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アーバンライフの愉しみ

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精緻な~吉村昭著「ポーツマスの旗」

2015年08月13日 | 読書三昧

日露戦争講和会議の全貌を克明に綴った記録文学の巨匠、吉村昭氏(故人)の傑作。1997年新潮社刊。



物語~日本の命運を賭した日露戦争。勝利した日本の過大な期待を背負い、全権・小村寿太郎は、ポーツマス講和会議に臨んだ。ロシア側全権ヴィッテとの緊迫した駆け引きの末に、迎えた劇的な講和の成立。

しかし、償金とカラフト北部の放棄という講和条件は、国民の憤激を買い、大暴動を引き起こす結果となった・・・。

このところ、吉村氏の遺産とも言うべき、数々の記録文学を集中的に読んでいるが、この本は、先の「戦艦武蔵」とは異なる政治・外交世界の精緻な物語だ。その時代背景を含む過不足ない描写に感心しながら読了した。

それにしても、当時(明治後期)の政治家や軍人の周囲を見誤らないリアルな眼力に驚嘆した。

つまり、日本はロシアとの戦いに勝利したものの国力は衰え、早期講和以外、国を救う術のないことを(当時の施政者は)熟知していて、民衆の怒りを買うことを承知の上で、ロシアとの早期講和の道を選んだ。

それに比べ、周囲や先の見えない軍部の独裁を許し、挙句の果て、破滅的な太平洋戦争に突き進んだ挙句、終結の道をも誤るという当時の施政者の無定見振りには心底怒りを覚えた。

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