漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0680

2021-09-09 19:10:23 | 古今和歌集

きみてへば みまれみずまれ ふじのねの めづらしげなく もゆるわがこひ

君てへば 見まれ見ずまれ 富士の嶺の めづらしげなく 燃ゆるわが恋

 

藤原忠行

 

 あなたのこととなると、逢おうが逢うまいが関係なく、富士の嶺のようにいつも燃えているわが恋であるよ。

 「てへば」は「といへば」、「まれ」は「もあれ」がそれぞれ縮まった形の語。当時、しばしば噴煙を吹き上げていた富士山は燃える恋の象徴で、古今集では 0534 でも詠まれています。

 

ひとしれぬ おもひをつねに するがなる ふじのやまこそ わがみなりけれ

人知れぬ 思ひをつねに するがなる 富士の山こそ わが身なりけれ

 

よみ人知らず

 

 作者の藤原忠行は、平安時代前期の貴族にして歌人。古今集に一首、後撰集に一首が採録された勅撰歌人です。