漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

熟字訓・当て字の勉強法

2018-07-22 08:10:56 | 熟字訓・当て字
 またまたご無沙汰しております。
 それにしても、今年の夏は暑いですね。私は内勤なので、普段屋外にいるのは朝夕の通勤時だけなのですが、それでも「もういぃっ!」という感じです。外回りの営業職の方などは本当に大変だと思います。熱中症には十分注意してくださいね。

 さて今日は、一つ前の記事へのコメントで、熟字訓・当て字の覚え方についてご質問をいただきましたので、久々の「漢検ネタ」として、私なりのやり方を少し整理して書いてみたいと思います。



<繰り返し練習する>
 いきなり身も蓋もないことを書きますが、基本的に「理屈で理解する」ということが通用しない分野ですので、覚えるべきものを一覧表にするなどして、とにかく何度も何度も繰り返し練習して暗記し、その記憶の定着を図るという地道な作業から逃れることはできません。
 ちなみに私は、「漢検 漢字辞典」巻末の索引に記載されているものを中心に、約1,800語をエクセルに入力し、一時は暇さえあればそれに取り組んでいました。(そもそも、熟字訓・当て字が好きだったということもあります。) それでもなかなか完璧に覚えるというのは難しいもので、ピーク時でも3%程度の誤答率がありました。紛らわしいものが多いので、覚えたつもりになっていても、またしばらくしてやると忘れている、ということの繰り返しですね。


<過去問は完璧にしておく>
 ここ2回は問題を見ていないので傾向の変化があるかもしれませんが、熟字訓・当て字に限らず、漢検1級合格のためにもっとも大切な対策は、過去問を落とさないということです。この設問に関して言えば、かつては出題10問中、過去問そのままの問題が7~9問を占めていました。ここのところの難化でこの数は減少傾向にあるとは言え、逆に、過去問を落とすようでは、合格はおぼつかないと思います。ちなみに、これまでの過去問をすべて学習したとして、その数は約300語。おおまかな「出題範囲」と思われる「漢検 漢字辞典」巻末索引収録語1,800に対して六分の一の分量です。今後も5問程度は過去問から出ると仮定すれば、学習効率からしても、まずは過去問の制覇に取り組むべきでしょう。


<自分なりの暗記法・勉強法をあみだす>
 ここまでは「覚え方」というより勉強のスタンスというお話しでしたが、では、あのややこしい個々の語の読みをどうやって覚えるのか。余り普遍的な方法などはないのですが、私はこんなことをしていた、というのをいくつかご紹介します。

(法則を見つける)
 一例として、【海鼠】という2文字を含んだ次のような熟字訓があります。
  【乾海鼠】【海鼠子】【金海鼠】【熬海鼠】
読みは順に、【ほしこ】【このこ】【きんこ】【いりこ】。これらを眺めていると、【海鼠】の2文字を【こ】と読むと考えればこの4つは読めるということに気づきます。正しい意味で【海鼠】に【こ】との音があるのかどうかは別として、たとえこじつけであってもこうしたことに自分で気づくと、それが記憶の定着に役立ちます。

(理屈でわかるものを押さえる)
 冒頭に、理屈ではわからないからとにかく暗記と書きましたが、数は少ないですが例外的に理屈でわかるものがあります。これはぜひ押さえておきたい。
 【海鼠腸】 このわた
 さきほど登場した【海鼠】、これ単独では【なまこ】ですね。「このわた」というのは、ナマコのはらわたを塩漬けにした食品ですから、まさに海鼠の腸。そのまんまですね。【海鼠】を【こ】と読む、という作戦と併せて考えると、さらに覚えやすいと思います。
 【高襟】  ハイカラ
 高い(=ハイ)襟(カラー)だからハイカラ。そのまんまです。
 【豆腐皮】 ゆば
 豆腐の皮だからゆば。これもそのまんま。
 【微温湯】 ぬるまゆ
 説明不要ですね。

(まとめて覚える)
 例えば、
 【紅娘】  てんとうむし
 【瓢虫】  てんとうむし
 【偽瓢虫】 てんとうむしだまし
 上の2つを覚えたら、ついでに3つめ目も。「てんとうむし」を覚えたら、それの偽物で「てんとうむしだまし」ですから、これも「そのまんま族」の一つかもしれませんね。
 何でまとめるかはその時その時の思いつきで何でも良くて、【白】で始まる(20個以上あります)、【蛇】を含む(こちらは10個くらい)、漢字四文字以上(40個くらい)、などなど、その場の気分で遊びながらやっていました。



 ・・・などなど、書いていくと切りがないですが、やっぱり好きこそものの上手なれ。私が熟字訓・当て字分野がそもそも好きなので、飽きもせずいろいろやっていたというのが本当のところですね。ただ、合格戦略という観点で言うなら、熟字訓・当て字はどんなに時間と手間暇をかけて完璧に準備しても最大で10点。過去問300問を覚えるだけで5~6点取れるのだとしたら、残りの4点を追いかけるよりも、その時間と手間を別の分野に傾けた方が良いかもしれません。

 長々と書きましたが、わずかでも皆さんの参考になれば幸いです。

意味を覚える

2017-09-16 20:38:57 | 熟字訓・当て字
 29-2 までちょうど1カ月。皆さん、学習は順調でしょうか。

 私はと言えば、手元の自作問題集の一巡目のおさらいが残り 2,200 問ほど。全部で約 11,500 問のストックで、今回手をつけ始めたのが7月の終わり頃でしたから、9,000 問に約1カ月半かかったことになります。一日平均 200 問ということですが、これが全部初見の問題だったらなかなかのペースではないかと思いますけれど、実際は真逆で、自分にとっては全部既往問題ですから、「亀の歩み」というべきでしょう。なかなか難しいものです。

 そんな中、きょう間違えた熟字訓が【髪菜】。正解は 「いぎす」 ですが、どうもこの 「いぎす」 と 「うない」 の区別がしっかりできなくて、すぐに混同してしまいます。


【髪菜】   いぎす

【海髪】   いぎす

【髫髪】   うない



 混同を起こす原因は2つあって、

(1) いずれにも 【髪】 が入っていて、字面では覚えにくいこと。
(2) 「いぎす」「うない」両方とも、私のもともとの語彙にない、知らない言葉だったこと。

です。特に(2)が大きな原因で、これら以外でも、やはりもともと自分の語彙にない言葉は、どうしても頭に入りづらいですね。


 これの克服は、やはり王道を行って、きちんと意味を覚えて自分の語彙にすること。「いぎす」 は植物(海藻)、 「うない」 は髪型です。そのことがきちんと身についていれば、「いぎす」にはそれぞれ【海】【菜】という字が入っていますから、混同するはずもないですね。

 言葉の勉強をしているのですから、「知らない語が出てきたらその意味を覚える」なんてのは当たり前すぎる話ですが、1級の熟字訓に取り組んだ学習当初、とにもかくにもやみくもに覚えていったので、お恥ずかしい話ですが未だに「読みは知ってるけど意味は知らない熟字訓」がたくさんあります。  ^^;;

 きょうの間違いをきっかけに、少なくとも「いぎす」と「うない」についてはしっかりと意味を覚えて、今後混同を起こさないようにしたいですね。




「ちょろぎ」と「ぎぼうし」

2017-08-21 22:01:18 | 熟字訓・当て字
 漢字の学習で、私が極力そうしたいと思っていることの一つに、「何もしない日を作らない」ということがあります。実際に一日も欠かさず、というわけにはなかなかいかないのですが、それに近い学習ができたときは、本試験にも落ち着いて臨めますし、結果も伴っていることが多いように思います。単に学習した内容を忘れづらいというだけでなく、本試験中の集中力や、記憶の底から絞り出す粘りといったことにも影響がある実感があります。

 とはいえ、やはり平日はなかなか時間を割くのが難しいですし、割けたとしても週末に比べればごく短時間になりますので、いきおい読み問題のおさらいが中心になります。そんな中、きょうもまた間違えた【玉環菜】。記憶に定着しない熟字訓の筆頭格で、いつも「ちょろぎ」か「ぎぼうし」かわからなくなります。この二つの熟字訓、これ以外も結構紛らわしいように感じますが、正しく読み分けられますか?


1. 【紫萼】   (「漢検 漢字辞典」初版 P.614/第二版 P.619)

2. 【擬宝珠】   (287/291)

3. 【甘露子】   (219/223)

4. 【玉環菜】   (350/352)

5. 【草石蚕】   (928/935)

6. 【玉簪花】   (349/351)



「ちょろぎ」はシソ科の多年草で、3・4・5
「ぎぼうし」はユリ科の多年草で、1・2・6 (「ぎぼし」とも読みます。)


 いずれも、「辞典」の巻末索引掲載語ですから、しっかり覚えておきたいですね。


 29-2 まであと55日。受検するみなさん、頑張っていきましょう!





地名・国名の熟字訓 その2

2017-08-05 14:14:10 | 熟字訓・当て字
 前の記事に書いた通り、漢検対策としてはひとまずは「その1」だけで十分(それ以上の時間は、他の分野にあてるべき)と思いますので、こちらは追加的・趣味的なお話しです。

 こちらもまずは問題から。以下にご紹介するのは、 <過去問だけど、「漢検 漢字辞典」に掲載されていない語> です。「巻末索引」どころか、「辞典」そのものに載っていない語の出題がこんなにあったとは今見るとかなり違和感がありますが、「漢検 漢字辞典」自体、初版の刊行が平成13年ですので、地名・国名の熟字訓が出題されていた 14-2 までの期間というのは、その大層がまだ「辞典」が世の中に存在していない時期にあたるということになります。違和感云々というのは、お門違いということになりますね。


1. 【巴勒斯旦】
2. 【伯爾西】
3. 【斯干釐那委阿】
4. 【白爾鄰】
5. 【克什米爾】

1. パレスチナ
2. ブラジル
3. スカンジナビア
4. ベルリン
5. カシミール


6. 【雪特尼】
7. 【加布爾】
8. 【黎巴嫩】
9. 【維也納】
10. 【捏巴爾】

6. シドニー
7. カブール
8. レバノン
9. ウィーン
10. ネパール


11. 【亜馬森】
12. 【阿耳蘭】
13. 【巴達】
14. 【牙買加】
15. 【耶路撒冷】

11. アマゾン
12. アイルランド
13. バクダッド
14. ジャマイカ
15. エルサレム


16. 【哀瓜多】
17. 【的木児】
18. 【塞爾維】
19. 【俄羅斯】
20. 【亜媽港】

16. エクアドル
 12-1 で出題されたときの正答率は僅か 2.6%。当時の受検者の「恨み節」が聞こえてきそうです。^^;
17. ティモール
18. セルビア
19. ロシア
20. マカオ


21. 【緑威】

21. グリニッジ



 問題のご紹介は以上ですが、最後にどうでもいい(?)余談を。


 さてこれらの語、「熟字訓」でしょうかそれとも「当て字」でしょうか。

【倫敦 ロンドン】 【牙買加 ジャマイカ】 あたりはかなり 「当て字」 に近いかなぁという感じがしますが、これ以外も基本的には「その漢字の音を借りている」ものが多いように思います。漢検の審査基準が「当て字の一種」と表現しているのは、おそらくそのためでしょう。一方 【埃及 エジプト】 【哀瓜多 エクアドル】 なんかは、とても「音を借りている」という感じはしませんので、「熟字訓」 と言うべきものかなと思います。


 ホント、漢検対策とは何の関係もない、「どうでもいい」余談でした。 ^^;;;;

地名・国名の熟字訓 その1

2017-08-05 13:39:02 | 熟字訓・当て字
 8月ですね。私のところは昨年までほど毎日毎日酷暑ということもなく、過ごしやすい日も多い夏です。それはそれとして、今年は全国各地で大雨の被害が次々と発生しています。「異常気象」などということが盛んに言われるようになって久しいですが、今年の雨は本当に異常ですね。一日も早く被災者の皆さんに安寧の日々が戻り、また、被害にあわれた地域の復興がかないますことを、心よりお祈りします。



 さて、きょうは地名・国名の熟字訓について。6月の本試験で 【華盛頓 ワシントン】 が出題され、地名・国名の熟字訓が 14-2 以来15年ぶりに復活したのは記憶に新しいところです。別のところにも書きましたが、漢検1級の正式な審査基準には「地名・国名などの漢字表記(当て字の一種)を知っていること」と明記されているのですから、15年間も出題されなかったことの方がむしろおかしかったと言うべきなのかもしれません。
 ついでですが、同じく 14-2 を最後に出題されなくなった、漢字を旧字体に書き換えよという問題も、「複数の漢字表記について理解していること(鹽-塩、颱風-台風 など)」 として今でも審査基準に書かれています。なのでこちらも、いつ問題として復活してもおかしくない、文句は言えない、ということになりますね。

 私は、「とにかく漢検1級に合格する!」という観点では、「出題されないであろうものはそもそも学習しない」ことで、厖大な学習範囲を少しでも縮小すべきであるとの考え方(漢検云々とは別の知識や教養として、という観点では、もちろん話はまったく別です)ですので、当ブログでもこれまで地名・国名の熟字訓には、ほとんど触れてきませんでした。しかし、とりあえず1問だけとは言え、現に復活出題されたのですから、次回以降に備えてやはり一応の対策はしておきたいところ。

 まずは <過去問で、かつ、『漢検 漢字辞典』巻末の『熟字訓・当て字索引』に掲載されているもの>、29題です。まったくの私見ですが、対策するとしてもとりあえずはここまでで十分ではないかと思っています。



1. 【西蔵】
2. 【埃及】
3. 【聖林】
4. 【牛津】
5. 【維納】

1. チベット   (「漢検 漢字辞典」初版 P.844/第二版 P.852)
2. エジプト   (5/5)
3. ハリウッド   (858/865)
 Holly Wood なのにどうして 「聖森」 じゃなくて 「聖林」 なんでしょうねぇ・・・なんてことを言ったら、そもそも Holly も「聖なる(=正しくは Holy)」じゃなくて「ヒイラギ」ですけど。語訳がそのまま定着しちゃったのかな?? 「ヒイラギの森」が漢字では「聖なる林」になってしまったというお話しでした。
4. オックスフォード   (310/313)
5. ウィーン   (37/37)


6. 【威内斯】
7. 【倫敦】
8. 【端西】
9. 【羅府】
10. 【紐育】

6. ベニス   (29/29)
 この中では、かなり読みにくいですね。
7. ロンドン   (1568/1584)
8. スイス   (826/834)
9. ロサンゼルス   (1527/1543)
10. ニューヨーク   (1040/1048)


11. 【華盛頓】
12. 【諾威】
13. 【以色列】
14. 【新嘉坡】
15. 【莫斯科】

11. ワシントン   (149/152)
 前回の出題は 12-3 でした。
12. ノルウェー   (995/1003)
13. イスラエル   (24/25)
14. シンガポール   (799/806)
 【星港】 とも書きます。こちらも「辞典」巻末索引掲載語。
15. モスクワ   (1379/1393)


16. 【和欄】
17. 【澳門】
18. 【丁抹】
19. 【色丹】
20. 【亜爾然丁】

16. オランダ   (1609/1624)
17. マカオ   (42/42)
18. デンマーク   (1046/1053)
19. シコタン   (774/781)
20. アルゼンチン   (1/1)


21. 【葡萄牙】
22. 【土耳古】
23. 【芬蘭】
24. 【寿府】
25. 【伯林】

21. ポルトガル   (1375/1389)
22. トルコ   (1122/1132)
23. フィンランド   (1341/1354)
24. ジュネーブ   (675/681)
25. ベルリン   (1226/1238)


26. 【白耳義】
27. 【瑞典】
28. 【孟買】
29. 【墨西哥】

26. ベルギー   (1221/1238)
27. スウェーデン   (826/834)
28. ボンベイ   (1464/1480)
29. メキシコ   (1414/1429)




地名・国名の熟字訓の話題、「その2」に続きます。