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十二月廿一日。晴。午後西班牙公使館崖下山谷町の混堂に浴す。若き独逸人二人の入来を見る。配給の悪石鹸にて浴槽に入る前足を能く洗ふ。是西洋人の習慣成。余たまたまこれを見てむかしミシガンの学窓に在りし時の事を思出しぬ。されどこの思出も今は却て涙の種成。夜九時頃警報あり。
昭和19年の今日の荷風散人は何を書いているのかと荷風全集を引っ張り出して、「断腸亭日乗」をめくって書き記した。
偶然今朝(23日記す)朝日新聞「天声人語」は、こんな書き出しで、世評コラムを書いている。
>永井荷風の日記「断腸亭日乗」には、税金に関する記述が繰り返し出てくる。税務署の指摘の細かさや厳しさについても記す。「楊枝の先にて重箱のすみをほじくるとは実にかくの如きことを謂ふなり」(『荷風全集』岩波書店)。
昭和6年の日付だから70年以上も前だが、この感想には、そう古びた感じがしない。納税は憲法で定められた国民の義務だが、いつの世にも税の悩みは尽きないのだろう。<