「当世源氏物語」(谷崎潤一郎訳 源氏物語風)
褒美
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。女官のF井が退官した後に新しき女官のF野と菊奴(きくやっこ)が入って参りまして、これからは平和な日々になると思っていたのですが、今日わたくしが仕事を始めようとしました時に、驚くことに辞めたはずの女官のF井が汗だくで出勤して参りました。
「お辞めになったのではありませぬか?」
「しばらくはあるばいととして参りまする」
「それでは女官よりもさらに下になるということですね」
「女官よりも下とはどのやうな身分でせう?」
「女官より下は・・・(ぬひ)でせうか?」
「ムヒですか?」
「誰がムヒなど申しませう。どこもかゆくはございませぬ。わたくしが言うのはでございます」
「とはどのやうな身分でせうか?」
「とは・・・奴隷みたいなものでございます」
他の女官は笑っておりましたが、F井はふくれておりました。
そこへ社長の帝が戻られて、私は表彰状と書かれたカードを作るやうに指示されましてございます。それを聞いたF井が帝に質問しておりました。
「そのやうな表彰状のカードを何にお使いになるのでせうか?」
帝はお答えになりました。
「働きの良きもの、業績を上げたるものに下賜致すつもりじゃ。それを集めることにより褒美をとらせるのじゃ」
「例えばどのやうな?」
「例えば・・・5枚集めたらハワイとか・・・」
「それはどこのハワイでせうか?」
そこで新しき女官の菊奴が
「それはきっと雑餉隈のハワイでせう」
と申しましたのでわたくしは図らずも爆笑してしまいました。
働きの 良きにあたうる ハワイ行き
雑餉隈の 海に浮かべる
そのやうなハワイならばわたくしは遠慮しとうございますが、きっと「アルファホーム」の主任様や「センチュリー21 小笠原」のS田様などは大喜びされることでせう。
「雑餉隈」
男なら 褒美 雑餉隈もよし
蔵
「当世源氏物語」(谷崎潤一郎訳 源氏物語風)
別離
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。私が作業している横に女官のF井が近づいて来て、おもむろに「しんぐ様、わたくし来週で退官致しまする」と申しました。F井はこれまでも何度も辞める辞めると申しては、ずるずるとそのままになっておりましたので、わたくしも「またですか」とあまり真剣には聞きませんでした。ところが、「いえ、今度は本当なのです」と何度も繰り返しますので、一応話しだけは聞いてあげようと思いました。
「それはまたなにゆえに?」
「疲れましてございます。ゆっくり休みとぉございます」
「なんと贅沢なことを申される。私もゆっくり休みたいのはやまやまでございます」
そこへ店長の后様が来られました。
「しんぐ様、F井が辞めるそうでございます。この会社はどうなるのでございましょう?」
「申される通りにございます。副社長が辞めては会社が成り立ちませぬ」
F井は「誰が副社長でございますか!そんなに権限は持っておりませぬ」と主張しておりました。そして、
「大丈夫でございます。新しき女官が二人もおりまする。何も心配には及びませぬ」
と余裕の表情をしておりました。
去る人に 次の仕事を 尋ねれば
ゆっくりしたいと ふざけた答え
どうも今度は本当のようでございます。この物語はいかがあいなりますことやら。
「別離」
来週で 去るか源氏の 主人公
蔵
「当世源氏物語」(谷崎潤一郎訳 源氏物語風)
位階
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。女官のF井が何やら不満げな様子をしておりましたので尋ねてみますと
「いくつも小ネタを提供しておりますのに、なにゆえ最近は源氏物語を書かれないのでございますか?」
と言われました。
「すっかり忘れておりました。そろそろ書くとしませう」
「それといつになったらもーりー殿が登場するのでございますか?もう入社されて一年になりまする」
「そうでございました。では登場して頂きませう」
「ではもーりー殿の位階はどのやうに」
「そうですね。もーりー右大臣などはいかがでせう?」
「う、右大臣はもったいのおございます。もっと下で構いませぬ」
「もーりー入道ではいかが」
「出家していただきまするか」
F井はたいそう笑っておりました。
「では、もーりー左近将監あたりにしておきませう」
「それがよおございます。ところでわたくしの昇進はまだでせうか」
わたくしはF井にまずいことを思い出させてしまったと思いました。
「しかたがありませぬ。では御息所ではいかがでせうか?」
「それはどのようなお仕事でございまするか?」
「社長の帝の身のまわりのお世話をすることでございます」
「女官のままで構いませぬ」
位階こそ もらえぬままの 身にあれど
帝をしのぐ F井の権威
位階よりも度胸のほうが必要な世の中でございます。
ついに!「センチュリー21 小笠原」さんでもブログを始めることになった。その名も「SKB48日記」。白木原を拠点に活動する男女混合の酔っ払い集団、SKB48のすべらない話に期待せずにはいられない!
「SKB48日記」
「SKB48」
死ぬまでに たくさん笑った 人の勝ち
蔵
「当世源氏物語」(谷崎潤一郎訳 源氏物語風)
ちらし
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。店長の后様はちらしの印刷にお忙しいご様子でした。
刷り上ったものを眺めておられた店長の后様は、突然慌てたご様子で、
「と、止めまする!い、印刷機を止めまする!」
と叫ばれながら印刷機のところへ急いで行かれました。そのご様子に驚いた女官のF井は店長の后様にお伺いしました。
「いかがなされました?お后様」
店長の后様はちらしをお示しになり、言われました。
「このちらしには価格が入っておりませぬ」
「なな、なんと!」
女官のF井も大変驚いておりました。
「いかがいたしませう。もうだいぶ刷ってしまいました」
店長の后様は大変お困りでしたが、女官のF井もこれといった思案はなく、
「これは笑ふしかありませぬ」
と、なんの生産性もない返答をしておりました。
「いかがでせう?そのままお配りになれば。この物件はいくらでせう?と問い合わせがくるかも知れませぬ」
わたくしの意見はただ鼻で笑われただけでございました。
いかほどか あかさず配る それもまた
人の興味を あおるものかな
店長の后様が社長の帝のお叱りを受けておられないか心配でございます。
「桜」
桜咲く 見る人もなく 桜散る
誰しも未だ 心は晴れず
蔵
服
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。女官のF井は正月から快調でございました。
「しんぐ様、先日わたくし祖母にいたく傷つくことを言われましてございます」
「どのやうなことでしょう」
「あなたはまるでだれかのやうじゃと仰せられるのでわたくしはだれでせう、柳原加奈子でございますか、渡辺直美でございますか、と伺いましたら、ちがうと仰せられます」
「だれだったのでせうか」
「マツコデラックスでございました」
わたくしは失礼とは知りつつ、どうしても笑いを止めることができませんでした。
「ついにマツコまで来られましたか」
「はい。もはや例えが女ではなくなりました」
「それは大変悲しいことでせう」
女官のF井はそこで何かを思い出したようでございました。
「そうそう、わたくし服を買いに行きました折、大変おもしろいものを見つけましてございます」
「どのやうなお店に行かれるのですか?まさかあの大きなサイズのお店では・・・」
「そうでございます。LLから置いてあるお店でございます」
「LLが最初でございますか」
「はい。わたくしが見つけましたのはそのお店に置いてあるまねきんでございます」
「まねきんがどうかされましたか?」
「まねきんも太っておりました」
「そ、それはそれは・・・」
大きなサイズのお店のまねきんは太っているというのはわたくしも初耳でございました。
音に聞く LLサイズが最小の
店のマネキン 肥え太りけり
まねきんはいつもすたいるがよいとは限らないものと知りましてございます。
お客さんによっては年末年始にその会社独自の恒例の行事がある。「コスモ不動産」さんでは最後の営業日に餅をついて関係者にふるまうし、「大新住宅」さんでは松の内を過ぎると会長が鏡餅を使って善哉を作る。今日の最後のお客さんが「大新住宅」さんで、ちょうどタイミングがよかったので善哉をご馳走になった。善哉は難しいらしいが会長のはなかなかにうまい。K本さんが裏の給湯室で食べて下さいと用意してくれたので行ってみると、なんと丼になみなみとつがれていた。しかも餅が3つも入ってるし!K本さんの勢いに押されて全部食べたがかなり腹いっぱいになった。
今日は4社まわったが、各社まだなんとなく正月明けの余韻が残っているのか、ゆっくりした雰囲気があった。
「善哉」
善哉で 過ぎ行くを知る 松の内
蔵
食
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。ちょうどお昼時でございましたので店長の后様も女官のF井もお食事の最中でございました。
「ごちそうさまでございました。しんぐ様、今お茶を入れます」
「いえ、どうぞお気遣いなく」
店長の后様は早々と食べ終えられて、わたくしのためにお茶を入れに行かれました。その姿を眺めつつF井はずるずるとらーめんをすすっておりました。
店長の后様は戻って来られて言われました。
「まだ食べているのですか」
「はい・・・」
「びっぐなどを食べるからです。あれほどすもーるにしなさいと言ったではありませぬか」
「いつも行く店にすもーるがないのでございます」
そう言いつつもF井はびっぐのかっぷぬーどるの他におにぎりを二つ食べておりました。
おにぎりを ふたつも食し ぬーどるも
びっぐさいずや 無敵のF井
言い訳に説得力のないF井でございました。
「らーめん」
らーめんを すする姿の にあふ人
女官のF井 たくましきかな
蔵
断髪式
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。店長の后様が嬉しそうなお顔で申されました。
「今日は神宮様にわたくしとF井から贈り物がございまする」
「そ、それはいかなるもので」
わたくしは嬉しさに声が上ずりました。
「これにございます」
と女官のF井が持ってきたものは、せんちゅりー主催の宅建模試の問題と解答でございました。
「これはこれは」
お二人はわたくしにまだ勉強せよと申されるのでありませうか。なんとも複雑な心境でございました。
そんなわたくしの気持ちをよそに、F井は「髪がうるそうございまする」と言いながら、前髪を上に上げてクリップで挟んでおりました。わたくしにはそれがどうしても大銀杏に見えて仕方がございませんでした。
「まるで朝青龍の断髪式のようにございます」
わたくしがそう言いますと、F井は憤慨した様子にて
「き、后様、し、神宮様がわたくしのことを朝青龍と申されました」
と告げ口を致しました。わたくしはあわてて、
「朝青龍と申したのではございませぬ。朝青龍の断髪式と申しただけで」
と弁解しましたが、「同じことにございまする」と火に油を注いでしまいました。店長の后様は一人で笑っておられました。
前髪を 結ったつもりが 大銀杏
似合いすぎては 笑うに笑えず
F井が退官する際には友人を三百人ほど呼んで断髪式を行うそうでございます。
「何故」
宅建も 思えば残り 十二日
今ふと思う はてなにゆえに
蔵
宅建
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。店長の后様が女官のF井にこう申されておりました。
「けふはひとつ宅建のお勉強をいたしませう。”納豆と五丁”と覚えなさい」
「それはなんでございませう」
F井は不思議そうな様子をしておりました。
「納豆の”な”は名簿の名(な)です。納豆の”とう”は十です。従業員名簿は十年保管しなければいけないといふことです」
「初めてうかがいます」
「五丁の”ご”は五年の五です。”ちょう”は帳簿の帳(ちょう)です。帳簿は五年保管しなければいけないといふことです」
「存知あげませんでした」
「もうすぐ試験といふのにさういふことでどうします。それでは次、”名古屋の兄ちゃん”」
「名古屋の兄ちゃんでございますか?」
「そう。名古屋の”なご”は七と五。流通機構への登録は専任媒介では七日以内、専属専任媒介では五日以内といふことです」
「兄ちゃんはなんでございませう?」
「兄ちゃんの”にい”は二と一。売主への報告は専任媒介では二週間に一回、専属専任媒介では一週間に一回といふことです」
F井は着実に知識を積み上げておられる店長の后様のご様子を見て、焦りを覚えているようでございました。
宅建の 受かるか否かは 運なりと
鉛筆ころがす お気楽F井
人の生き様はさまざまでございます。
夜、姫を迎えに空港へ。やっとこれで通常の生活パターンに戻れる。やっぱりなんとなく調子悪いのはリズムが狂ったせいだろうな。それと食べものだ。晩飯の心配しないでいいなんて幸せなことだ。
「語呂あわせ」
語呂あわせ それそのものは 覚えれど
なんのためかを 思い出ださず
蔵
毒見
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。女官のF井はわたくしのおやつを用意するために給湯室でなにやらごそごそといたしておりました。そして頂き物の洋菓子を冷蔵庫より取り出して申しました。
「店長の后様、このお菓子を神宮様にお出ししてもよろしゅうございますか」
店長の后様は応えて言われました。
「構いませぬが、それはいささか古きものにて害はありませぬか」
「大丈夫でせう。冷蔵庫にて保存いたしましたものゆえ」
わたくしこの会話を聞きながら全身硬直いたしましてございます。
女官のF井はその洋菓子を「はやく食べませ、神宮様、ささ、はよう」としきりにすすめておりました。
わたくしは抗しきれず一口食べましてございます。そこで女官のF井は申しました。
「食べられまするか?」
毒見に使われたわたくしでございます。
洋菓子を すすめられしは 親切の
行為にあらず 毒見なりけり
げに恐ろしきことにございます。
けふは女官のF井の仕事はせず、F海の中宮様のお仕事のみして参りました。
「毒見」
一週間 熟成された 洋菓子や
まずは誰かに 食べさせてみよ
蔵
位階
「住まいのイシダ」様にお伺いした時のことでございます。女官のF井が大層不満げな面持ちにて申しました。
「最近、源氏物語がご無沙汰ではござりませぬか?」
わたくしは仕事の手を休めぬまま、「ネタがないからにござります」とおこたへしました。
「ではわたくしがネタをさしあげませう。先日これこれこのやうなことがございまして、たいへんおもしろうございました。ほほほほ・・・・・・おや、どうなさいました?」
F井の話にはわたくしも店長の后様も無反応でございました。后様は「あなすべりしことよ」とまで申されました。F井は、
「わたくしの家族の間ではうけたのでございまする」
と言い訳しておりました。F井は続けて申しました。
「あの、わたくしえしぇ蔵様に申上げたきことがございます」
「はて、いかなることで?」
「源氏物語に登場する方は皆様、なになにの宮ですとか、少納言ですとか、右大臣ですとか、何らかの位がございますが、なにゆえわたくしだけ女官なのでございましょう」
横で店長の后様がたいそうお笑いになりました。
「女官と言えば女中も同じでござりまする」とわたくしは全くフォローにならぬ言葉が出てしまいました。
「あまりにひどうございまする。これで新しく入られましたFうみ様が女官でなければわたくし納得がいきませぬ」
ものがたり おもしろきやう かくうへは
女官以外に ありえぬF井や
Fうみ様は中宮とお呼びするつもりでございましたが、とても言葉にできる状況ではございませんでした。
修理
「東部ハウジング」様にお伺いした時のことでございます。左中弁のO様のぱそこんが壊れ、修理して欲しいと依頼されましてございます。
「うぃんどうずが立ち上がりませぬ。なおりますでせうか?」
不安げなO様でございました。わたくしは、
「とにかくできるだけのことはしてみませう」
と修理を始めました。どうやらはーどでぃすくに損傷部分があり、起動しないやうにお見受けいたしました。
「はーどでぃすくが壊れたかどうか、どのやうにしてわかるものでせうか?」
「電源を入れたときに、かた!かた!という音がすると、もうしまえかけでございます」
わたくしとO様の話を横で聞いておられた右大臣のA貞様が、
「そういへば先日、左中弁殿の頭からかた!かた!という音がしておりました」
と言われ、皆様たいへんお笑いになりました。わたくしは、
「それならば左中弁殿の頭もふぉーまっとする必要がございます。すべての記憶が消えますので宅建ももう一度受けて頂かなければなりませぬ」
と追い討ちをかけておきました。太政大臣のN嶋様も
「すぐそこに家電無料引取りの空き地がございますのでそちらに持って行かれたほうがよろしいのでは?」
と申され、どなたもぱそこんを心配しているご様子はありませんでした。
起動せぬとき おもひ知る ぱそこんの
なき生活の 味気なさかな
ぱそこんは無事に治りましてございます。謝礼はみんなで「バルディルッソ」の食事とのことでございます。
「ネタ」
おもしろきひと おもしろきこと ありて
ありがたきかな ネタに困らず
蔵