山本藤光の文庫で読む500+α

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桐光学園+ちくまプリマー新書編集部・編『何のために「学ぶ」のか・中学生からの大学講義1』(ちくまプリマー新書)

2018-03-06 | 書評「て・と」の国内著者
桐光学園+ちくまプリマー新書編集部・編『何のために「学ぶ」のか・中学生からの大学講義1』(ちくまプリマー新書)

大事なのは知識じゃない。正解のない問いに直面したときに、考え続けるための知恵である。変化の激しい時代を生きる若い人たちへ、学びの達人たちが語る、心に響くメッセージ(「BOOK」データベースより)

◎知の宝庫

『中学生からの大学講義』(ちくまプリマー新書)は。全5巻のシリーズです。全5巻の内容は次のとおりです。

〇何のために「学ぶ」のか・中学生からの大学講義1
〇考える方法・中学生からの大学講義2
○科学は未来をひらく・中学生からの大学講義3(
○揺らぐ世界・中学生からの大学講義4
○生き抜く力を身につける・中学生からの大学講義5

本シリーズは桐光学園とちくまプリマー新書編集部の共同編集です。本書の趣旨を紹介させていただきます。

――知の最前線でご活躍の先生方を迎え、大学でなされているクオリティのままに、「学問」を紹介する講義をしていただき、さらに、それらを本に編みました。各々の講義はコンパクトで、わかりやすい上に、大変示唆に富み、知的好奇心をかきたてるものとなっています。(巻頭「今こそ、学ぶのだ!宣言」より)

丹念に全5巻を読みました。1巻には7、8人の講義が収載されています。私は毎朝、1講義ずつを読むことに決めました。1講義はほぼ1時間くらいで、学ぶことができます。これほど多岐にわたった、学習をする機会はありませんでした。目からウロコの連続でした。タイトルは「中学生からの」となっていますが、「大人のための」とした方がよい充実ぶりです。

まさに、知の宝庫といった装いのシリーズに、感激しました。

◎講師の薦める本

シリーズの先頭は時の人になった、外山滋比古(「山本藤光の文庫で読む500+α」推薦作『思考の整理学』ちくま文庫)の「知ること、考えること」です。この講義がすばらしい。全5巻のシリーズへの期待が、一挙にふくらみました。いきなり、こんな話ではじまります。

―― 一〇〇点がとれる人が一番すごくて、七〇点とか六〇点ぐらいではダメだと考える。しかしそれは旧式の考えだ。(外山滋比古)

そしてこのようにつづけます。
――すべての人間は天才的な能力を持って生まれてくるのである。ほとんどすべての子どもが例外なく、素晴らしい記憶力、素晴らしい感覚力を持っている。ところが残念なことに、その赤ん坊を育てる周りの大人たちが「人間を育てる」ことをまるで知らない。。(外山滋比古P20)

また前田英樹(「山本藤光の文庫で読む500+α」推薦作『独学の精神 』ちくま新書)は、力強いメッセージを発信してくれています。

――生涯愛読して悔いのない本を持ち、生涯尊敬して悔いのない古人を心に持つ。これほど強いことはないのではないかと、私などは思っている。こういうものは独学によってでなければ得られない。(前田英樹P50)

本書の優れている点は、講義のあとに「若い人のための読書案内」がつけられていることです。いずれも納得の推薦作です。ちなみに外山滋比古は『寺田寅彦随筆集』(岩波文庫)、夏目漱石『坊ちゃん』、『内田百閒随筆』を、前田英樹は内村鑑三・鈴木範久『代表的日本人』(岩波文庫)、柳宗悦『工藝の道』(講談社学術文庫)、西岡常一『木に学べ』(小学館文庫)を推薦しています。

講義で学び心が動いたら、推薦本を買い求める。なんとも幅広い学びの場を提供してくれています。

毎朝の1時間を、身がひきしまる思いで過ごしました。とてもよいシリーズですので、ぜひ毎朝の修業にご活用ください。
(山本藤光:2015.12.23初稿、2018.03.06改稿)

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