大洗女子学園チームの戦車模型のおよび車輌のキットの選択理由や制作上のポイントなどについての現時点でのまとめです。ラストの今回は、アリクイさんチームの三式中戦車チヌ、レオポンさんチームのポルシェティーガーを取り上げましょう。
アリクイさんチームの搭乗車である日本の三式中戦車チヌは、ファインモールドより上画像の公式キットがリリースされています。キャラクターデカールももちろんついています。国産製品だけあってパーツの合いも良く、制作ガイドも見やすく分かり易いです。
こちらが公式キットの元キットです。周知のように、ファインモールドは日本陸軍の戦車や車輌のキットを積極的に品揃えしており、三式中戦車チヌもその一つでした。この戦車は、現存する一台が陸上自衛隊土浦駐屯地内武器学校に保管されており、これを参考にしてキット化が図られたということです。
ですが、ガルパン劇中では細部に幾つかの相違点がみられます。大部分はアニメCG化に伴う表現の簡易化または省略であるようなので、公式キットを組み立てる過程でこれらの箇所を修正するという流れになります。修正部分の多くは、車体後部と砲塔に集中しており、公式設定資料を参考にして出来るところまで手を入れてゆけばよいでしょう。でも、大洗女子学園チームの他のキットに比べれば微々たるもので、全体としては楽に作れると思います。
そのため、スラスラと組み立てていって、うっかり不要なパーツまでつけてしまった、というケースをネット上の制作レポートなどでよく見かけます。あらかじめ、不要なパーツをチェックしておく必要がありそうですね。
こちらは、レオポンさんチームの搭乗車、ポルシェティーガーです。プラッツから出されている公式キットで、ドラゴンのキットから色々取捨選択して中身を調整したうえで箱替えしたものだということです。しかし、そのまま組み立てると箱絵のガルパン仕様にはならず、同時に実際のポルシェティーガーとも異なる状態に仕上がるという、迷キットとして知られています。
なぜそうなったのかというと、ポルシェティーガーには試作型と実戦型の二タイプがあり、ガルパン仕様が前者に属するのに対し、プラッツの公式キットの元になったドラゴンの製品は後者を再現しているからです。ガルパン劇中の状態をきちんとリサーチしていれば、こういう妙な相違点はすぐに分かるはずですし、キットの部品に関しても見直しがなされてしかるべきですが、残念なことに、プラッツのキットからはそのような形跡が微塵も感じられません。もう少し、なんとかならなかったのでしょうか。
こちらが、ドラゴンの元キットです。箱絵からも分かるように、砲塔はティーガーⅠのそれと同じタイプで、装甲も張り増しされています。前面の形状などに強化装甲のパーツがみられます。こうした特徴を表すパーツを、そのままプラッツの公式キットに入れたりしているので、何も知らずに組み立てると、間違ってもガルパン仕様の試作型にならないわけです。
なので、ドラゴンのキットというのは、基本的にポルシェティーガーの実戦型を再現するべく作るキットだ、という基本認識をもっておくべきです。それを利用した公式キットを使うのであれば、ガルパン仕様の試作型への改造がどうしても必要になる、という認識で取り組んで色々チャレンジするのがベターではないでしょうか。
ポルシェティーガーのキットは、ドラゴンのほかに上画像のイタレリの製品があります。こちらは試作型を再現しており、箱絵のイメージもガルパン仕様に近いです。このイタレリのキットを買えば、ガルパン仕様に限りなく近い姿に仕上げられるようです。
しかし、残念ながら、販売流通量が殆ど無いために入手がとても困難になっており、私自身もキットの実物を見たことがありません。京都の模型専門店で聞くと、ここ数年入荷したことが無い、とのお話でした。
こうなると、ポルシェティーガーの場合は、プラッツの公式キットを購入するより他に選択肢が無いわけです。それで、私もプラッツの製品を購入しました。
公式キットをもってガルパン仕様を再現する場合、改造部分は大きく分けて三ヶ所あります。前部装甲、砲塔天板、後部エンジンパネル類、です。他のキットではよく指摘される車輪部分の改造が必要ないのが救いでしょう。
三ヵ所の改造箇所のうち、最も苦労するのは砲塔でしょうか。公式キットでは実戦型タイプなので、これを試作型に作り直すことになります。砲塔天板の中央にある、モヒカンと称される出っ張りの再現が必須となりますが、そのために砲塔天板の全てにわたってあちこち削ったりパテで成形したりする作業が必要になります。このモヒカンは主砲駐退機のスライドスペースを確保するための空間を構成しており、これに合わせる形で天板全体を改修したのが実戦型タイプです。
このモヒカン部分のパーツが、公式キットには入っていませんので、今までのモデラーさん達はプラ板やパテなどで苦労して自作されたようです。
こうしたモデラーさん達の批判を含めた不評の数々をやっと受け止めたのか、プラッツも上画像のグレードアップパーツを追加販売しています。こうしたパーツも出せるのであれば、公式キットの発表時に一緒に入れるべきだったと思います。
このグレードアップパーツは、前述の三ヵ所の改造箇所のうちの二ヶ所、前部装甲、砲塔天板の部分をカバーしています。ですが、これでも完全ではないので、改造の手間が無くなったわけではありません。前部装甲のうちでは上部の機銃マウントや操縦席窓パーツが一新されましたが、下部の装甲板パーツがありませんので、従来通りの改造が必要です。
続いて砲塔天板においては、モヒカンのパーツが追加されました。プラッツはこれでOKの積りでいるようですが、最も重要な特徴である天板のフラットさ、が依然として修正されていません。だから、これの改造は今までと変わりません。むしろ、グレードアップパーツのモヒカンをこれに合わせて修正する、という余計な作業が生まれます。
これらをふまえると、このグレードアップパーツは、あまり制作の助けにはなっていないようです。プラッツのスタッフ側が、ポルシェティーガーのキットをガルパン仕様に仕上げるプロセスを経験していないのでは、とさえ思えます。本気でやったら幾らでも修正点は見つかる、それらをきちんとフォローしよう、という気持ちがあったならば、グレードアップパーツの中身ももっと良いものになったんじゃないかと思いますね。
また、前記の改造とあわせて、エンジングリルのメッシュ部分の追加も必要です。元のドラゴンのキットにはこのメッシュ部分を含むエッチングパーツが付属していたのですが、プラッツの公式キットはこれも除いてしまっているので、改めてエッチングパーツを購入するか、適当な品を使って自作するかのどちらかになります。前者のケースではポーランド・アベール社の1/35 ポルシェティーガー用 エンジングリル (ドラゴン用)パーツなどが利用出来ます。後者では、身近なところではダイソー等で売っている粉ふるいのメッシュを利用したケースが報告されています。そのあたりはお好みで、ということになりましょう。
全体的には、このポルシェティーガーのキットが、大洗女子学園チームの戦車模型のおよび車輌のキットのなかでは最も手間がかかるように思われます。これに続くのが、カメさんチームの38 (t) 戦車だろう、と私は推察していますが、そのあたりは実際に作ってみたうえで改めて検証してみたいと思います。
なお、当初の計画では大洗女子学園チームの戦車模型のおよび車輌のキットは12種でしたが、さらに1種、九四式六輪自動貨車一輌を加えたことを以前の記事で述べましたので、現時点では13種になりました。
この九四式六輪自動貨車に関しては、所属チームが不明であること (たぶんレオポンさんチームかもしれません) と、私自身がまだキットを実見も購入もしていないこと、等の事情により、紹介記事は後日に期したいと思います。 (了)
アリクイさんチームの搭乗車である日本の三式中戦車チヌは、ファインモールドより上画像の公式キットがリリースされています。キャラクターデカールももちろんついています。国産製品だけあってパーツの合いも良く、制作ガイドも見やすく分かり易いです。
こちらが公式キットの元キットです。周知のように、ファインモールドは日本陸軍の戦車や車輌のキットを積極的に品揃えしており、三式中戦車チヌもその一つでした。この戦車は、現存する一台が陸上自衛隊土浦駐屯地内武器学校に保管されており、これを参考にしてキット化が図られたということです。
ですが、ガルパン劇中では細部に幾つかの相違点がみられます。大部分はアニメCG化に伴う表現の簡易化または省略であるようなので、公式キットを組み立てる過程でこれらの箇所を修正するという流れになります。修正部分の多くは、車体後部と砲塔に集中しており、公式設定資料を参考にして出来るところまで手を入れてゆけばよいでしょう。でも、大洗女子学園チームの他のキットに比べれば微々たるもので、全体としては楽に作れると思います。
そのため、スラスラと組み立てていって、うっかり不要なパーツまでつけてしまった、というケースをネット上の制作レポートなどでよく見かけます。あらかじめ、不要なパーツをチェックしておく必要がありそうですね。
こちらは、レオポンさんチームの搭乗車、ポルシェティーガーです。プラッツから出されている公式キットで、ドラゴンのキットから色々取捨選択して中身を調整したうえで箱替えしたものだということです。しかし、そのまま組み立てると箱絵のガルパン仕様にはならず、同時に実際のポルシェティーガーとも異なる状態に仕上がるという、迷キットとして知られています。
なぜそうなったのかというと、ポルシェティーガーには試作型と実戦型の二タイプがあり、ガルパン仕様が前者に属するのに対し、プラッツの公式キットの元になったドラゴンの製品は後者を再現しているからです。ガルパン劇中の状態をきちんとリサーチしていれば、こういう妙な相違点はすぐに分かるはずですし、キットの部品に関しても見直しがなされてしかるべきですが、残念なことに、プラッツのキットからはそのような形跡が微塵も感じられません。もう少し、なんとかならなかったのでしょうか。
こちらが、ドラゴンの元キットです。箱絵からも分かるように、砲塔はティーガーⅠのそれと同じタイプで、装甲も張り増しされています。前面の形状などに強化装甲のパーツがみられます。こうした特徴を表すパーツを、そのままプラッツの公式キットに入れたりしているので、何も知らずに組み立てると、間違ってもガルパン仕様の試作型にならないわけです。
なので、ドラゴンのキットというのは、基本的にポルシェティーガーの実戦型を再現するべく作るキットだ、という基本認識をもっておくべきです。それを利用した公式キットを使うのであれば、ガルパン仕様の試作型への改造がどうしても必要になる、という認識で取り組んで色々チャレンジするのがベターではないでしょうか。
ポルシェティーガーのキットは、ドラゴンのほかに上画像のイタレリの製品があります。こちらは試作型を再現しており、箱絵のイメージもガルパン仕様に近いです。このイタレリのキットを買えば、ガルパン仕様に限りなく近い姿に仕上げられるようです。
しかし、残念ながら、販売流通量が殆ど無いために入手がとても困難になっており、私自身もキットの実物を見たことがありません。京都の模型専門店で聞くと、ここ数年入荷したことが無い、とのお話でした。
こうなると、ポルシェティーガーの場合は、プラッツの公式キットを購入するより他に選択肢が無いわけです。それで、私もプラッツの製品を購入しました。
公式キットをもってガルパン仕様を再現する場合、改造部分は大きく分けて三ヶ所あります。前部装甲、砲塔天板、後部エンジンパネル類、です。他のキットではよく指摘される車輪部分の改造が必要ないのが救いでしょう。
三ヵ所の改造箇所のうち、最も苦労するのは砲塔でしょうか。公式キットでは実戦型タイプなので、これを試作型に作り直すことになります。砲塔天板の中央にある、モヒカンと称される出っ張りの再現が必須となりますが、そのために砲塔天板の全てにわたってあちこち削ったりパテで成形したりする作業が必要になります。このモヒカンは主砲駐退機のスライドスペースを確保するための空間を構成しており、これに合わせる形で天板全体を改修したのが実戦型タイプです。
このモヒカン部分のパーツが、公式キットには入っていませんので、今までのモデラーさん達はプラ板やパテなどで苦労して自作されたようです。
こうしたモデラーさん達の批判を含めた不評の数々をやっと受け止めたのか、プラッツも上画像のグレードアップパーツを追加販売しています。こうしたパーツも出せるのであれば、公式キットの発表時に一緒に入れるべきだったと思います。
このグレードアップパーツは、前述の三ヵ所の改造箇所のうちの二ヶ所、前部装甲、砲塔天板の部分をカバーしています。ですが、これでも完全ではないので、改造の手間が無くなったわけではありません。前部装甲のうちでは上部の機銃マウントや操縦席窓パーツが一新されましたが、下部の装甲板パーツがありませんので、従来通りの改造が必要です。
続いて砲塔天板においては、モヒカンのパーツが追加されました。プラッツはこれでOKの積りでいるようですが、最も重要な特徴である天板のフラットさ、が依然として修正されていません。だから、これの改造は今までと変わりません。むしろ、グレードアップパーツのモヒカンをこれに合わせて修正する、という余計な作業が生まれます。
これらをふまえると、このグレードアップパーツは、あまり制作の助けにはなっていないようです。プラッツのスタッフ側が、ポルシェティーガーのキットをガルパン仕様に仕上げるプロセスを経験していないのでは、とさえ思えます。本気でやったら幾らでも修正点は見つかる、それらをきちんとフォローしよう、という気持ちがあったならば、グレードアップパーツの中身ももっと良いものになったんじゃないかと思いますね。
また、前記の改造とあわせて、エンジングリルのメッシュ部分の追加も必要です。元のドラゴンのキットにはこのメッシュ部分を含むエッチングパーツが付属していたのですが、プラッツの公式キットはこれも除いてしまっているので、改めてエッチングパーツを購入するか、適当な品を使って自作するかのどちらかになります。前者のケースではポーランド・アベール社の1/35 ポルシェティーガー用 エンジングリル (ドラゴン用)パーツなどが利用出来ます。後者では、身近なところではダイソー等で売っている粉ふるいのメッシュを利用したケースが報告されています。そのあたりはお好みで、ということになりましょう。
全体的には、このポルシェティーガーのキットが、大洗女子学園チームの戦車模型のおよび車輌のキットのなかでは最も手間がかかるように思われます。これに続くのが、カメさんチームの38 (t) 戦車だろう、と私は推察していますが、そのあたりは実際に作ってみたうえで改めて検証してみたいと思います。
なお、当初の計画では大洗女子学園チームの戦車模型のおよび車輌のキットは12種でしたが、さらに1種、九四式六輪自動貨車一輌を加えたことを以前の記事で述べましたので、現時点では13種になりました。
この九四式六輪自動貨車に関しては、所属チームが不明であること (たぶんレオポンさんチームかもしれません) と、私自身がまだキットを実見も購入もしていないこと、等の事情により、紹介記事は後日に期したいと思います。 (了)