漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0701

2021-09-30 19:45:17 | 古今和歌集

あまのはら ふみとどろかし なるかみも おもふなかをば さくるものかは

天の原 踏みとどろかし 鳴る神も 思ふなかをば さくるものかは

 

よみ人知らず

 

 空を踏み轟かして鳴る雷といえども、思い合う二人の仲を裂くことなどできようか。

 「鳴る神」は雷鳴のこと。0482 の貫之歌にも登場しました。

 


古今和歌集 0700

2021-09-29 19:43:41 | 古今和歌集

かくこひむ ものとはわれも おもひにき こころのうらぞ まさしかりける

かく恋ひむ ものとはわれも 思ひにき 心のうらぞ まさしかりける

 

よみ人知らず

 

 このように恋してしまうだろうと、自分でも思っていた。心の占いは正しかったのだ。

 「うら」は「占」で占い、「まさし」は「正し」で正しい意。この「占い」は自ら施したのか、それとも他者に占ってもらったのか、どちらの解釈も成り立ちそうですが、上三句の「自分もそう思っていた」ということとのつながりで考えると、「占ってもらったらそう出ていたが、これほど恋しくなることは自分でもわかっていたよ」と解釈する方が自然な気がします。

 

 さて、これで 700 首と、また区切りを迎えることができました。ご来訪くださる皆さまに心より感謝しつつ、明日からもひとつひとつ続けていきます。引き続きよろしくお願いいたします。

 


古今和歌集 0699

2021-09-28 19:00:12 | 古今和歌集

みよしのの おおかはのへの ふじなみの なみにおもはば わがこひめやは

み吉野の 大川の辺の 藤波の なみに思はば わが恋ひめやは

 

よみ人知らず

 

 普通に思っている程度だったなら、こんなにも恋しく思うことがあっただろうか。

 第三句までは、第四句の「なみ(並み)」を導く序詞。万葉集第858番の歌(作者不詳)を踏まえた詠歌とされています。

 

わかゆつる まつらのかはの かはなみの なみにしもはば われこひめやも

若鮎釣る 松浦の川の 川波の なみにし思はば われ恋ひめやも

(万葉集 巻第五 第858番)

 


古今和歌集 0698

2021-09-27 19:21:28 | 古今和歌集

こひしとは たがなづけけむ ことならむ しぬとぞただに いふべかりける

恋しとは たが名づけけむ 言ならむ 死ぬとぞただに 言ふべかりける

 

清原深養父

 

 「恋しい」とは、一体誰が名づけた言葉なのだろうか。単に「死ぬ」と言うべきであったのだ。

 恋することの苦しみを、死にも匹敵すると詠んだ歌。「恋し」を「恋しい」ではなく「恋死」と考えた方がより明解であるかもしれません。06030613 に続いて恋死をテーマとした深養父の詠歌です。

 

こひしなば たがなはたたじ よのなかの つねなきものと いひはなすとも

恋ひ死なば たが名は立たじ 世の中の 常なきものと 言ひはなすとも

(0603)

 

いまははや こひしなましを あひみむと たのめしことぞ いのちなりける

今ははや 恋ひ死なましを あひ見むと たのめしことぞ 命なりける

(0613)

 


古今和歌集 0697

2021-09-26 19:11:05 | 古今和歌集

しきしまの やまとにはあらぬ からごろも ころもへずして あふよしもがな

しきしまの 大和にはあらぬ 唐衣 ころも経ずして あふよしもがな

 

紀貫之

 

 時を経ずして、愛しいあの人に逢う手立てがあればなあ。

 「しきしまの」は「大和」にかかる枕詞。第四句の「ころも」は「頃も」で、初句~第三句が「衣」と同音の「頃も」を導く序詞になっています。