風子ばあさんにも一つだけ自慢できる肉体的な秘所がある。
足の裏である。
風子の足は大きい。
脱いだ靴は、男の靴と見まごうくらい大きい。
甲高で、足そのものは不細工きわまりない。
けれども、神様もひとつくらいご褒美をくれている。
足の裏だけは綺麗である。
風子ばあさんの入浴は、カラスの行水よろしく手早い。
足の裏など擦りもしない。
特別な手入れなど何もしていない。
それなのに、身体中で一番美しい。
うっすらとピンク色でしみひとつない。
朝起きたときなど、靴下を穿く前に、
いやあ、きれいな足裏だなあとほれぼれ眺める。
いくらきれいでも、
足裏ばかりは人さまにお見せする機会がなくて残念である。
だが、待てよ……。
人さまにお見せすることもないが、
人さまの足裏もまたあらためて見たことがない。
ということは、ひょっとして、
足裏って、風子に限らず、みなさん美しいのかもしれない。
ああ、やだねえ、そうとは知らず、自分の足裏をうっとり眺めていたなんて。
大いに自慢していいですよ。
私のように魚の目だらけの人もいるんですから