クリスティの華美で端麗な「パリ交響曲」

ベルリン・フィル演奏会(5) NHK-FMベストオブクラシック(8/19 19:20~)

曲 ハイドン/交響曲第97番ハ長調(ヤンソンス指揮)
  モーツァルト/交響曲第31番ニ長調(クリスティ指揮)
  シューベルト/交響曲ニ長調からアンダンテ(ラトル指揮)
  ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調(ラトル指揮)

演奏 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

今週の「ベストオブクラシック」は、ベルリン・フィルの特集だったようですが、その最終日となった今日の放送は、ヤンソンス、クリスティ、ラトルの三人の指揮者による「ウィーン古典派」の競演でした。それぞれの指揮者の個性が素直に出そうな興味深いプログラムです。久々にラジオに耳を傾けてみました。

「ヤンソンスとハイドン」という組み合わせは、少々意外な印象を受けますが、演奏自体は実に丁寧着実と言えるような内容だったと思います。印象に残った第2楽章では、一つ一つのフレーズを強めに繰り返し、デュナーミクはやや大きめの方向に伸び、ゆったりとした流れで全体の構造を提示します。時折、低音部重視の、粘っこく突き上げるような音のなぞり方は、結果としてハイドンには似つかないような重厚感を与えていましたが、その辺はヤンソンスならではの工夫なのかもしれません。

一転してクリスティによる「パリ交響曲」は、音を細かく砕いてサッとまいたような颯爽感と、華美で祝典的な雰囲気、(もちろん、この曲ならではの要素もありますが。)そして小気味良いリズムが印象的でした。細かいパッセージにも注意が払われ、弦の切れ味も、それにそっと合わせるような木管も良好。同じオーケストラでも、指揮者が違うだけでこうも表現が異なることに、当たり前ながら改めて気がつかされます。古典派なら私は断然こちらの表現を好みます。特に第3楽章のアレグロはまさに疾風。単純な上昇音階の心地よさが心を洗います。

最後は、音楽監督のラトルが振ったベートーヴェンの交響曲第四番です。第一楽章の序奏部は暗鬱な響きで、これは重厚長大路線なのかと思わせますが、その後はやや崩れ気味ながらもギアーが入って加速していきます。響きにあまり膨らみがなくて平板に聴こえてくるのが気になりましたが、裏を返せば、それだけ凝縮された音ということにもなるのでしょうか。オーケストラがラトルの即興的な指示に喰らいつく。そんな光景が目に浮かぶようです。

第3楽章はかなり個性的でした。室内楽と大管弦楽を同時に操っているかのような、極めて幅の広い表現で、音楽に勢いとうねりを与えます。木管にスポット当てて柔らかく響きを作ったと思いきや、再び弦でゴリゴリと押してくる。妙に分裂した印象を受けます。元々曲想が目まぐるしく変化する第4楽章も同様で、その目まぐるしさをさらに強調してきます。リズム感の良さこそラトルならではと言った感もありましたが、私としてはどこか違和感が残る演奏だったようにも思います。どうでしょうか。
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