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第18回口頭弁論~泊廃炉訴訟

2016年08月10日 | アーバンライフ
昨日午後3時20分から、札幌地裁第805号法廷で「泊廃炉訴訟」第18回口頭弁論が行われた。
傍聴希望者は、概ね80人ほど。抽選で62人が傍聴した。幸い、小生も傍聴できた。

開廷後、すぐ原告側の意見陳述が行われた。

今回は、原告の一人で、「泊原発廃炉をめざす会」の共同代表でもある市川和彦さん(北大名誉教授)が、原告になった思いや何故、泊原発は廃炉にすべきかについて陳述した。陳述全文は下記の通り。


原告 市川和彦

理工系の学生・院生を封象に教育・研究に35年間程たずさわった者です。
私どもの世代は民主主義の考えのもと新制度教育システムに変更されたばかりの小学校に入学致しました。大学卒業後企業で勤務する同期は海外に出向して仕事に励み、日本経済発展に貢献しました。他方15年前後年上の世代は第二次世界大戦で戦死され、日本は貴重な人材を失いました。戦後十年程経過後高度成長時代、日本経済が飛躍的に成長した時代(1955-1970年)でした。

米・英両国で開発設計・実働運営されていた原子力発電炉が本国に輸入されました(1965-1985年)。
原子炉は、原子核反応の際発生する強い熱エネルギーを利用して高圧水蒸気をつくり、蒸気タービンと接続されて電気エネルギーを供給します。原子炉は日本の経済成長発展に影響したと考えられます。然し、21世紀に入った時点で日本は福島原発事故に出くわしました。放射性物質・放射能汚染物の生活領域への漏えいが起こりました。多数の住民の生活権をはく奪しました。

住民の生存権を侵した福島原発事故は、我々国民に原子炉を用いることが今後可能なのかを問いかけています。日本にくまなく建造された原子炉を今後もそのまま温存したい政府や電力会社は、福島原発事故はまれにみる巨大津波だけによるものとしています。津波のみではありません。情報を整理して分析した結果,地震が直接,原発に被害をもたらしたと判断致しました。

日本列島のような活発な変動帯では、福島原発事故は起こるべくして起こった惨事と考えられます。5年経過後、事故原因の解明を完全にはできていない現状です。21世紀の原子炉の稼働は禁止と裁定されるべきです。次の3つの理由・観点から説明します。

まず一つ目は,福島原発メルトダウンは日本固有の海底・内陸の地殻構造による地震と津波、及び冷却水供給のために海岸近辺にしか原発を建設できないという日本列島での原発立地条件によって生じたということです。これは米国スリーマイル島・ソ連邦チェルノブイリの各原発事故で起こったメルトダウンが人為的操作法の誤りから起きたのと決定的にちがっています。

福島原発事故のメルトダウンは、操作上の誤りがなかったにもかかわらず、自然災害によって起こったのです。このメルトダウンを契機に水素・水蒸気爆発がおこり放射性物質や放射性汚染物が管理外区域に大量に放出・放置されて住民の生活圏に侵入し、住民の生活権を侵しました。

二つ目は、原子炉設計・制御システム設計は、これまで原子工学専門の研究者・技術者で殆ど行われましたが、福島原発事故は、その様な組織は合理的な汎用性や機能性の点で、深刻な欠陥を持っていたと裁定したことです。

原発の設計・建設・稼働には、材料工学・放射能化学・機械工学・制御工学・津波工学・地質学・物理学(力学・流体学)等の多数の部門参入が最初の段階から不可欠です。福島原発事故は「20世紀に生産された原発の日本での運用は危険です」と明確に主張しています。原発稼働を中止すべきです。しかし、原子工学専門の委員長及び同じ系統の分野の委員だけで構成された場合,原子力規制委員会の態度は福島原発事故以後も原発稼働は大同小異現状維持に落ち着くでしょう。

三つ目は、「原発は住民の生活権そして生存権を侵さない」という原発運用にあたっての大原則を遵守できなかったことが、このたびの福島原発事故によって明らかになったことです。

原子炉は莫大な熱エネルギーと放射性物質を作り出します。福島原発は冷却が不可能・メルトダウンと暴走し、技術者による原発制御は不可能になりました。住民の生活権・生存権を深刻に侵す事態に陥りました。

裁判長、2011年3月11日の福島原発事故からすでに5年が経過しました。
先述の三つの観点から事故の重みを再認識・再熟慮して頂きたいです。原子工学専門の方々からなる委員会ではこれまでの原発がそのまま認可されることが容易に予測されます。21世紀に起こった福島原発事故は住民の生活権をはく奪し、生存権をおびやかしました。私は,当事故が起こるべくして起こったと確信しました。目本の原発の再稼働は、福島原発事故の徹底的な検証の前にはありえないと考えます。そのうえで、脱原発、廃炉に向かうべきことを検討・検証すべきと考えます。

とりわけ北海道は、漁業・農業・酪農・畜産・自然を対象にした観光業で日本での存在感を保っています。其の中で海岸にある泊原発が事故を起こさないと確信できますか。日本海海底にある活断層等による地殻変動が引き起こす地震や津波による自然災害は想定外の原因・規模によって原発事故発生に繋がりかねません。原発にメルトダウンが起きれば放射性物質の拡散が発生し、これは北海道に致命的な打撃を与えます。原発は十万年間管理しなければならない放射性汚染ゴミを残します。その処分地が北海道に指定される可能性もあります。それどころか他県にある汚染物質を北海道に運搬すべきとの考えも浮上しています。

これらはすべて北海道の住民の生活権・生存権に直接かかわります。
裁判長におかれましては、北海道にこのような危険をもたらす泊原発を一日も早く廃炉にできるよう、脱原発日本の近未来を見据えて、北海道の司法による裁断を示して頂くことをお願いして私の意見陳述を終わらせて頂きます。

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