狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

尋常小学算術書

2006-12-15 21:15:32 | 本・読書
『サイタ サイタ サクラ ガ サイタ』教科書のことをボクがブログに書いたら 〝 読書の神様〟と小生が尊敬してやまないVIVA先生から、
「そうですか (VIVA) 先輩。サイタ サイタ サクラ ガ サイタ うろ覚えですが、どこかで聞いたような。ありがとうございます。読んでみます。」というコメントを頂いた。

ボクは、「その編者は、文部省図書監修官井上赳とされているようですが、そのころの事情を書いた本に『サイタ サイタ サクラ ガ サイタ』藤富康子 朝文社1990年 があります。」
とご返事を書いて差し上げた。
この本(藤岡康子著)には、国語読本ばかりでなく、何かもう一つ気になる当時の「算術書」について、簡単ながら言及があったので、VIVAさんが、綿密に検証される前に、その抜粋を引用してみたい。
 
>運動会の玉入れ競争の絵に始って全巻文字なし。絵本のようにたのしくきれいな『尋常小学算術』第一学年児童用上は、昭和9年(1934年)12月発行され、翌10年4月、新入学の1年生より使用された。
 若葉のような緑色の表紙に、オレンジ色の例の「かざぐるま」に見える三角形の図形がくっきり描かれて、これまでの黒表紙の算術書とはまるっきり違った明るい印象の教科書で、「算術の絵本」といった感じのする一冊。他の絵本に比べて値段も安いところから、学齢前の幼児を持つ母親たちが競ってこの本を買い求めてわが子に与えるなど、一般の人たちにもたいへんな反響をよんで、人気の教科書であった。定価は九銭。
 黒表紙では一・二年生用の算術書はなかったので、上級の児童たちの羨望はいうまでもない。
しかし、サクラ読本もそうであったように、世間は喝采ばかりは贈らぬもので、まず実際の場で扱う教師たちから声が挙がった。

―燐寸ノサキノ薬品ノアル部分ハ、コレヲトッテ挿シ絵ニ入レヨ。
―ツツジノ花ニ「モンシロ蝶」ハ、フサワシクナイ。「アケハ蝶」ニセヨ。
―上巻ハ、アマリニ同ジヨウナコトヲクリカエスコトニナッテ、カエッテ興味ヲソグ。児童ハ、マタ遊戯カ?ソンナコトヲセンデモ2+3=5トヤッテモライタイ、トイウヨウナ感ジヲモツ。
―時計ハ、ドノ程度ノ要求カ知ラヌガ、田舎ノ子ドモニ少シ無理ナヨウダ。ナニブン田舎デハ時計ナド家庭ニハナクテ、鶏ノ鳴クコト、太陽ニヨル影ナドノコトカラ時刻ヲ知ルカラ、1年生デハ一般ニ無理デアル。
―アノ教科書ヲ複式教授ニ用イヨウトスレバ、ドウスレバヨイカ、カコトニ困ル。日本ノ現状デハ複式教授ヲオコナッテイル所ソウトウ多イノデアルカラ、コノ点ニツイテモ考慮シテ欲シイ。
―コレカラ二年用上巻ナドヲ出版サレルニハ、モット早クシテモライタイ。デナイトジュウブンナ準備ヲスル暇モナクテ新学期ヲ迎エネバナラナイ。