風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

脱走

2012-08-07 09:29:58 | 家族
            友だちの舞子さんは、
        入退院を繰り返す病弱なご主人を抱えている。

 
     塩分制限、体重管理、舞子さんは献身的に夫の健康管理に気をくばる。
 
     つい先日も何度目かの入院生活から無事に帰宅したご主人の髪が伸びている。
        歩行も困難な夫を、車に乗せて、近所の床屋まで連れて行った。

         終わったら電話しなさい、迎えに来るからと、
            舞子さんは、いったん家に戻った。

             一時間たったが、連絡がない、
     一時間半たっても、なにも言ってこないので、舞子さんは青くなった。

     これまでにも出先で意識不明になって救急車のお世話になったことがある。
          気もそぞろに床屋へ迎えに行ったら、
          あら、さっき帰られましたよ、と言われた。

       床屋の前にはバス停があり、床屋の大将がなにげなく見ていたら、
           そこからひとりでバスに乗ったそうである。

               まあ!

 
         舞子さんは青ざめて携帯に電話したら、
           バスに乗りたかったんだよ、
     ひとまわりしたら帰るからとひそひそ声で告げたそうである。
 
        その一時間後、少し疲れたような足取りながら、
     無事に帰宅したそうだが、舞子さんはカンカンに怒っていた。

     思わず、うちのタマもよく脱走したもんねえ、と言って睨まれた。