「部室」を出て、まだ続いている演奏を背後に聴きつつ二階に降り、校舎の両端まで行き来しました。二人の娘さんは、戦前の校舎建築に入る事自体が初めてだそうで、教室や廊下のしつらえ、たたずまい、雰囲気の全てが珍しく興味深かったようです。色んな事を質問してきましたので、分かる範囲で答え、解説をまじえました。
特にマユさんは「登録文化財」という概念に関心があるようで、国宝や重要文化財とはどう違うのか、登録文化財になると何が変わるのか、等と訊ねてきました。そこで、文化財保護法について簡潔に説明した後、その1996年の法改正によって新設された登録制度があること、その基本となる原簿に登録されたものが「登録文化財」であること、対象が建造物に限られていたが2004年の法改正によって建造物以外の有形文化財にも拡大されたこと、を話しました。
そして、従来の指定文化財(国宝や重要文化財など)よりも、規制や制約が比較的緩和されているため、建造物であれば、従来のままの使用が出来る、ということを話しました。豊郷小学校旧校舎群も、「登録文化財」であるから、役場機能の一部を担った施設として利用出来るわけで、これが重要文化財になっていれば、完全保存、原状復原維持、という鉄則に則って施設の再利用は著しく制限されること、文化財資料としての保管展示公開以外の使用形態は認められないこと、などを説明しました。
「それだと、ここが重要文化財になっていたとしたら、こういうイベントとか、酬徳記念館のグッズ展示とか、唱歌室のライブとかは、全部ダメになるわけですか」
「ダメとまではいきませんが、内容的には非常に制限されますし、何よりも国つまり文化庁の裁可が必要です」
「それって、難しいんですか?」
「場合によるでしょうね。完全保存、原状復原維持、という鉄則に反しないのであれば、普通は県レベルの裁量で判断して決裁される筈です。この場合の最終判断者は県の教育長ですかね」
「ああ、行政三役に次ぐポストですよね」
「はい。文化財行政は教育委員会が社会教育の一環として担当しますからね。遺跡の調査とか発掘とかも教育委員会の管轄です。だから教育委員会の活動状況をみれば、その文化財行政のレベルが分かるわけです」
「豊郷町の文化財行政のレベルは高いんですか?」
「残念ながら」
「どうしてですか?こんな立派な豊郷小学校という登録文化財がありますのに・・・」
「文化財があれば良い、というものではないんです。文化財を後世に伝えるためにどれだけの努力をして、歴史教育資料の一環として地域住民への普及と還元につとめているか、ということです」
「はあ・・・」
「例えば、文化財行政の基礎作業として、文化財台帳の作成と公開普及、というのがある。地元住民が気軽に手にとって読むことが出来るようなガイドブックとか、小冊子の形で、図書館などに常備されることが基本です。豊郷小学校だけでなく、豊郷町に伝わっている考古、美術、工芸、古文書、天然記念物などをリストアップして記録している図版つきの資料であることが望ましいのですが、豊郷町はいまだにそういうガイドブックすら作っていない。それ以前に、自治体史としての豊郷町史すら編纂していないのです。論外と言うべきです」
「やっぱり、あれですか、汚職疑惑とかで町長と住民が対立してリコールとかやってる騒動が大きいんですかね」
「大きいかどうかは分かりませんが、まっとうな形でちゃんと機能している自治体なら、そんな騒動は起こらないもんだと思いますがね・・・」
話が終わったところで、廊下でのねんどろいど「わかばガールズ」撮影を試みました。廊下の床に並べるので、どうしてもカメラを床に置かざるを得ず、うつ伏せスタイルで寝転んで撮りました。
二人の娘さんは「それはちょっと無理です。撮れないです」と苦笑していました。「済みませんが撮ってもらえませんか」と、それぞれのスマホを渡されましたので、数枚ずつ撮ってあげました。
廊下は、本来ならば陽光が差し込んで明るい筈ですが、この日は終始曇りであったため、ちょっと薄暗い雰囲気でした。簡易レフ板を持ってくれば良かったな、と思いました。
ですが、このアングル、この背景、この臨場感に勝るものはありません。豊郷ならばでの、最高最強のフィギュア写真である、と思います。
一階に降りて、お馴染みのオブジェを撮影しました。
イベントはまだ続いていましたが、私たちは一時間余りの滞在で切り上げ、退出しました。あらかじめ当日の予定を知らせてあったのですが、二人の娘さんは同行を希望してきましたので、その後もずっと同道することになりました。
校門前の平沢唯。マユさんが「唯ちゃん、バイバーイ」と手を振っていました。
近江鉄道で彦根まで移動してJRの新快速に乗り換え、一気に京都へ行って奈良線に乗り換え、上図の木幡駅まで行きました。
駅の斜め向かいには、京都アニメーションの本社が建ちます。御覧のように「響け!ユーフォニアム」のポスター等が並んでいました。中に入ってみたいねー、とか話しましたが、もちろん中への立ち入りは出来ません。
駅の北に、道路をはさんで京都アニメーションの直営ショップがあります。上図のように、二人の娘さんは嬉しそうにショーウインドー等をのぞいてスマホで撮影していました。何かあるんですか、と近づいていくと、「響け!ユーフォニアム」の限定グッズ類が展示してありました。
二人の娘さんは共に「響け!ユーフォニアム」の大ファンであるそうで、聖地巡礼も既に一通りやっているそうです。しかし、ここ宇治木幡のショップは初めてでしたので、この機会に関連限定グッズを色々と買いたかったのだそうです。
私自身は、去年の夏に旧店舗のほうへ行きましたので、移転新装していることを最近に知りました。上図の新店舗はスペースも倍ぐらいになって、ゆったりした感じになっていました。ディスプレーコーナーもあり、屋外催事にも使えるテラススペースがあったりで、色々なイベントも可能なようです。
色々と購入しているお二人を横目に、けいおん関連の販売品を探してみましたが、生動画の原画と缶バッジしか見当たりませんでした。
周知のように、「響け!ユーフォニアム」はいまも新作が出ている、旬のアニメ作品の一つです。京都アニメーションスタンダードの細やかな作りや深い演出ぶりは、「けいおん」よりも洗練されたものに仕上がっており、描画技術およびグラフィック効果の向上振りがうかがえます。
二人の娘さんは、「響け!ユーフォニアム」をテレビで見て京都アニメーション作品のファンになり、ついで「らきすた」や「日常」に親しみ、その後で去年の「けいおん」の再放送を見た、という成り行きなので、一番親しんでいるのが「響け!ユーフォニアム」であるわけです。
それで、さっきまで豊郷に居たことが信じられないようなほどに、「響け!ユーフォニアム」の話ばかりしていました。
その後、お二人とは帰路も同じだったため、神戸三宮にこの11月にオーブンした駿河屋の新店舗にも立ち寄り、次いで夕食も楽しんでけいおんの話題で盛り上がりました。私が2009年からの放送をリアルで視聴し、2011年頃までのブーム全盛期を見てきたファンの一人だったと知るや、いろいろ質問してきてブームの様相を知りたがっていました。
そして、何度も「けいおんに出会うのが遅すぎましたー」と繰り返しては笑っていました。それから「響け!ユーフォニアム」の話になりましたが、今度は私が質問して色々教えて貰いました。
それで、機会があったら「響け!ユーフォニアム」の聖地巡礼やりませんか、と言われました。その舞台である宇治は、私の場合、大変によく知っている地域ですが・・・・。