風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

春愁

2023-02-23 11:40:43 | 俳句、川柳、エッセイ

     春愁や眠れぬ夜のモーツアルト

  

    長い不眠症である。

   まだ十代の娘のころからである。

 隣室で父は晩酌をしている。ピーナッツをかじる音が耳について眠れない。

父親にピーナッツを食べるなとは言えない。悶々としていたら涙が出てきた。

布団をかぶって泣いていた。

 安普請の家で、隣の様子に気づいた父は、年ごろの娘がしのび泣くとは何事かと仰天した。

本人に訊けず、母親に尋ねたそうである。「なにかあったの?」と母親が訊く。

 いやあ、お父さんがいつまでもピーナッツ食べてて眠れなかった―と言って一件落着。

 

 今は誰もわたしの眠りを邪魔するものはいないが、静かすぎて眠れない。

耳元にCDをおいてモーツアルトのピアノ曲を聴きながら眠気が来るのを待つ。

交響曲はいきなりジャジャーンとくるから不眠対策には向かない。べートーベンは少し暗い。

モーツアルトの穏やかさ、ほどよい明るさが好きである。

 


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