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漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 1066

2022-09-30 06:26:56 | 古今和歌集

うめのはな さきてののちの みなればや すきものとのみ ひとのいふらむ

梅の花 咲きてののちの みなればや すきものとのみ 人の言ふらむ

 

よみ人知らず

 

 私は、梅の花が咲いてその後にみのる実のような身だから、酸き物ならぬ好き者だとばかり、人は言うのだろうか。

 第三句の「み」には「実」と「身」、第四句の「すきもの」には「酸き物」と「好き者」がかかっています。皆に賞美される梅の花に大してあまり目立たず、取り上げられることも少ない梅の身に準えて、あまり人から見向きもされないわが身を憂いての詠歌です。寂しい歌ですね。


古今和歌集 1065

2022-09-29 06:40:12 | 古今和歌集

しらゆきの ともにわがみは ふりぬれど こころはきえぬ ものにぞありける

白雪の ともにわが身は ふりぬれど 心は消えぬ ものにぞありける

 

大江千里

 

 白雪が降るのと同じようにわが身も古びてしまったが、白雪は消えてしまうけれど、心は消えないものであったよ。

 「ふり」は「降り」と「古り」の掛詞で、「白雪」には白くなった頭髪の意味も含んでいるのでしょう。老いて衰えて行く身と変わらない心との対比を詠んだ歌ですね。


古今和歌集 1064

2022-09-28 06:35:30 | 古今和歌集

みはすてつ こころをだにも はふらさじ つひにはいかが なるとしるべく

身は捨てつ 心をだにも はふらさじ つひにはいかが なると知るべく

 

藤原興風

 

 身は捨てたが、せめて心だけは放り出すまい。最後には、この身がどうなるのか、知ることができるように。

 第三句の「はふらす」は「放らす」で放り出す意。「つひに」は死出のときでしょうか。身は捨てても、どう死んで行くのかを知るために、心だけは捨てずにおこう、ということからすると、「身は捨て」は必ずしも出家ということではないかもしれませんね。


古今和歌集 1063

2022-09-27 05:43:25 | 古今和歌集

なにをして みのいたづらに おいぬらむ としのおもはむ ことぞやさしき

何をして 身のいたづらに 老いぬらむ 年の思はむ ことぞやさしき

 

よみ人知らず

 

 いったい何をしてこの身はむなしく老いてしまったのだろう。すごしてきた「年」が私のことを何と思うか、恥ずかしさに身の細る思いだ。

 1062 は「世の中」を擬人化した歌でしたが、こちらは「年」を擬人化しています。第五句の「やさし」は「痩さし」で、身の細る思いの意。ここでは恥ずかしいとのニュアンスで使われていますね。

 


古今和歌集 1062

2022-09-26 06:29:43 | 古今和歌集

よのなかは いかにくるしと おもふらむ ここらのひとに うらみらるれば

世の中は いかに苦しと 思ふらむ ここらの人に 恨みらるれば

 

在原元方

 

 世の中というものは、どんなに苦しい思いをしているのだろう。これだけ多くの人に恨まれているのだから。

 「世の中」を擬人化して、世の中を恨んでいる人がこんなにたくさんいるのだから、さぞ「世の中さん」は辛いことだろう、と詠んだもの。世の中の擬人化という発想自体が珍しく、それゆえの「諧謔歌」でしょう。