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町おこし042:私たちにもいわせて

2018-03-10 | 小説「町おこしの賦」
町おこし042:私たちにもいわせて
――『町おこしの賦』第2部:痛いよ、詩織!

 新聞部編集会議は続いている。開け放された窓から、せわしないセミの声が聞こえている。風はまったく入らない。
「では二面の特集は、今回からシリーズをスタートさせる『私たちにもいわせて』です。今回は標茶町の二大プロジェクトの、現状を取り扱います。町長のインタビューは、私が行いました。時間がなくて、何も取材できませんでした。だから、インタビュー記事はなし。町長と面談、くらいに止めたいと思います。野口くんと田村さん、現地レポートの発表をお願いします」

「ぼくは、『会社の博物館』へ行ってきました。日曜日の昼どきだというのに、お客さんはゼロ。館長の宮瀬さんに、インタビューをしました。入館者は現在、月平均で百人ほどです。研修室の利用は、月に五件ほどあるくらいです。売店の売り上げも低調で、いわば閑古鳥が鳴いている状態です」

 野口猛の報告が終り、愛華は田村睦美へ報告を求めた。
「私は『日本三大がっかり名所』をめぐってきました。ちょうど釧路から、婦人会の団体十二人がきていました。一緒に歩きましたが、みんな爆笑の連続で、結構受けていました。
高知のはりまや橋で記念写真を撮り、長崎のオランダ坂で一休みして、札幌の時計台まで、だいたい一時間ほどで回れます。時計台の売店の、高知や長崎や札幌の名産品には、みなさん満足していました。
食堂ではビールで乾杯したり、撮った写真を見せ合ったりと、にぎやかでした。ただみなさん、二度とこなくていいね、とおっしゃっていました。つまり、リピーターは望めないということです」

「野口くん、田村さん、ありがとうございます。会社の博物館は行ったことがないんだけど、どんなふうになっているの?」
「玄関を入ると、タイムレコーダーがあります。これが入館の記録です。一階には売店しかありません。二階は展示室で、古い会社の備品が展示されています。壁面は社員旅行の写真や朝礼の写真などが、展示されています。三階は企業に使っていただく、研修室になっています」
「なんだか、つまらなそうだな」
 報告を聞いて、恭二が口をはさんだ。
「ねらいは企業の研修に、活用してもらうことにあるのね。でも、閑古鳥が鳴いている。瀬口くんも見たことがないのなら、今度の日曜日に見学しない? 記事は足で書け。百聞は一見にしかず。ほかに行って見たい人、いる?」
 詩織が手を上げた。


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