漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0685

2021-09-14 19:25:49 | 古今和歌集

こころをぞ わりなきものと おもひぬる みるものからや こひしかるべき

心をぞ わりなきものと 思ひぬる 見るものからや 恋ひしかるべき

 

清原深養父

 

 心というものは理屈では割り切れないものだと思った。逢っているにもかかわらず、それでも恋しいと思うのだから。

 「わりなし」は意味の広い語ですが、ここでは「道理に合わない」意。第四句、第五句は反語表現になっていますので、字義通り訳せば「逢っているのに恋しいなどということがあって良いものだろうか」くらいになるでしょうか。逢瀬が叶っているのにそれでもなお恋しいと思う恋心を、「道理に合わないもの」と捉えたのがこの歌の面白みですね。