「どうして498円なの?」
彼女は人目もはばからず声にした。
生協の弁当コーナーだ。
私の目の前に恰幅の良い主婦が立っていた。
陳列されている弁当のひとつに目を落として、そう言った。
その価格に、納得がいかなかったのだろう。
ええ、
私も納得いかない時がありますもの。
「どうしてなの?」
二度も言った。
人は大きな衝撃を受けると、
ふいに、
声にしてしまうものだ。
彼女の胸の中を走り抜ける、
疑問、
悲しみ、
そしてそれを収拾できない憤り。
そういったものが、
彼女の大きな背中から滲み出てくるようだ。
他人には計り知れない程のものなのだろう。
生協にも理由があろう。
消費税も上がったし。
材料の原価にも因るだろうし。
ああ、
そんな事より、
そこどいてくれ。
そのデカい身体。
俺が、選べねぇじゃねえか。
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ご飯の量が減った!!!
弁当を手に取り、
声に出してみて下さい。