吉川英治の「私本太平記」全8巻を読み終わった。”太平記”と名のつく作品は、山岡荘八の「新太平記」と山崎正和の「太平記」を読んだが、どれも非常に面白かった。
ただ、この時代は敵味方がころころ変わるので、誰が書いてもスッキリとはしない。北条対朝廷だったのが、足利対朝廷となり、北朝対南朝になり、尊氏対直義になり、いつまでもいつまでも殺し合いを続ける。
本当にひどい時代だったんだなと思う。平家物語の頃は平家対源氏しかないし、戦国時代は大名の勝ち抜き戦、幕末は幕府対新政府と図式がわかりやすいが、この時代は本当に泥沼化している。
権力者の起す戦で命や財産を無くす庶民の苦しみはどれほどであったろうか……。
それだけに人間のエゴを描くには最も適した時代かもしれない。大義名分などいつのまにかそっちのけ。欲と怨恨に動かされていく人間の浅ましさはなんとも悲しいものがある。
ただこれもこの国の歴史の一部。学ぶことによって得るものは大いにあると思う。
「民を射る」
梓弓 引きて名をなす もののふも
欲にすべりて 矢は民を射る
蔵
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