、いささかの価値を損なうこともないそうですが、もし、二曲の新作アリアがなければ、「価値のない曲」として片付けられてしまう、そんな雰囲気がありそうな気もします。単なるミーハーなモーツァルト好きの私にとっては、ただ、ハ短調ミサ曲の上に流れるイタリア語の歌詞の流麗さや、追加された二曲のオペラ風の華々しさや人懐っこさに惹かれるのですが、何かと問題がある音楽なのかもしれません。
アーノンクールによる演奏は実にスピーディでした。勿体ぶった表情を一切つけないで、音楽に生気と愉しさを与えるように進めます。もちろん、CMWの喰らいつきも見事で、特に弦のしなやかさと躍動感には舌を巻くほどです。ただ、録音のせいか、パート間にあまり透明感や明晰さが見られず、全体的に少々ごちゃごちゃした印象も受けましたが、その抜群、いや独特の語り口によるリズム感はさすがでしょう。また、シェーンベルク合唱団を、そっとオーケストラにのせるように歌わせて、仄かで淡い雰囲気を作り出します。あくまでも柔らかい。自然体な音楽と、合唱や歌唱との絶妙な「間」。これは一体何処から来るのでしょうか。
大の時差嫌いとも言われるアーノンクールですが、来年の11月には、ウィーンフィルやコンツェントゥス・ムジクスとの来日公演が予定されています。私は、彼の演奏を熱心に聴き込んでいる「ファン」ではありませんが、これは期待が高まります。日本の古楽演奏史に新たな一ページを付け加える、記念碑的な公演となるかもしれません。
曲 モーツァルト/「カンタータ 悔い改めるダビデ K.469」
指揮 ニコラウス・アーノンクール
演奏 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
ソプラノ マリン・ハルテリウス/ロベルタ・インヴェルニッツィ
テノール クリストフ・シュトレール
合唱 アルノルト・シェーンベルク合唱団
「ハ短調ミサ曲K.427」の改作として知られる「悔い改めるダビデK.469」。あまり頻繁に演奏される曲ではありませんが、アーノンクールとその手兵でもあるウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(CMW)、それにシェーンベルク合唱団とは豪華な組み合わせです。早速耳を傾けてみました。
ところでこの曲は、モーツァルト研究家として著名なアインシュタインによれば、「はなはだ分裂した曲」であると指摘されています。要は、ダ・ポンテが付けたという歌詞と、本来ミサ曲のために作られた筈の音楽の間には、大きな乖離があるということです。確かに、急いで作曲されたこのカンタータは、大部分が「ハ短調ミサ曲」からの転用によって構成されていて、テノールのためのアリア「数知れぬ悩みの中で」と、ソプラノのためのアリア「暗い、不吉な闇の中から」、それに最後の合唱の一部だけが、この曲のオリジナルの部分となっています。もちろん、この日の解説の磯山氏によれば、その追加部分のオーケストレーションは素晴らしく、いささかの価値を損なうこともないそうですが、もし、二曲の新作アリアがなければ、「価値のない曲」として片付けられてしまう、そんな雰囲気がありそうな気もします。単なるミーハーなモーツァルト好きの私にとっては、ただ、ハ短調ミサ曲の上に流れるイタリア語の歌詞の流麗さや、追加された二曲のオペラ風の華々しさや人懐っこさに惹かれるのですが、何かと問題がある音楽なのかもしれません。
アーノンクールによる演奏は実にスピーディでした。勿体ぶった表情を一切つけないで、音楽に生気と愉しさを与えるように進めます。もちろん、CMWの喰らいつきも見事で、特に弦のしなやかさと躍動感には舌を巻くほどです。ただ、録音のせいか、パート間にあまり透明感や明晰さが見られず、全体的に少々ごちゃごちゃした印象も受けましたが、その抜群、いや独特の語り口によるリズム感はさすがでしょう。また、シェーンベルク合唱団を、そっとオーケストラにのせるように歌わせて、仄かで淡い雰囲気を作り出します。あくまでも柔らかい。自然体な音楽と、合唱や歌唱との絶妙な「間」。これは一体何処から来るのでしょうか。
大の時差嫌いとも言われるアーノンクールですが、来年の11月には、ウィーンフィルやコンツェントゥス・ムジクスとの来日公演が予定されています。私は、彼の演奏を熱心に聴き込んでいる「ファン」ではありませんが、これは期待が高まります。日本の古楽演奏史に新たな一ページを付け加える、記念碑的な公演となるかもしれません。
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クリスティの華美で端麗な「パリ交響曲」
ベルリン・フィル演奏会(5) NHK-FMベストオブクラシック(8/19 19:20~)
曲 ハイドン/交響曲第97番ハ長調(ヤンソンス指揮)
モーツァルト/交響曲第31番ニ長調(クリスティ指揮)
シューベルト/交響曲ニ長調からアンダンテ(ラトル指揮)
ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調(ラトル指揮)
演奏 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
今週の「ベストオブクラシック」は、ベルリン・フィルの特集だったようですが、その最終日となった今日の放送は、ヤンソンス、クリスティ、ラトルの三人の指揮者による「ウィーン古典派」の競演でした。それぞれの指揮者の個性が素直に出そうな興味深いプログラムです。久々にラジオに耳を傾けてみました。
「ヤンソンスとハイドン」という組み合わせは、少々意外な印象を受けますが、演奏自体は実に丁寧着実と言えるような内容だったと思います。印象に残った第2楽章では、一つ一つのフレーズを強めに繰り返し、デュナーミクはやや大きめの方向に伸び、ゆったりとした流れで全体の構造を提示します。時折、低音部重視の、粘っこく突き上げるような音のなぞり方は、結果としてハイドンには似つかないような重厚感を与えていましたが、その辺はヤンソンスならではの工夫なのかもしれません。
一転してクリスティによる「パリ交響曲」は、音を細かく砕いてサッとまいたような颯爽感と、華美で祝典的な雰囲気、(もちろん、この曲ならではの要素もありますが。)そして小気味良いリズムが印象的でした。細かいパッセージにも注意が払われ、弦の切れ味も、それにそっと合わせるような木管も良好。同じオーケストラでも、指揮者が違うだけでこうも表現が異なることに、当たり前ながら改めて気がつかされます。古典派なら私は断然こちらの表現を好みます。特に第3楽章のアレグロはまさに疾風。単純な上昇音階の心地よさが心を洗います。
最後は、音楽監督のラトルが振ったベートーヴェンの交響曲第四番です。第一楽章の序奏部は暗鬱な響きで、これは重厚長大路線なのかと思わせますが、その後はやや崩れ気味ながらもギアーが入って加速していきます。響きにあまり膨らみがなくて平板に聴こえてくるのが気になりましたが、裏を返せば、それだけ凝縮された音ということにもなるのでしょうか。オーケストラがラトルの即興的な指示に喰らいつく。そんな光景が目に浮かぶようです。
第3楽章はかなり個性的でした。室内楽と大管弦楽を同時に操っているかのような、極めて幅の広い表現で、音楽に勢いとうねりを与えます。木管にスポット当てて柔らかく響きを作ったと思いきや、再び弦でゴリゴリと押してくる。妙に分裂した印象を受けます。元々曲想が目まぐるしく変化する第4楽章も同様で、その目まぐるしさをさらに強調してきます。リズム感の良さこそラトルならではと言った感もありましたが、私としてはどこか違和感が残る演奏だったようにも思います。どうでしょうか。
曲 ハイドン/交響曲第97番ハ長調(ヤンソンス指揮)
モーツァルト/交響曲第31番ニ長調(クリスティ指揮)
シューベルト/交響曲ニ長調からアンダンテ(ラトル指揮)
ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調(ラトル指揮)
演奏 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
今週の「ベストオブクラシック」は、ベルリン・フィルの特集だったようですが、その最終日となった今日の放送は、ヤンソンス、クリスティ、ラトルの三人の指揮者による「ウィーン古典派」の競演でした。それぞれの指揮者の個性が素直に出そうな興味深いプログラムです。久々にラジオに耳を傾けてみました。
「ヤンソンスとハイドン」という組み合わせは、少々意外な印象を受けますが、演奏自体は実に丁寧着実と言えるような内容だったと思います。印象に残った第2楽章では、一つ一つのフレーズを強めに繰り返し、デュナーミクはやや大きめの方向に伸び、ゆったりとした流れで全体の構造を提示します。時折、低音部重視の、粘っこく突き上げるような音のなぞり方は、結果としてハイドンには似つかないような重厚感を与えていましたが、その辺はヤンソンスならではの工夫なのかもしれません。
一転してクリスティによる「パリ交響曲」は、音を細かく砕いてサッとまいたような颯爽感と、華美で祝典的な雰囲気、(もちろん、この曲ならではの要素もありますが。)そして小気味良いリズムが印象的でした。細かいパッセージにも注意が払われ、弦の切れ味も、それにそっと合わせるような木管も良好。同じオーケストラでも、指揮者が違うだけでこうも表現が異なることに、当たり前ながら改めて気がつかされます。古典派なら私は断然こちらの表現を好みます。特に第3楽章のアレグロはまさに疾風。単純な上昇音階の心地よさが心を洗います。
最後は、音楽監督のラトルが振ったベートーヴェンの交響曲第四番です。第一楽章の序奏部は暗鬱な響きで、これは重厚長大路線なのかと思わせますが、その後はやや崩れ気味ながらもギアーが入って加速していきます。響きにあまり膨らみがなくて平板に聴こえてくるのが気になりましたが、裏を返せば、それだけ凝縮された音ということにもなるのでしょうか。オーケストラがラトルの即興的な指示に喰らいつく。そんな光景が目に浮かぶようです。
第3楽章はかなり個性的でした。室内楽と大管弦楽を同時に操っているかのような、極めて幅の広い表現で、音楽に勢いとうねりを与えます。木管にスポット当てて柔らかく響きを作ったと思いきや、再び弦でゴリゴリと押してくる。妙に分裂した印象を受けます。元々曲想が目まぐるしく変化する第4楽章も同様で、その目まぐるしさをさらに強調してきます。リズム感の良さこそラトルならではと言った感もありましたが、私としてはどこか違和感が残る演奏だったようにも思います。どうでしょうか。
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「iTunes Music Store」が日本上陸

米アップルコンピュータが4日午前、同日から日本で音楽配信事業を始めたと発表した。スティーブ・ジョブズ最高経営責任者(CEO)が来日し、都内で会見した。大手レコード会社のエイベックス・グループなど15社が計約100万曲を提供し、日本最大の配信事業者となる。世界最大手の参入で、パソコンを使った音楽販売・購入が本格化することになりそうだ。
「apple」の音楽配信サービス「iTunes Music Store」(iTMS)が、今日、とうとう日本上陸を果たしました。国内レーベル15社の参入による全100万曲の販売は、これまで最大手だった「mora」の約20万曲を抜いて、堂々の国内最大となります。なかなか市場が拡大して来なかった国内の音楽配信も、これでまた新たな局面を迎えそうです。
それにしてもアップルの参入には、想像以上の時間がかかりました。欧米など19ヶ国で展開されていたiTMSの日本進出は20番目。権利関係などで様々な問題を抱えてる日本の音楽産業とは言え、その市場規模の大きさを考えれば、アップルの参入は遅かったくらいでしょう。既に営業をしている国では、全ての楽曲が統一価格(アメリカの99セントなど。)で販売されていましたが、日本では楽曲の9割が150円、その他1割が200円にて提供されると言う、なかなか「難しい線」で落ち着いています。CD-Rへのコピー等、購入者の自由度という点では他のサービスよりも進歩的ですが、まだまだアップルと国内レーベルには落ち合ない部分も多いようです。(ちなみにiTMSの開始に伴い、他のサービス会社は一斉に販売価格の値下げを発表したそうです。)
さて、実際にiTMSを見てみると、まだまだ邦楽がメインで、洋楽はこれからと言ったところのようです。また、肝心のクラシックに関してはまだまだお寒い状況で、他のジャンルと比べても力が入れられていません。これは、クラシックそのものが音質の問題で、現時点では音楽配信に向いてないという点もありますが、それにしてもラインナップをもっと充実させて欲しいようにも思います。もちろん、私もクラシックに関してのiTMSには、あまり期待はしていませんが、簡単に一曲毎の試聴が出来るというメリットを生かせば、もっとマイナーな音楽やCDも取り上げて、購入者の幅を広げながら購入意欲を高めることも可能かと思います。音質についても将来的には期待したいです。
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バイロイト音楽祭2005 大植さんの「トリスタンとイゾルデ」
大植英次さん力演、バイロイト音楽祭で盛んな拍手(asahi.com)
25日に開幕したドイツのバイロイト音楽祭で、初日に名作「トリスタンとイゾルデ」を指揮した大阪フィル音楽監督の大植英次さん(47)は、感性ゆたかな響きを紡いで聴衆の盛んな拍手を浴びた。
昨日開幕したバイロイト音楽祭。初日大植さんが振られた「トリスタンとイゾルデ」は、一部演出へのブーイングがあった以外は、概ね好意的に迎えられたそうです。まだ詳細が分からないので何とも言えませんが、出足は良好だったようです。
ところで、昨日の公演ですが、私もNRK(ノルウェー国営放送)のインターネットラジオで一幕まで聴きました。序曲からやや表情が硬く、響きも全体的に平板な印象も受けましたが、どうやら二幕、三幕と尻上がりに調子を上げたようです。(そちらはこれから録音で聴いてみたいと思います。)私が一番感銘を受けたのは、イゾルデのNina Stemmeでしょうか。突き抜けるような強靭な歌声は、音楽をぐっと引き締めていて、最初から抜群の存在感を示していました。
今日はライブでは密かに(?)人気があるという、ピーター・シュナーダーの「ローエングリン」です。上演は日本時間で午後11時からとのことで、同じくNRK(思っていたよりも音質は良好でした。)で聴いてみたいと思います。
25日に開幕したドイツのバイロイト音楽祭で、初日に名作「トリスタンとイゾルデ」を指揮した大阪フィル音楽監督の大植英次さん(47)は、感性ゆたかな響きを紡いで聴衆の盛んな拍手を浴びた。
昨日開幕したバイロイト音楽祭。初日大植さんが振られた「トリスタンとイゾルデ」は、一部演出へのブーイングがあった以外は、概ね好意的に迎えられたそうです。まだ詳細が分からないので何とも言えませんが、出足は良好だったようです。
ところで、昨日の公演ですが、私もNRK(ノルウェー国営放送)のインターネットラジオで一幕まで聴きました。序曲からやや表情が硬く、響きも全体的に平板な印象も受けましたが、どうやら二幕、三幕と尻上がりに調子を上げたようです。(そちらはこれから録音で聴いてみたいと思います。)私が一番感銘を受けたのは、イゾルデのNina Stemmeでしょうか。突き抜けるような強靭な歌声は、音楽をぐっと引き締めていて、最初から抜群の存在感を示していました。
今日はライブでは密かに(?)人気があるという、ピーター・シュナーダーの「ローエングリン」です。上演は日本時間で午後11時からとのことで、同じくNRK(思っていたよりも音質は良好でした。)で聴いてみたいと思います。
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バイロイト音楽祭2005
明日からいよいよバイロイト音楽祭が始まります。今年の音楽祭の最大の注目は、指揮者では日本人初の登場となる(東洋人初でもあります。)大植英次さんの「トリスタンとイゾルデ」でしょうか。大植さんのバイロイト登場は、以前に報道でも「歴史的な快挙」として大きく取り上げられましたが、いよいよ本番とのことで期待が高まります。
さて、インターネットラジオの詳細な情報を載せたブログ「オペラキャスト」(いつも有難く重宝させていただいております。)によれば、音楽祭の模様は、ヨーロッパの各インターネットラジオ局で生放送されるとのことです。「トリスタンとイゾルデ」は明日25日の公演で、現地時間15:55、つまり日本時間で22:55からの放送となります。当然ながら時差の関係で開始時間が遅く、寝不足になることは確実ですが、年末のNHK-FMの放送を待たないで聴くことができるのは貴重な機会です。自信はあまりませんが、最後まで聴いてみようかと思います。(ちなみに「オペラキャスト」様のブログには、ラジオの録音の方法などについての丁寧な情報もあります。)
さて、インターネットラジオの詳細な情報を載せたブログ「オペラキャスト」(いつも有難く重宝させていただいております。)によれば、音楽祭の模様は、ヨーロッパの各インターネットラジオ局で生放送されるとのことです。「トリスタンとイゾルデ」は明日25日の公演で、現地時間15:55、つまり日本時間で22:55からの放送となります。当然ながら時差の関係で開始時間が遅く、寝不足になることは確実ですが、年末のNHK-FMの放送を待たないで聴くことができるのは貴重な機会です。自信はあまりませんが、最後まで聴いてみようかと思います。(ちなみに「オペラキャスト」様のブログには、ラジオの録音の方法などについての丁寧な情報もあります。)
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フェスタ サマーミューザKAWASAKI 2005

チケットの価格設定が、コンサートによってバラツキはあるものの、総じて良心的(3000円程度)なのも嬉しいところです。プログラムはいわゆる「名曲」ばかりですが、これはコアなクラシックファン以外へ間口を広げる意味もあるのでしょうか。また、リハーサルと本番をセットにしたコンサートや、ホールご自慢のオルガンを使ったコンサートなども企画されています。決して小難しくなく、しかも安価にクラシックを楽しめるよう配慮された音楽祭とは、ゴールデンウィークに行われた「熱狂の日」などと同じく、これからのクラシックコンサートの楽しみ方の一つとなるかもしれません。
宣伝不足なのか、ぴあによれば、まだチケットがかなり残っているようです。私もこのホールへは一度も行ったことがありません。これを機会に何とか足を運んでみようかと思っています。
「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2005」
・期間:2005/7/23~8/8
・場所:ミューザ川崎シンフォニーホール(JR川崎駅西口)
・主な公演:
7/23(土)15:00 東京交響楽団(指揮:秋山和慶)「ジョン・ウィリアムズの世界」
7/23(土)18:00 東京交響楽団(指揮:秋山和慶)「ウィンナ・ワルツ&オペレッタ」
7/24(日)16:00 東京都交響楽団(指揮:若杉弘)「マーラー:交響曲第5番」
7/29(金)16:00 神奈川フィル(指揮:現田茂夫)「バーンスタイン:ウェストサイド・ストーリー他」
7/30(土)18:00 読売日本交響楽団(指揮:ゲルト・アルブレヒト)「ベートーヴェン:交響曲第6番他」
7/31(日)14:00 東京フィル(指揮:チョン・ミョンフン)「ドヴォルザーク:交響曲第8番他」
8/2(火)15:00 NHK交響楽団(指揮:山下一史)「チャイコフスキー:組曲『白鳥の湖』他」
8/5(金)20:00 日本フィルハーモニー(指揮:小林研一郎)「ベートーヴェン:交響曲第9番」
8/6(土)15:00 東京シティ・フィル(指揮:矢崎彦太郎)「ドビュッシー:歌劇「ペリアスとメリザンド」より管弦楽曲抜粋他」
8/6(土)18:00 東京シティ・フィル(指揮:飯守泰次郎)「ワーグナー:『ニーベルングの指環』より管弦楽曲抜粋」
8/7(日)16:00 新日本フィルハーモニー(指揮:井上道義)「ドビュッシー:交響詩『海』他」
8/8(月)15:00 東京交響楽団(指揮:堀俊輔)「ホリヤンの誰でもオーケストラ入門」
8/8(月)19:30 東京交響楽団(指揮:飯森範親)「オルフ:世俗カンタータ『カルミナ・ブラーナ』」
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アンサンブル・モデルン・アカデミー・コンサート
先日、「イスラエル美術の兆し展」を見るためにトーキョーワンダーサイトへ出向いたところですが、そこで気になるコンサートの告知を見つけました。
インターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー・コンサート
日時:2005年7月15日(金)19:00開演(18:30開場)
会場:東京文化会館小ホール
料金:全席自由3000円
出演:IEMA受講生+アンサンブル・モデルン
演奏が予定される作品・作曲家:
若手作曲家(IEMA受講生)による作品
スティーブ・ライヒ Steve Reich
ヘルムート・ラッヘンマン Helmut Lachenmann
ジョルジ・リゲティ Gyorgy Ligeti
原田敬子 Keiko Harada(IEMA招待作曲家)
ワンダーサイトで、9日から14日まで開催されるというIEMA。(インターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー)今回のコンサートは、その成果発表の場として設けられたようです。アンサンブル・モデルン自体の公演は、6月にオペラシティで終了していますが、アカデミー・コンサートとは言え、大好きなスティーブ・ライヒが格安で聴けるなんてとても気になります。ぴあによればまだチケットも余っているようです。都合を合わせて是非行ってみようと思います。
*「アンサンブル・モデルン」
1980年、自主運営のアンサンブルとして設立。年間100公演、初演20曲という驚くべきペースで20、21世紀の音楽を集中的紹介。演奏水準の高さと優れた現代作品に特化したプログラミンで世界をリードする。(アリオン音楽財団より。)
インターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー・コンサート
日時:2005年7月15日(金)19:00開演(18:30開場)
会場:東京文化会館小ホール
料金:全席自由3000円
出演:IEMA受講生+アンサンブル・モデルン
演奏が予定される作品・作曲家:
若手作曲家(IEMA受講生)による作品
スティーブ・ライヒ Steve Reich
ヘルムート・ラッヘンマン Helmut Lachenmann
ジョルジ・リゲティ Gyorgy Ligeti
原田敬子 Keiko Harada(IEMA招待作曲家)
ワンダーサイトで、9日から14日まで開催されるというIEMA。(インターナショナル・アンサンブル・モデルン・アカデミー)今回のコンサートは、その成果発表の場として設けられたようです。アンサンブル・モデルン自体の公演は、6月にオペラシティで終了していますが、アカデミー・コンサートとは言え、大好きなスティーブ・ライヒが格安で聴けるなんてとても気になります。ぴあによればまだチケットも余っているようです。都合を合わせて是非行ってみようと思います。
*「アンサンブル・モデルン」
1980年、自主運営のアンサンブルとして設立。年間100公演、初演20曲という驚くべきペースで20、21世紀の音楽を集中的紹介。演奏水準の高さと優れた現代作品に特化したプログラミンで世界をリードする。(アリオン音楽財団より。)
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「奇怪さ」への魅力 プロコフィエフの第五交響曲を聴く
第1546回N響定期公演 生中継 NHK-FMベストオブクラシック(7/8 19:00~)
曲 プロコフィエフ/交響曲第五番作品100
指揮 アンドレイ・ボレイコ
演奏 NHK交響楽団
今日の「ベストオブクラシック」は、N響C定期の生中継でした。ソリストにN響主席奏者の横川さんを迎えて、モーツァルトのクラリネット協奏曲なども演奏されたそうですが、時間の都合で最後のプロコフィエフだけを聴きました。
ところでプロコフィエフは、「偏食」の私にとって全く馴染みのない作曲家です。第五番は、「古典交響曲」などと並ぶ名作として知られていますが、恥ずかしながら殆ど聴いたことがありません。指揮のアンドレイ・ボレイコ氏も初めて聴く方です。新鮮な気持ちで音楽に耳を傾けてみました。
第五交響曲で大変印象的だったのは、曲想の目まぐるしい変化が生む、全体の奇想天外な構成感です。金管がティンパニの下支えと共に堂々と鳴らされたかと思いきや、いつの間にやらマーチ風の親しみやすいメロディーが登場し、まるで音楽中に「劇」が始まったかのように語り口調で話しかけてきます。最終楽章での派手なコーダは突如室内楽の様相を呈し、妙な後味を残しながら音像が消えていきます。とは言え、メロディーはどれも人懐っこい表情で、ショスタコーヴィチのような「あえて大げさに構えた深刻さ」よりも、むしろ諧謔性を思わせるフレーズが散見させられます。奇妙な魅力を感じました。
アンドレイ・ボレイコは、ロシア生まれの「俊英」の指揮者として紹介されていました。私が一番感銘したのは、ちょっとしたことで破綻しそうな、ある意味危なっかしいこの曲を、堅牢な構成感で整えながらも、決して窮屈な表情に陥らさせないで聴かせることです。低音部は端正にリズムを刻み、ヴァイオリンは機動的にその上を駆け巡らせ、全体の調和をハッキリと提示します。派手さこそないものの、木管の受け渡しへの細やかな配慮など、丁寧な仕事ぶりを感じさせます。N響の喰らいつきも見事でしたが、是非他の曲でも聴いてみたい方だと思いました。(これは私の好きなタイプの指揮者です。)
前半のモーツァルト、または、一曲目のオラスの「沈黙の王国」は、どのような演奏だったのでしょうか。残念ながら明日の公演には出向くことができませんが、ホールで聴くべきだったと思うほどの好演でした。
曲 プロコフィエフ/交響曲第五番作品100
指揮 アンドレイ・ボレイコ
演奏 NHK交響楽団
今日の「ベストオブクラシック」は、N響C定期の生中継でした。ソリストにN響主席奏者の横川さんを迎えて、モーツァルトのクラリネット協奏曲なども演奏されたそうですが、時間の都合で最後のプロコフィエフだけを聴きました。
ところでプロコフィエフは、「偏食」の私にとって全く馴染みのない作曲家です。第五番は、「古典交響曲」などと並ぶ名作として知られていますが、恥ずかしながら殆ど聴いたことがありません。指揮のアンドレイ・ボレイコ氏も初めて聴く方です。新鮮な気持ちで音楽に耳を傾けてみました。
第五交響曲で大変印象的だったのは、曲想の目まぐるしい変化が生む、全体の奇想天外な構成感です。金管がティンパニの下支えと共に堂々と鳴らされたかと思いきや、いつの間にやらマーチ風の親しみやすいメロディーが登場し、まるで音楽中に「劇」が始まったかのように語り口調で話しかけてきます。最終楽章での派手なコーダは突如室内楽の様相を呈し、妙な後味を残しながら音像が消えていきます。とは言え、メロディーはどれも人懐っこい表情で、ショスタコーヴィチのような「あえて大げさに構えた深刻さ」よりも、むしろ諧謔性を思わせるフレーズが散見させられます。奇妙な魅力を感じました。
アンドレイ・ボレイコは、ロシア生まれの「俊英」の指揮者として紹介されていました。私が一番感銘したのは、ちょっとしたことで破綻しそうな、ある意味危なっかしいこの曲を、堅牢な構成感で整えながらも、決して窮屈な表情に陥らさせないで聴かせることです。低音部は端正にリズムを刻み、ヴァイオリンは機動的にその上を駆け巡らせ、全体の調和をハッキリと提示します。派手さこそないものの、木管の受け渡しへの細やかな配慮など、丁寧な仕事ぶりを感じさせます。N響の喰らいつきも見事でしたが、是非他の曲でも聴いてみたい方だと思いました。(これは私の好きなタイプの指揮者です。)
前半のモーツァルト、または、一曲目のオラスの「沈黙の王国」は、どのような演奏だったのでしょうか。残念ながら明日の公演には出向くことができませんが、ホールで聴くべきだったと思うほどの好演でした。
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ヤナーチェクの恋の行方 弦楽四重奏曲第二番「ないしょの手紙」を聴く
フェルメール弦楽四重奏団演奏会 NHK-FMベストオブクラシック(7/6 19:20~)
曲 ヤナーチェク/弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲作品59「ラズモフスキー第1番」
シューベルト/弦楽四重奏曲作品168から「第1、第2、第4楽章」
演奏 フェルメール弦楽四重奏団
最近、じっくりとクラシック音楽を聴くことが少ないのですが、今日は久しぶりに「ベストオブクラシック」に耳を傾けてみることにしました。録音は、今年四月、フェルメール四重奏団が紀尾井ホールで行った演奏会の模様で、ヤナーチェクなどの比較的有名な弦楽四重奏曲が三曲ほど演奏されていました。(シューベルトは時間の都合で第三楽章がカット。)
フェルメール弦楽四重奏団は、1969年のマールボロ音楽祭にて結成されたカルテットです。第一ヴァイオリンのシュミュエル・アシュケナージ以外のメンバーは、全て入れ替わって構成されています。(第二ヴァイオリンのタッケは、アンサンブル・モデルンから、またチェロのジョンソンはピッツバーグ響から加わったそうです。)私自身、このカルテットを聴くのは、CDを含めても初めてですが、チェロの硬めで力強い響きの上に、細めの線で美しく歌う二つのヴァイオリンがのせられて、温かみや響きの厚みを感じさせる音楽を聴かせてくれました。
最も興味深い演奏だったのは、一曲目のヤナーチェクの「ないしょの手紙」です。この曲は、ヤナーチェクの運命の女性とも言える、いわゆる「人妻」のカミラへ綴った手紙(十年間送り続けたそうですが。)に由来して作曲されたそうで、音楽もその彼の「恋心」を明け透けに見せるような表現が散見されます。メロドラマ風の甘いリズムから始まり、時には激しい求愛が、そしてまたある時には二人の愛が達成されることへの期待感を思わせるメロディーが折り重なって進みます。二人の愛の囁きのようなピアニッシモの美しい表現が聴こえてきたかと思いきや、突如破滅的な、想いを掻き乱されるような炸裂の響きが交錯し、ヤナーチェクの許されない恋が、これでもかと言う程哀愁を漂わせながら流れていきました。
フェルメールカルテットは、機敏で繊細な表情の味付けよりも、全体の響きの温かみの方により魅力を感じます。滑らかで艶やかとまではいきませんが、どのパートも比較的明晰な音で、音楽の構造をハッキリと示してくれたのは好印象でした。他の二曲では、「ラズモフスキー第一番」に軍配が上がると思います。シューベルトはもう一踏み込み欲しいように思いました。
曲 ヤナーチェク/弦楽四重奏曲第2番「ないしょの手紙」
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲作品59「ラズモフスキー第1番」
シューベルト/弦楽四重奏曲作品168から「第1、第2、第4楽章」
演奏 フェルメール弦楽四重奏団
最近、じっくりとクラシック音楽を聴くことが少ないのですが、今日は久しぶりに「ベストオブクラシック」に耳を傾けてみることにしました。録音は、今年四月、フェルメール四重奏団が紀尾井ホールで行った演奏会の模様で、ヤナーチェクなどの比較的有名な弦楽四重奏曲が三曲ほど演奏されていました。(シューベルトは時間の都合で第三楽章がカット。)
フェルメール弦楽四重奏団は、1969年のマールボロ音楽祭にて結成されたカルテットです。第一ヴァイオリンのシュミュエル・アシュケナージ以外のメンバーは、全て入れ替わって構成されています。(第二ヴァイオリンのタッケは、アンサンブル・モデルンから、またチェロのジョンソンはピッツバーグ響から加わったそうです。)私自身、このカルテットを聴くのは、CDを含めても初めてですが、チェロの硬めで力強い響きの上に、細めの線で美しく歌う二つのヴァイオリンがのせられて、温かみや響きの厚みを感じさせる音楽を聴かせてくれました。
最も興味深い演奏だったのは、一曲目のヤナーチェクの「ないしょの手紙」です。この曲は、ヤナーチェクの運命の女性とも言える、いわゆる「人妻」のカミラへ綴った手紙(十年間送り続けたそうですが。)に由来して作曲されたそうで、音楽もその彼の「恋心」を明け透けに見せるような表現が散見されます。メロドラマ風の甘いリズムから始まり、時には激しい求愛が、そしてまたある時には二人の愛が達成されることへの期待感を思わせるメロディーが折り重なって進みます。二人の愛の囁きのようなピアニッシモの美しい表現が聴こえてきたかと思いきや、突如破滅的な、想いを掻き乱されるような炸裂の響きが交錯し、ヤナーチェクの許されない恋が、これでもかと言う程哀愁を漂わせながら流れていきました。
フェルメールカルテットは、機敏で繊細な表情の味付けよりも、全体の響きの温かみの方により魅力を感じます。滑らかで艶やかとまではいきませんが、どのパートも比較的明晰な音で、音楽の構造をハッキリと示してくれたのは好印象でした。他の二曲では、「ラズモフスキー第一番」に軍配が上がると思います。シューベルトはもう一踏み込み欲しいように思いました。
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