えしぇ蔵日記

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平家物語を偲ぶ京都 その2

2013年10月26日 | Weblog

2日目は地下鉄東西線と嵐電を乗り継いで嵐山へ。嵐電には初めて乗った。路面電車に揺られてのんびりとした旅もまたいいもんだ。天気もよくなって文句なし。
終点嵐山で降りるといきなり真正面が「天龍寺」だ。ここは平家物語は関係ないが、前回の室町文化に触れる旅で遠くて行けなかったので今回行くことにした。「天龍寺」は京都五山の第一位で開基は足利尊氏、開山は夢窓疎石。後醍醐天皇の菩提を弔うために夢窓疎石の勧めで足利尊氏がそれまで大覚寺統の離宮であった亀山殿を寺に改めたのが始まり。かつてのライバルの菩提を弔うためにと聞けば粋な計らいのように思われるが、夢窓疎石の勧めがなかったら尊氏がここまでしたかどうかは疑問だ。
まずは平成9年に日本画家加山又造画伯によって描かれた雲龍図を見た。周囲のブルーの円が中の龍を引き立てて美しかった。
ここは何と言っても夢窓疎石作の庭が素晴らしい。曹源池という池を中心にして周囲を周回できる池泉回遊式庭園になっている。背後の小高い丘に登って上からの眺めも楽しめる。空も気持ちよく晴れて絵葉書のような写真が撮れた。



嵐山に来たら「渡月橋」を見ずにはおれない。ただ台風の名残か桂川も濁流だった。それにしてもやはり人気スポットだけあって橋の上も周囲も人でいっぱい。嵐山を背景にその前の桂川、そこにかかる「渡月橋」と、この眺めを平安の昔からどれだけの数の人が眺めて風流な想いに浸ったことだろうか。人間の一生なんざ瞬きほどの時間だ。
 
京都の旅のお約束は自転車。嵐山でもそれを実行。お昼までまだ時間があったので古本屋に寄ったりした。ここで思いがけずスタンダールの「パルムの僧院」を発見。読みたかった本なのですかさず購入。これがこの旅でのワシの唯一の買い物。
お昼は「天ぷら まつ」で昼食。このお店でまたもや感動の味に出会った。京都の優れたお店で何かを食べると、もう同じものを福岡で食べられないのでは?と思うことがよくあるが、ここでは天ぷらだ。まずそれにいたるまでのおつくりや小鉢、味噌汁などから既に次元の違ううまさ。メインの天ぷらは表現も追いつかない。ボリュームもあって昼から本当に満足しまくり。それにしても姫もよくまぁこんないい店を見つけてくるもんだと思ったが、本人曰く京都では選ぶのが大変ではなく絞るのが大変らしい。いい店が本当に多いってことだな。





ぱんぱんの腹を抱えて自転車をせっせとこぎ、「化野念仏寺」へ。嵯峨・嵐山とくればここもおさえときたいスポット。この周辺は昔風葬の地で、死体が野ざらしになっていたらしいが、空海がそれを埋葬して寺を建てて供養し、その後法然が念仏道場を開いたのが始まりらしい。ずらっと並ぶ石仏にはちょっと気圧される感じがする。その先の墓地につながる竹林の道はWindowsの壁紙にもなっている有名な場所。
ここは撮影禁止。心霊スポットとして有名で、「写ってしまう」から撮影禁止という話も聞くがこれはどうも疑わしい。お寺の人に聞いてみればよかった。ワシは竹林の道だけ撮ったがそこにも写ってるのではないかとしげしげ眺めたがどうもセーフらしい。



お次は「祇王寺」。
平家物語には「祇王」という話がある。平清盛が祇王という白拍子を愛人にして可愛がっていたが、別の白拍子の佛御前に気持ちが移って祇王を捨ててしまった。祇王は母親と妹と三人で出家して嵯峨の地に隠棲していたが、ある日同じように捨てられた佛御前がやはり出家して尋ねてきて、四人で静かに暮らしたらしい。それが今の「祇王寺」の由来だがさすがに建物は後の再建らしい。
祇王が清盛のもとを去る時に障子に書き残した歌は有名だ。

萌えいづるも 枯るるも同じ 野辺の草
いずれか秋にあわではつべき
 
読んで字のごとくだ。解説は不要だな。



「祇王寺」のすぐ隣にあるのが「滝口寺」。
ここも平家物語ゆかりの寺だ。平重盛の家来の斎藤時頼と建礼門院の侍女横笛の実らぬ恋の物語。身分が違うということで思いを遂げられない斎藤時頼は出家してしまうがその時に住んだのがこの「滝口寺」。横笛は彼を訪ねて来たが時頼は会おうとしなかった。そこで横笛は指を切って石に血で歌を書き残していく。

山深み 思ひ入りぬる 柴の戸の
まことの道に われをみちびけ

その後横笛も出家した。時頼は後に高野山に上がったらしい。この悲恋をテーマにした高山樗牛の「滝口入道」は名作だ。



「祇王寺」は小奇麗な印象があって女性的だったが、「滝口寺」は結構荒れている感じでどこか男性的だった。「滝口寺」の屋根は補修したほうがいいのでは?と思ったが、まぁこういうのはあまり整備しすぎず風情を残すほうがいいからこれはこれでいいのかもしれない。

この周辺は「化野念仏寺」を最初に頑張って行けば後は下りで自転車も楽だ。途中カフェで休憩して、竹林の道を通って駅に戻った。



ホテルに戻ってしばし休憩後、夕食のために自転車で「出町ランプ」へ。ここは6人も座ればいっぱいのカウンターと2人でも狭いテーブルが1つのみの小さな小さなバル。バルとはつまみ系の料理とお酒を楽しむ気軽なイタリアンのバー。ここがまたすごかった!まだ若いオーナーが1人でされていたが、出てくる料理の質にビックリ。それにワインのセレクトがまた素晴らしい。グラスで3種類飲んだがどれも申し分なし。確かな腕と判断力と知性を感じた。聞けばまだ29歳とのこと。将来が非常に有望な逸材だ。ここは次回の京都旅行でも是非来たいと思った。



ということで2日目も終了。明日は買物の日。

「平家物語」

弓箭の 交わりのみに あらざりし
雅なことも 物語のうち

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