狸便乱亭ノート

抽刀断水水更流 挙杯消愁愁更愁
          (李白)

上様のお供で

2006-05-30 21:40:50 | 日録

ウチの上様、朝からご機嫌斜めなり。目を覚まし、壁に掛かっているカレンダーを見るに、眼鏡をかけても全く見えないというのだ。

近くにある大學病院は、眼科にかけてはこの地方では、人口膾炙の誉高いのだが、兎に角混む。駐車場へ行くだけでも、とんでもない遠くの方に回される。
 そしてよい医者に出会いば幸いだが、これでも医者なんだっぺか?と思う若いアンちゃん(学生?)医師が診る可能性もあるので、掛かりつけ医師の紹介状が必要となる。そうなると今日1日オレもオシャカになってしまう…。

 そういう理由から、とりあえず掛かり付けであるT市の町医者に行ってみた。
 午後手術があるので外来診察は午前中のみとの貼り紙があった。しかしそれほど混み合っていなかったので助かった。

 待合室で上様の診察を待っている間、持って行った角川文庫「堕落論」坂口安吾を居眠りしながら読んだ。
Lさんがブログで引用した項はすぐ見つかった。

「続堕落論」である。
Lさんは、
「…朕の命令に服してくれという。すると国民は泣いて、外ならぬ陛下の命令だから、忍びがたいけれども忍んで負けよう、と言う。嘘をつけ!嘘をつけ!嘘をつけ!」の2行しか引用していないので、ボクがもう少し引用を延ばしてみたい。

>我ら国民は戦争をやめたくて仕方がなかったのではないか。竹槍をしごいて戦車に立ちむかい、土人形のごとくにバタバタ死ぬのが厭でたまらなかったのではないか。戦争の終わることを最も切に欲していた。そのくせ、それが言えないのだ。そして大義名分といい、また天皇の命令という。忍びがたきを忍ぶという。

 
 坂口安吾の本は、若いとき太宰治や織田作之助とともに随分読んだと思っていたが、長い間ご無沙汰して、読み返して見ると、今の時代にピッタリの書だ。
 特にこの「堕落論」は良い。そしてさらに読みやすい平易は文体だ。

 新ためて読み返して見たいと思う1冊である。