十年も前の話だから、もう時効と思って許してもらおう。
ご近所の娘さん夫婦に、離婚話が持ち上がった。
母親である私の知人は、ざっくばらんな人だったから、原因も話してくれたのだが、それは忘れた。
覚えているのは、ある日、婿さんと娘さんが親の家に集まって、深刻な話合いがされたというその時の話である。
娘は、もう、どうしても別れるっていうんですよ、と言う。
で、婿さんは何て言ってるんですか、と訊くと、それが、どうしても別れないって。
まあ、あんな鬼瓦みたいな顔して、思いつめたように、××子を愛してますって、こういうんですよ。
その婿さんの顔を知ってる私は、おかしくて笑いを堪えるのに、困った。
別に鬼瓦みたいとは思わないし、やや厳つい顔は中々男らしくて、好もしかった。
でも、あの人がそんなことを言うのかしら、と思ったら、やっぱりおかしかった。
映画やドラマの中でなく、ふつうの生活の中で、愛してるんです、という言葉が、おかしくなくて、似合う男って、そんなにいるのかしらと思った。
いきさつは忘れたのに、妙にそこだけ、はっきり覚えていて、今でもときどきその婿さんを見かけるたびに思い出して、その場面を想像してしまう。
ご夫婦はその後、円満で、仲良く散歩などされている。
もう、それを話した奥さんも、きっとそんなことは忘れているだろうし、鬼瓦と言われた本人は、まさかそんなことが喋られていることも知らないだろう。
そう思うと、今もおかしい。
ご近所の娘さん夫婦に、離婚話が持ち上がった。
母親である私の知人は、ざっくばらんな人だったから、原因も話してくれたのだが、それは忘れた。
覚えているのは、ある日、婿さんと娘さんが親の家に集まって、深刻な話合いがされたというその時の話である。
娘は、もう、どうしても別れるっていうんですよ、と言う。
で、婿さんは何て言ってるんですか、と訊くと、それが、どうしても別れないって。
まあ、あんな鬼瓦みたいな顔して、思いつめたように、××子を愛してますって、こういうんですよ。
その婿さんの顔を知ってる私は、おかしくて笑いを堪えるのに、困った。
別に鬼瓦みたいとは思わないし、やや厳つい顔は中々男らしくて、好もしかった。
でも、あの人がそんなことを言うのかしら、と思ったら、やっぱりおかしかった。
映画やドラマの中でなく、ふつうの生活の中で、愛してるんです、という言葉が、おかしくなくて、似合う男って、そんなにいるのかしらと思った。
いきさつは忘れたのに、妙にそこだけ、はっきり覚えていて、今でもときどきその婿さんを見かけるたびに思い出して、その場面を想像してしまう。
ご夫婦はその後、円満で、仲良く散歩などされている。
もう、それを話した奥さんも、きっとそんなことは忘れているだろうし、鬼瓦と言われた本人は、まさかそんなことが喋られていることも知らないだろう。
そう思うと、今もおかしい。
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